横山π輝・茶ん国志 #5
なんか妙にサイコチックな坊主になつかれて、(ヒロインっぽいけどなんかもう出番無さそうだなって感じの)お姫様を託されたり、紅巾賊に追われてピンチになったり、言い忘れてたけどサイコチック坊主が塔から飛び降りて死んだりしたとかあったが、なんとか涿県ローソン村(そん)に辿り着いた精悍な顔立ちの青年。
青年の家の庭には大きなローソンがあった。
ローソンはそれほど大きくならないものだが、このローソンだけは特別であった。ローソン村という名もそこから起こったと言われている。
「うん?誰かやってくる」
蹄の音に気付く母親。
「母上!」
「あの声は……!」
「母上ただいま帰りました!」
「おおっ!よく無事に帰っておくれだねぇ…紅巾賊があちこちに出没しといると聞いて毎日お前の身を案じておりました!」
抱き合う母と子。感動の再会!
「さあさあお腹も空いただろう、すぐ食事の支度をしてあげますからね」
床下からわずかな食べ物を出す母を見て驚く青年。
「母上がこんな苦しい生活をしているとは知りませんでした…。明日からは私がうんと働いて楽をさせてあげます」
「お前はいつも優しい事を言ってくれるねぇ」
「そうそう母上に素晴らしいお土産を買ってきたんです」
「まあ!私にかえ?」
「ほらこれです」
「?」
「母上、紅茶ですよ!午後の紅茶ストレートティーです」
「午後の紅茶ストレートティー!お前どうしてこんな高価なものを手に入れたんだえ?」
「母上心配はいりませんよ。母上の喜ぶ顔がみたいと一年間真面目に働いたお金で買ってきたものですよ」
「…おお、お前って子は…お前って子は…」
息子の孝行に胸を打たれむせび泣く母。感動!
「さあさあ食事にしましょう…うん?お前、それは誰の剣ですか?」
「これですか?私の剣ですが…?」
「ウソをお言い!お前の剣はお父さんから形見に頂いた剣、ご先祖様から伝わっている剣のはずです!」
「実はそのう―――――
青年は紅巾賊に取り囲まれ万事休すという時に張飛と名乗る豪傑に助けられ、お礼に剣をトレードした事を母に話しました。
声にならない嘆きを発する母。
「母上!どうしたんです!」
「わ、私は……私は子の育て方を誤りました」
「母上!」
表へ駆け出す母!追う青年!
「母上!どうしたんです!訳をお聞かせ下さい!」
母は家の裏手の川まで行くと先程受け取った午後の紅茶ストレートティーを大きく振りかぶってエイヤッと川へと投げ入れました!
「あああ…母上、どうしたんです!?どうして午後の紅茶ストレートティーを川にお捨てになるんです!倫理的にもスポンサー様的にもまずいです!」
「そこにお座りーーーーー
母は滾々と青年に話し聞かせました。
今でこそ百姓ではあるが自分達の先祖は漢の中山靖王・劉勝の血筋で有る事を、身分を隠しながらも帝王の子として恥ずかしくない様、育てて来た事を、剣より午後の紅茶ストレートティーを優先した我が子に対し恥ずかしく悲しい気持ちになった事を…母は青年を何度も叩きました。
「母上!何処です!?劉備が帰りましたよ!!」
突然家の方から凛々しい母を呼ぶ声が聞こえました。
「劉備!?劉備かえ!?」
「母上!遅くなりましたがただいま戻りました!」
精悍な顔つきの凛々しい青年が母の元へ駆けてきました。
「じゃあ今まで私が話していたのは…!?」
劉備と母が先程まで青年が座っていた所を見ると、そこには川本喜八郎・作めいた人形が落ちていました。
「これは…?」
劉備と呼ばれた青年が人形を手に取ると、その背中には
“紳々”
とだけ書かれていました…。
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