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今月読んだ本/2021.6

ふと気づくと2021年になってから半年が経っていてびびった。年始に今年の抱負なんてのを掲げたけど、どれも進捗はゼロ。今のところ。

時間はあったはずなのに、どういうわけか忙しかったような気もする。自分の英語力が想定したより成長率が低く苦労したのが主な要因だろう。

そんなわけで、今月からはわりとこれからの仕事に関連しそうな本がばかりの紹介になるだろうと思う。趣味の読書という側面は鳴りを潜めていくことになる。目の前の読書に追われ、何の意味があるかわからないけれど心躍る読書からはしばらく遠ざかる。

それでもマンガはしっかり読んでいたりするのだけど。

・How to Avoid a Climate Disaster: The Solutions We Have and the Breakthroughs We Need

ビルゲイツの気候変動本。なんどか積読になりつつもなんとか読破できた。

ぼくは環境問題には門外漢もいいところで、以前もどこかで述べたけれどエンジニアでも政治家でもない一個人としてできることってほとんどないんじゃないかなぁと思っていた。本書には、あらゆる産業で、あらゆる階層で、気候変動への対応、意識改革というのは必要で、そこにお金が集まるように市場も作らないといけないと言及していて、なるほどなと思うと同時に、2050年までに温室効果ガス排出ゼロに向かって世界は動いていくならば、環境系は避けて通れないのかなと感じた。

具体的に、数値で説明してくれていてこれからも何度か参照することになると思う。

本書に関しては別途読書感想文を書いたのでどうぞ。

・ザ・バトル・オブ・eバンカーズ

米国株エヴァンジェリスト、じっちゃまでお馴染み広瀬さんの金融小説。マイケル・ルイスのライアーズポーカーとか黒木亮の金融小説が好きならオススメ。ページ数もそこまでないの2時間ほどで読み切れる。

シリコンバレーのドットコムバブルを氏が実際に経験したインベストバンカー視点で語られるのだけどその空気感だけでドラマチックなんなのだけど、投資やバンカーの考え方も描かれていて、それが非常に勉強になる。

株というものは、いくら綿密に調査し、理解したつもりでも、自分でその株を買って、株主になるまでは、微妙なニュアンスは、わからない。これは実際に寝てみないと、相手の女がどんなヤツか見破れないのと同じだ。
 だからプロはまず自分のへそくり口座で小手調べに株を買う。その後で、その株について粛々と調査を進めてゆく。この場合、その株を理解するために費やされる努力に、終わりはない。
 これと対照的に、一般の投資家は、最初だけその株のことをちょっと調べ、株を買う。それ自体、悪い事ではない。問題は大抵の投資家の場合、株を買った時点で調査は終了したと錯覚する点だ。
ファンドマネージャーは、自分の知らない事、何かの発見を、アナリストのレポートに求めている。その何かとは技術の解説でも良いし、販売データでも良いし、いままでとは違う斬新な見解でも良い。でも株価水準の議論をアナリストがファンドマネージャーにふっかけても、勝ち目はない。
現実は「黒と白」と言う風に単純ではないわ。玉虫色で、複雑なの。でも一般の人たちはそれをわかろうとする辛抱強さもなければ、それを理解するだけの頭脳もない。彼らが求めているのは、都合のいいスケープゴートだけよ。


・ゾンビ対数学 ―数学なしでは生き残れない―

学生時代にきちんと勉強していなから今さら微分積分をやるはめになる。本書は、著者が少しでも数学に親しみやすいように、ゾンビから逃げるストーリー仕立ての本になってる。たぶん普通の数学の教科書なら20ページに満たない内容をぼくのような人間のために200ページくらいにまでどっと情報量を増やし、噛み砕いて説明してくれている。

それで、理解できたかって?それは聞かないでほしい。こういうは慣れが大事だと思っているんだ。1冊読んだから微積分マスターしたぜ!なんて言えないよ。


・マンガ人類学講義
 ボルネオの森の民には、なぜ感謝も反省も所有もないのか

最近のことなのかはわからないけれど、国際協力の分野でも文化人類学的アプローチが注目を集めていたりする(気がする)。これはたぶん、欧米からの「効率的な」「指導」であったり、欧米流のシステムを開発途上国に導入して現地の生活を改善しようとするのが、思ったような効果がでてないからだと思っている。(1990年からの25年で世界の絶対的貧困率はかなり改善していて、36%から10%に改善している。これはcovid-19で18%まで後退したと推計されているけれど、それでも改善している)

もっと現地のニーズや状況に合った細かな調整が必要で、そのためには現地の、現場の理解が必要で、その理解のためのツールの1つが人類学なんだろうと思う。

じゃあ、何が人類学アプローチは違うかというと、現地への溶け込み方。たとえば、社会学者がフィールド調査に出向くとき、たいてい現場に通う。たとえば、どこかスラムが対象であれば、スラム近郊のホテルに宿を取って、そのスラムに通う。そして、調べる。

人類学的アプローチの場合、現地に住み込む。実際に現地に1カ月なり2か月なり住んで、現地の人と同じものを食べ、現地の人と同じように暮らす。そして、現地の人が何かやっているのを彼らの肩越しに観察する。

現地の人と同じ暮らしをすることで現地の人の価値観、思想、信条などの世界観にどっぷりと入ってその仕組みを理解しようとする。

で、本書の場合、ボルネオの森の民の生活に密着して、ぼくたちと違う常識や文化で暮らす彼らの生活を見て体験することで、人間とはなんだろうね、働くってなんだろうね、人生ってなんだろうねということを探求していってる。

マンガになってるぶん、非常に取っ付きやすいのではないかと思う。


・それでも町は廻っている

既に連載は終わっているんだけれど(全16巻)、めちゃくちゃ良い。好き。イメージとしてはpanpanyaの世界観をよりポップにかつ笑いを足した感じ。

主人公の歩鳥の高校生活3年間のどこかの場面を基本1話完結で時系列もばらばらに描いたものなんだけれど、ほどよく自分の12歳~14歳くらいの時の世界観であったりご近所の人たちとの関係性がかぶるのが良い。

当時の自分の世界は妄想や夢の出来事と現実の区別があいまいで、ごっちゃになっていて、謎記憶や謎の思い出みたいなのがあって、今思い返すと、ただただ恥ずかしい思春期や青春の一幕なんだけれど、そういうのがうまく描かれている。近所の気前の良いおじさんとか謎多き美人お姉さん、なぜか仲の良い美人な先輩、恋、放課後の退屈な時間…。

たぶん、地方出身者の理想の中高時代の思い出みたいなのがぜんぶ詰まってるんじゃないかと思う。あるあるだなぁと思いながら、ぼくも年取ったなぁと薄っすらとノスタルジーを感じる。

冒頭にpanpanyaに似ていると書いたのは、時折、セリフ回しで何か本日を突いたような冷めた鋭いことを言っているから。

とりあえず1巻読んでみてほしい、アラサーには刺さると思う。


・ロスト・ラッド・ロンドン

全3巻で今月完結したロンドンを舞台にした哀愁漂うミステリー。

主人公はアジア系と白人のハーフで白人家庭の養子になっている学生と黒人刑事。学生君がある殺人の容疑者として警察にマークされるんだけど、直感的に犯人じゃないと見切った黒人刑事がタッグを組んで事件を解決しようとする話。

移民とか、上流階級とその他とか要素がいろいろあって、じんわりくる。この感情を表現するのはなかなか難しいのだけど、諦念とか苦労を感じてしまう演出であったり描写がリアリティーがあるというか、ぼくの見聞きしてきた現実と重なるところがあって響く。

あまり派手さはないのだけど、良い。非常に良い。


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