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地方創生ファンドは新しい資本主義の夢を見るか?

地方で雇用をつくるとか、イノベーションを起こそうとしてる起業家の支援、育成事業の末席にいます、yukiです。

少し前になりますが、地域でイノベーションを起こすにはどうしたらいいんだろうっていう勉強会のようなものに参加しました。

抽象的な話が多くてあんまり何言ってるかわからなかったんですが、その勉強会のゲストの1人に松本さんという方がおられました。京都に本社があるフューチャーベンチャーキャピタル(VC)という上場企業の前代表です。

その方が本を出していたので、読んでみたらとても勉強になったので少し紹介します。

VCのビジネスモデルって、創業間もない会社が投資対象であれば、いっぱいいろんな会社に投資して株をもらい、その中の1社でも上場すれば何百倍ものリターンをもたらしてくれて、他の投資した会社がぽしゃってもOKみたいなハイリスクハイリターンなわけです。

なので、地方創生ファンドってビジネスとして成立するのかねと思っていたんですね。東京という日本ではヒトもカネも集まるところですら、上場できる会社って何十分の1だったりするのに、地方から上場目指すって難度かなり上がりませんか、つまりリターンでない、投資対象にならない、事業として成立しなくないですかと。

けど、このフューチャーベンチャーキャピタルの地方創生ファンドっていうのは、そういうビジネスモデルではないというんですね。

具体的には、投資して株式を取得するんですが、上場を最短距離で目指してもらうのではなく、議決権なしの取得請求権付株式にして、3年後に投資したときの1.5倍の値段で買い戻してもらうみたいな契約をとる手法。

詳しくは本書を読んで欲しいんですが、これがなかなかうまくいっているらしく、地銀やその地域の自治体からお金を集めてファンドを組成して、投資先選定や事業評価などVCの持つ知識や知見も出資者に還元して、地方のファイナンス力の底上げもやっているのだそう。

なるほどなと勉強になりました。
地方で起業する課題の1つに資金調達の選択肢が少ない、VCが少ない/いないというのがあります。

通常のファンドの出資よりも急成長を求められず、融資よりも失敗時のリスクが低い。地域に根差した企業の場合、市場のサイズは小さいから大きな成長、急成長は期待できないことはないけれど、負荷がかかるのでリスクが高くなります。

それでも起業家は出資してほしいわけですが、お金を出す金融機関側も、通常のファンドからの出資では定期的に上場企業or M&A がないと事業継続できないわけですが、対象が地方の会社なら見込みは薄くなります。かといって、融資というかたちだと、1社でも返済が滞ると経営がぐらついたりするので、おいそれと新興企業にお金をだせないわけです。

その点、この地方創生ファンドはちょうどその中間のような立ち位置なのかなと。故に使い勝手が良く、成果も上々ということで、日本各地に広がっているのではないかと。

冒頭の勉強会も、兵庫県や地銀などがLP出資してるファンドが主宰でした。

以前、資本主義の再構築という本を流し読みしました。その本では、利益至上主義というか株主価値最大化っていう資本主義の前提がよくないんじゃないか、少数の勝ち組と多数の負け組を生んで、とんでもない格差が生まれてしまってるんじゃないか、地球環境が悪化してるんじゃないか、みたいなことが書かれていました。

この本を読んだとき、正直あまりピンと来なかったんですね。というのも、株主価値最大化って誰が求めているかというと、投資家ですよね。で、その投資家って誰かって言うと、とんでもない金持ちも一部に含まれているけれど、最大の投資家は年金基金だったりするわけです。つまりは、ぼくたちの将来のためにも企業は(高い)リターンを出す必要があるわけです。

この資本主義の再構築という本の中ではESGがキーだろうねって書いてたんですが、ESGって高配当<低リスク安定成長を希求するモデルって理解なので、それが万能薬になるのかね?と。業界標準にできたとて、以前よりは管理コストがいくらかは上がるだろうから、それってイノベーションのスピード落ちないかね?それって許容できるのかね?低成長なのに、とかって思うわけです。もちろん、言わんとしてることも、課題意識もわかります。

そのもやもやしてたところに、この地方創生ファンドという形態を知り、足りないピースが埋まって行くような高揚感があったんですね。

もちろん、まだまだ課題はあるだろうと思います。
冒頭のフューチャーベンチャーキャピタル (FVC) は盛岡や秋田、京都、神戸、鹿児島、大阪などで地銀や信用金庫と組んで地方創生ファンドを組成しています。内部事情はまったくしらないですが、会社としてのFVCも黒字化していたにもかかわらず、昨年の株主総会の株主提案で松本さん含む経営陣が入れ替わっています。

報道では株価低迷や経営手法を問題視とありますから、少なくとも上場企業では、このような事業モデルは理解を得られにくいということなのかもしれません。

しかし、上場を目指すスタートアップは従来通りどんどんリスクとって成長を希求し、そうじゃないモデルは地方創生ファンドから支援を受けて、じっくり身の丈にあった成長を希求するという選択肢ができたという点で、地方でも可能性が広がっているという点で、このモデルが「新しい資本主義」なのかもしれないです。


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