見出し画像

我々は刎頸の交わりだから!友よ、しばしの別れだ

協力隊の一時帰国がようやく公開情報になったので。

ぼくは今、日本に着くまでの全行程5日間の内の途中にいる。もうセントビンセントはでた。

1週間ほど前はのほほんと生活していたのだから、なんだか不思議な気さえする。セントビンセント初の感染者が確認されてから、調整員さんからはセントルシアに一時退避になる可能性がある旨を翌日には伝えられ、その次の日には3日後のフライトで退避が決まった。

急だけれど、先が読めないのが途上国支援だと思っていたし、決定に驚きはない。妥当な判断だなと思った。

一方で活動は、コツコツいろんな種を蒔いていたのが回収フェーズに入っていて、それを回収する前に一時退避になったのが悔やまれる。また最初からやり直し。

ぼくは8月くらいには戻って来れると思っているので、活動先の人たちとのしばしの別れに感極まって思わず涙するようなこともなかったけれど、ちょうど仲良くしていた台湾人が何人かが来月、再来月あたりに帰国になる。

急な別れがやってきた。

特に、来月帰国するファンとはほぼ毎週末遊んでいたし、「君が来月帰国するんて想像できないなぁ、寂しくなるね」なんて言っていたのに、ぼくらの方が帰国が早くなったんだから驚いた。

出国直前の最後の夜も、当然のようにディナーを囲んだ。

別れを惜しむカップルのように口数は少なかったかもしれない。

ふいに、締めの言葉を託された。

最後だから何か良いことを言えという。

そんな無茶なと思いつつ、考えていたことはあった。

ぼくは最初、かなり世話焼きの彼に遠慮していた。どこか遠出する度に運転するのは車を持ってる彼だし、彼の家でディナーとなっても、料理をつくるのはみんなでも、送り迎えは彼だったから。ビールやワイン、ラムを用意してくれるのも彼だったし、お金は決して受け取ろうとしなかった。

それに甘えて、それが当たり前になっていく自分の態度も嫌だった。

対等な関係と言う感じではなかったから。

一度、そんなに気を遣ってくれるなと言ったことがある。ぼくは完全にフリーライダーになってるからと。申し訳ないと。

すると彼は、それはほんとに気にしなくていい、これが私のスタイルだから。台湾人のスタイルと言ってもいいかもしれない。私の行いが君に何かしら見返りを期待するようなことになっていたのなら申し訳ない。けれど、私は君を本当の友人だと思っているし、いつも楽しい時を過ごしている。それに、辛いことも嬉しいことも共有したいと思ってるんだ、と言った。

あとでLINEでメッセージまで来た。

その日を境に、ぼくは完全に彼に心を開いたと思う。人見知りで、人に甘えることも人付き合いもわりに苦手なぼくには非常に珍しいこと。

彼の方も、ぼくという人間がどういう人間なのか少しはわかったのかもしれない。

良い意味で、ぼくに対しての遠慮がなくなったように思う。

彼のおかげでセントビンセント滞在は非常に愉快なものになった。本当にそう思う。楽しい思い出の中には常に彼がいた。

だから、ぼくは最後に彼に「我々は刎頸の交わりだから!すぐに再会しよう!」と言った。

刎頸の交わり (ふんけいのまじわり) とは故事で、中国語なら刎頸之交 ( wěn jǐng zhī jiāo )。直訳はお互いに首を斬られても後悔しないような仲。固い絆で結ばれた関係、心を許し合った非常に親密な関係という意味。詳しくはウィキペディアで

ぼくがまさかそんな言葉を引いてくるとは思ってなかったろうし、その言葉も彼に刺さったらしい。

もう38歳のおじさんなのに、感極まってすすり泣いていた。

それを見てぼくもちょっとウルっときた。

いや、何滴か両の目から垂れた。

良い友達ができたなぁと思う。心から。

サポートはいつでもだれでも大歓迎です! もっと勉強して、得た知識をどんどんシェアしたいと思います。