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今月読んだ本/2021.8

大学院からリーディングリストなるものが届いた。pre-courseとあるから、意味合いはよくわからないけれど、これらの内容を前提として議論を進めますからねということなんだろうなと理解している。和訳されてる本も結構あって、読んだことあったりなかったり(1冊4~5,000円して手が出なかったり)で、まあ有名どころがラインナップされてる印象。

それらを紹介するかどうかは今後のぼくのリーディングリストの消化具合と理解具合による。需要があれば紹介しようと思う。

全体の印象としては、これまでどういった経緯で社会が発展してきて、どう格差が生まれたかをざっと把握して、不平等や格差に立ち向かう知恵と勇気を持たせる書籍が選ばれているのかなという印象。で、これから社会を発展させるにはESGですよと言ってる。王道だろうなと思う。それが世界のというか欧米の潮流なのだし。しかし、そこにハジュンチャンの書籍を2冊も入れているあたり、批判的というか、懐疑的なのだろうなと思う。ハジュンチャンの主張は、先進国は自分たちが発展してきた方法をこれから発展しようする途上国にとらせないのはいかがなものかと痛烈に批判している。

わかりやすい例でいうと、火力発電だろう。先進国は火力発電から得られる莫大で安価な電力で発展してきたが、昨今、気候変動云々で、途上国に火力発電を設置するのにお金を融資しないと言っている。二酸化炭素排出量の主要排出国は中国、アメリカ、インド。この3ヵ国で全体の50%。以前火力発電プラント開発で話題になったベトナムは全体の1%も排出していない国だ。ましてや昨今の火力発電は発電効率が上がり、二酸化炭素排出も従来のものよりも抑えられるというのに。

こういった現状をハジュンチャンは、先進国の人間が発展の恩恵を享受する一方で途上国の人間にはその残り香も与えようともしないと結構ボロクソに書いてる。

これはなかなか議論すると面白いところだと思う。地球環境のことを考えると正しいよね、でもそれで途上国の人間が貧困に苦しみ続けるのはOKなの?、これまで恩恵を享受してきた先進国の人間がこれからは我慢すればいいだけの話じゃないの?、再生可能エネルギーがあるよ、いやいや圧倒的に発電量が違うから議論にならない、とか視点はいっぱいあるし。


・世界の台所探検

宇野常寛のポッドキャストで紹介されてて興味あって手に取った本。著者は大学院で土木工学を学び、国連でインターンまでして国際協力の仕事をしようとしていた人。

内容は、各国の一般家庭にホームステイして料理を現地の料理に舌鼓をうちつつ、現地の文化や社会情勢をほんのりと紹介してる紀行文プラス料理なカジュアルな内容なんだけれどそれが良い。押しつけがましくない。

そして、韓国とかベトナムなど日本でも良く知られた料理ではなくて、パレスチナやイスラエルなど、聞いたことはあるけれど、どんなものを食べているのかは知らない国のことを知れて、それにレシピまで載せてくれているので、こんなもとを向こうの人は食べているのかーと思いを馳せることができる。

異文化理解って、みんな大真面目に大事大事って言うけれど、じゃあ実際にどうやって理解を促すんですか?と聞いてみると、「?」みたいなことが非常に多い。ちゃんと勉強しようとしたり多くの人に知ってもらおうとすると結構難しい。真面目過ぎる勉強会は敷居が高くなって人は集まらないし、そもそも意識高い系の集まりに来るような人ってもともとのリテラシーが高いからわざわざ勉強会開かなくたって勝手に自分たちで勉強して知識を深めてくれる。

課題は、どうやって異文化や外国 (人) に興味ない人に、世の中にはこんな人たちがいてこんな価値観で生きているんですよ、決して (日本基準で) 非常識ではないんですよとわかってもらえるか、拒否ではなく対話を引き出してもらえるか、受け入れてもらうかだと思っている。

これは時間もかかるし、どの国も完璧にできているところがない分、難度が高いのだと思う。

その点、料理を通してというこのアプローチは日本人は食べるの好きだし、いろんな食べ物に興味あるし、本のデザインも文体もかわいいし、間口が広くてとても良い。

この本は多くの人の世界を広げる稀有な本だと思う。もっと売れて欲しい。


・淡海乃海 水面が揺れる時

なろう発の異世界転生ものなんだけれど、非常に良い。

1500年代の後半、武田信玄や織田信長が活躍している時代の琵琶湖周辺が舞台の、史実をベースにフィクションを交えながら弱小大名から成り上がりの話なんだけれど、政治ベースで話の展開も早いしとても面白い。

異世界転生モノは「現実世界では虐げられているけど、ほんとは俺スゲー」っていう願望を叶えたイケてない人たちのオ〇ニーだと思って偏見を持って避けていたんだけれど、たしかにこれは基本的に俺スゲーな無双をしてるんだけれど、ストーリーの中の政治的駆け引きが非常に良い。とても良い。

いま一番新刊を待ってる作品の1つ。


・アトム ザ ビギニング

鉄腕アトム誕生前夜を描いた、インスパイア?オマージュ?作品。

昔、似たパターンの浦沢直樹のプルートゥを読んだことがあって、それが絶妙にぼくの心を掴まなくて、これも似たような難解なサスペンスミステリーに持って行くんじゃないかと忌避してたんだけど、これは非常に良い。

特に、人工知能(AI)という文脈でよく描かれてると思う。

このジョークで笑ってくれる(反応を示す)なんてこのAIは笑いがわかっているに違いない、なんて判断をしたりするわけだけど、それはただ単にそのジョークが事前にプログラムされていて入力に対する出力に過ぎないから、それってそのAIもといアルゴリズムが感情を持っていることになるんだろうか?とか、ディープラーニング(AIが自分自身で学習して知識を深めてい行く)の結果起こりそうなことが非常によく描かれててなるほどなぁと思う。

人工知能それぞれに感情があるかどうかを確かめるのは、なんというか「意識はいつ生まれるのか」という脳科学の本を読んでたときの読書体験に似ていて良かった。

この脳科学の本は「意識」という存在をいつ認定できるのかという点を、外部から観察できることから理詰めで区別していって曖昧な存在の「意識」というものの輪郭を掴もうとする話で、単に読み物としておもしろかった。

アトム ザ ビギニングの話に戻ると、唯一悲しいなと思ってしまったのは科学立国として世界をリードする日本が描かれてること。もうそんな時代じゃないんだよなぁと胸が締め付けられる…。


・王様ランキング

ひょっとしたら今年一番の衝撃かもしれない。めちゃくちゃおもしろい。すっごい引き込まれる。最新の11巻まで一気読みしてしまった。

この作品の存在は少し前から知ってて、おもしろいおもしろいと聞いていたんだけれど、絵的にあまりにそそられず、読まず嫌いにしていたんだけれど、今度アニメやるよっていうのでPVが出てたので見てみたんだけど結構おもしろそうだったのでとりあえず一巻買ってみたらもう止まらなくなった。

世界観は冒険ファンタジー。主人公は王子様なんだけれど、耳が聞こえないし、筋力もなく国民から小ばかにされている。その主人公が立派な王様になろうと奮闘する話、なのかな。

何が良いって、ジブリっぽい。キャラクターみんあ2面性を持っているというか、作中に完璧な悪人というのはほぼいなくて、みんなそれぞれ「ほんとは良い人」な描かれ方をしていて、そのギャップだったり良い意味での裏切りの描き方がすごくうまい。へたなドラマ見るより全然心動かされるし、結構うるっときた。

著者はほんとはこの物語を絵本で出したかったからか、キャラクターデザインもシンプルよりだしセリフも少ない。けどおもしろい。感動する。感情移入する。次の展開が早く知りたくなる。買ってしまう。

なぜおもしろいかを言葉でうまく説明できない。残念でならない。

とりあえず読んでみてほしい。

↑ ここから5~6話は無料で読めるはず。

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