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【有料】第10回 インタラプション ~女だって攻める~ 「伝言」

免責事項:この物語はフィクションであり、登場人物、設定は、実在のいかなる団体、人物とも関係がありません。また、特定の架空の団体、人物あるいは物語を想起させることがあるかもしれませんが、それらとは何の関係もない独自の物語と解釈してください。よろしくお願いいたします。くれぐれも、誰かにチクったりしないように。みなさん大人なんですから、ね!www
※本物語は、独自の創作によるものです

第10回 「伝言」

その夜、例の日から2ヶ月経った日の夜、勉強会のメンバー全員が集められた。

「ちゃんとした格好して来いよ」と念押しされたその日の会場になったのは、某大使館が管理している会員制レストランだった。都内でありながら車以外のアクセスがなく、厳重なセキュリティがあるので、外部に情報が洩れることはない。 あとで聞いた話によると、サニーがその国に大規模なテレビ工場を建設したときの縁で、大上が会員になっているということだった。

しかし、いくらなんでも大げさではないか。いつもとあまりにも雰囲気が違いすぎる。

ライトアップされた薄暗いエントランスを抜けると、森のような庭が広がり、その奥でガラス張りの建物がオレンジに輝いていた。

「すごい、、、」絢の口から声が漏れた。他のメンバーも、さすがにキョロキョロと辺りを見回している。

日本にいることを完全に忘れてしまう空間だった。足元に敷かれている石畳も日本では、まず見たことのない石の組み方だった。


ガラスの扉を開くと、赤と白と黒の3色で統一された、シックかつ鮮烈な空間が広がっていた。テーブルも椅子も日本の規格からすると高い。どうやら、今日は貸し切りということらしかった。

全員が席につくと、シャンパンが注がれた。なんの前触れもなく、突然あまりに日常とかけ離れた空間に放り込まれたことで、皆、浮足立っているようだ。ざわめきが収まらない。グラスを持った大上が立ち上がった。

「いつだったか、2つ秘密を話すっていったよな。今日がその日だ」

大上はそう切り出した。

「まずひとつめ。これは本当に誰にも話したことがない。カミさんにも話したことがない正真正銘の秘密だ」

大上が空けた一瞬の間で、これから何か重大な話があるのだという空気が隅々まで広がっていく。全員の視線が大上に強く集まった。

「実は、21年前、盛下さんが亡くなる2日前に、俺は、盛下さんに会ってるんだ」

いつものように勢いよく話さず、言葉を選びながら話している。

「まだ28歳の若造だった。もちろん盛下さんと直接の面識なんてなかった。廊下で見かけて挨拶したことがあるくらいだ」

「盛下さんは相談役だったけど、体調不良が続いてもう長いこと出社していなかった」

「ある日、病気でもう危ないらしいって話が俺のところに来たんだ」

「公に入院していることになっている東京の病院はすでに引き払っていて、名古屋の実家からわりと近い私設の病院みたいなところに移動していた。最期は、やっぱり生まれたところに戻りたかったんだろうな」

「盛下さんの状況も、移動したことも相談役の秘書がこっそり教えてくれたんだ。どうして教えてくれたかは、聞かないでくれよ」

大上が冗談めかしていうと、少しだけ笑いが起こったが、全員を包んでいた緊張が瞬く間にその笑いをかき消していった。

「それで、すぐにその日のうちに病休取って名古屋まで行った。笑うだろ、青くて。でも、どうしても一言だけお礼が言いたかったんだ。俺は盛下さんに憧れて、サニーに入ったからな」

「会えないよな、普通に考えても。でも、とにかく行ったんだ。最後のチャンスだと思ったから」

「病院に着くと、ご家族がいてな。『サニーの社員です、盛下さんに一言だけご挨拶がしたくて、参りました』なんて言ったんだよ」

「当然、断られると思った。でも、断られなかった」

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