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経常収支黒字、早くもピークアウトか?~2023年8月の国際収支

本日(10/10)、8月の国際収支統計が発表されました。日経は、引き続き原系列での報道を続けており、経常収支が7ヵ月連続で黒字になったことや貿易収支の赤字が縮小したことなどを報じています。本稿では、今まで通り、季節調整値と原系列の前年同月差に注目していきたいと思います。日経の記事とは違う姿が見えてきます。


季節調整値でみると貿易収支、サービス収支の赤字拡大

 8月の経常黒字は季節調整値でみると1.6兆円。直近のピークを越えた7月(2.8兆円)から大きく縮小しています。貿易収支の赤字拡大(7月:▲1146億円→8月:▲4360億円)、サービス収支の赤字拡大(7月:▲2655億円→8月:▲5582億円)、第一次所得収支の黒字縮小(7月:3兆5008億円→8月:29250億円)と、それぞれ経常黒字の縮小に寄与しています。
 一方、原数値の前年同月差をみると1.6兆円のプラス。同様に直近のピークを越えた7月(1.9兆円)から縮小しました。貿易収支、サービス収支のプラス幅が拡大したものの、第一次所得収支がマイナスに転じたことが影響しています。

第一次所得収支の前年同月差はマイナス

 第一次所得収支の前年同月差は、6月はマイナス、7月はプラスとでしたが、8月は再びマイナスとなりました。直接投資収益の前年同月差がマイナス5079億円となったためです。「配当金・配当済支店収益」の前年同月差がマイナスとなったことが主因です。証券投資収益の前年同月差のプラス幅が前月から縮小(7月:プラス4354億円→8月:プラス2411億円)したことも響いています。

サービス収支の前年同月差は「その他業務サービス」がプラスに

 8月のサービス収支の前年同月差はプラス3568億円と2ヵ月連続のプラスになりました。旅行収支のプラス幅が徐々に拡大する中で、このところサービス収支の赤字拡大に寄与してきた「その他サービス(知的財産権等使用料収支を除く)」の前年同月差もプラスに転じたためです。しかも、中でもサービス収支赤字拡大の主役で、日経が「デジタル赤字」と評した「その他業務サービス」の前年同月差が2023年4月以来のプラスになっています。一時的なものなのか、長続きするのか引き続き注目したいですね。

貿易収支の前年同月差は若干プラス幅拡大したが…

 8月の貿易収支の前年同期差は1兆7114億円のプラス。1.4兆円のプラスだった7月から若干増加しました。輸出金額の前年同月差のマイナス幅が拡大(7月:マイナス536億円→8月:マイナス2079億円)したものの、輸入金額の前年同月差のマイナス幅がそれ以上に拡大した(7月:マイナス1兆3061億円→8月:マイナス1兆9172億円)ためです。
 ただ、輸入金額の減少に寄与してきた鉱物性燃料の価格低下もそろそろ下げ止まりの気配です。貿易統計をみると7月までの輸出の持ち直しが幻だった可能性もうかがえるため、楽観はできないかもしれません。

#日経COMEMO #NIKKEI


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