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2020年の世界経済成長率はマイナス4.2%

 今朝の日本経済新聞朝刊1面に、国際通貨基金(IMF)が2020年の世界経済成長率をマイナス3%へ下方修正したと報じられています。これに対し、「そんな程度なのか」という反応があるそうです。こう感じる人がいる一因は、IMFの世界経済成長率の計算方法を知らないことにあるかと思います。

 そもそも、IMFで算出している世界経済成長率は、3%が景気判断の分かれ目と言われています。マイナス3%というのはそこから6ポイントも低いわけです。ちなみに、リーマンショックの翌年の2009年の世界経済成長率はマイナス0.1%でしたから、今回の見通しの厳しさがわかると思います。

 それでは、なぜ、0%ではなく、プラス3%が景気判断の分かれ目になるのでしょうか?理由は2つあります。

 第1の理由は、新興国や発展途上国は滅多にマイナス成長にならないことです。昔の日本の経済成長率を見ればわかります。平均10%という高度経済成長の時代にも、日本は何度か景気後退を経験しています。長い目で見た経済成長(トレンド成長率)が高い中で、成長率が減速すると景気後退になり、失業が発生したりするわけです。

 第2の理由は、IMFの世界経済成長率を計算する際、そうした新興国や発展途上国のウエートが高めになっていることです。世界経済成長率は、各国の経済成長率を、各国のGDPが世界全体に占める比率(ウエート)で加重平均して算出します。各国のGDPは通貨単位が必ずしも同じではありませんから(米国ならドル、日本なら円ですね)、ウエートを計算するために米ドルに換算します。この換算の際に、私たちが日ごろニュースで見聞きする為替レート(マーケットレート)ではなく、購買力平価が使われています。購買力平価でみると、中国など新興国の通貨価値は高めになる傾向があり、そうした国々のウエートが高めになるのです。滅多にマイナスにならない国々のウエートが高めなのですから、IMFの世界経済成長率がマイナスになるのは、これまた滅多にないことになるのです。

 ちなみに、IMFはマーケットレートを用いて各国のGDPを米ドル換算し、そのウエートを用いて算出した世界経済成長率(World Growth Rate Based on Market Exchange Rates)も公表していますが、そのベースでは2020年の世界経済成長率はマイナス4.2%になっています。こちらは、新聞では滅多に報道されませんが、国際機関によってはマーケットレートによるウエートを用いた世界経済成長率をメインで公表しているところもあり、新聞ではその発表通りに記事が書かれているので注意が必要です。

 世界経済成長率の計算方法や国際機関による見方の違いについては、下記のコラムを見ていただければ幸いです。


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