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18年の成長率の大幅下方修正、気づいてます?

 本日(12月9日)、2019年7~9月期の四半期別国内総生産(GDP)の2次速報で、実質GDP成長率が上方修正されたことに注目が集まっています。日経電子版では、日本の四半期ごとの実質GDPの前年同期比成長率の改定幅がG7諸国で最大であることを取り上げています。こうした改定幅の大きさについては、これまで多くの研究者が指摘しており、私自身も分析を行ったことがあります。

 その一方で、報道で見逃されているのが2018年の経済成長率の下方修正です。今回、四半期ごとの速報段階よりも詳しい情報を用いて2018年の年次推計データが公表されていますが、2018年度の実質GDP成長率は0.3%と、速報段階の0.7%から大幅下方修正されているのです。

 この成長率の下方修正は、2018年のGDPの下方修正と、17年の上方修正によるものです。今回の改定による名目GDPの金額の差に注目すると、2018年は1.8兆円の下方修正、2017年は0.8兆円の上方修正となっています。

 さらに、3年前の2016年のGDPも下方修正されています。このように、年単位のGDPやその成長率は、速報値が観察されてから3年間は改定の余地があるのです。数値に一喜一憂せずに観察することが大事ですね。また、2018年から経済が急減速していることも、これで確認できたと思います。

 ちなみに、日経の記事では

内閣府が9日発表した2019年7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は前期比年率で実質1.8%増となり、1カ月弱前の速報値から1.6ポイントの大幅上方修正となった。ほぼゼロ成長とみられた増税直前の日本経済は、駆け込み需要などで比較的高めの成長を記録したという評価に一変した。

 と書いていますが、改定幅の分析を踏まえれば大した違いではありません。私が以前行った分析(以下の参考文献です)では、四半期ごとの実質GDP成長率の改定幅の絶対値の平均は0.5ポイント、年率なら2ポイントになります。つまり、年率でプラスマイナス2%はほぼゼロ成長と言って良いのです。その点で、2019年7~9月期の実質GDP成長率は速報値も改定値も、ほぼゼロ成長に変わりはないのです。「評価に一変した」と力を込める必要はないと思いますよ(笑)。

参考文献 飯塚信夫(2017)「GDP速報改定の特徴と、現行推計の課題について」、『日本経済研究』No.74

#COMEMO #NIKKEI

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