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弱い輸入で経常黒字の前年差が拡大~2023年5月の国際収支統計

 本日(7/10)、5月の国際収支統計が発表されました。日経は経常黒字が前年同月の2.4倍になったことに注目しています。確かに、経常収支の前年同月差は2ヵ月連続でプラス、プラス幅も4月の0.8兆円から5月は1.1兆円に拡大しています。一方、季節調整値でみると経常黒字は4月の1.9兆円から1.7兆円へ少し減っています。総じてみると、先月と横ばいな感じです。4月に久しぶりに季節調整値で黒字になったサービス収支は再び赤字になってしまいました(涙)。
 以下、気になる点についてコメントしたいと思います。

貿易収支赤字縮小は弱い輸入のため

 記事にもあるように、今月の経常収支黒字拡大の主因は貿易収支赤字の縮小です。4月は前年同月に比べて0.6兆円赤字が縮小していましたが、5月は0.8兆円縮小しました。記事にあるように、資源高の一服も一因ではあるのですが、下記のnoteで書かせていただいたように、物価変動を調整した実質輸入の減少が輸入金額減少の主因です。実質輸入の動向は国内需要の動きと関係が深いので、これが何を意味するのか(例えば、実質消費の落ち込み?)を今後、注意深く見ていく必要はありそうです。

旅行収支黒字増えても、その他サービス収支赤字も拡大

 先月は前年同月に比べて0.4兆円のプラスであったサービス収支は、5月はマイナス0.1兆円。2022年11月から続いていた前年同月差の連続プラス記録が途切れました。残念。下図を見ればわかるように、このところのインバウンド復活で旅行収支(=外国人観光客の日本国内での消費額-日本人観光客の外国での消費額)の前年同月差のプラス幅が拡大してきたことが、サービス収支の前年同月に比べたプラス幅拡大に寄与してきました。もう一つの日本の強みともいえる知的財産権等使用料収支のプラスも貢献してきました。
 しかし、その他サービス収支(知的財産権等使用料収支を除く)のマイナス幅が拡大して、そうしたプラス要因を帳消しにしています。
 ちなみに、その他サービス収支については「デジタル赤字」というネーミングが普及しつつあるようですが、若干言い過ぎな気がしています。詳しくは、下記のnoteをご参照ください。

#日経COMEMO #NIKKEI

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