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”日銀版コア”の上昇率がさらに縮小~2024年4月の消費者物価指数

 本日(24日)、2024年4月の消費者物価が公表されました。消費者物価(総合)の前年同月比上昇率は2.5%と3月の2.7%からさらに上昇率が縮小しました。先月のnoteで注目した消費者物価(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)はエコノミストの皆さんの間では”日銀版コア”と呼ばれているようですが、4月の前年同月比上昇率は2.4%と3月の2.9%から上昇率が縮小。縮小幅は0.5ポイントと、総合指数よりも大きくなっています。
 日経電子版は、過去、値動きが乏しかった「岩盤品目」でも値上げが始まっていることに注目しています。果たしてインフレ圧力は高まっているのでしょうか?


一時は4%を超えていた日銀版コアの上昇率

 日銀版コアと呼ばれる消費者物価(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)上昇率は2023年2月に、消費者物価(総合)、「コア」と呼ばれる消費者物価(生鮮食品を除く総合)の上昇率を上回りました。2023年4月には4%を超え、10月までは4%以上を維持していましたが、このところ急速に伸び率が縮小してきています。2024年4月には消費者物価(総合)の上昇率を下回りました。

食料関連の物価上昇率縮小が主因

 下の図は、日銀版コアの上昇率の寄与度分解を行ったものです。4%以上であった2023年10月と比較すると、「生鮮食品と外食を除く食料」のプラス寄与が2023年10月の2.0ポイントから2024年4月は0.8ポイントと1.2ポイントも縮小しており、この間の日銀版コアの上昇率縮小の主因であったことがわかります(外食は一般サービスに含まれますので除いています)。食料関連は、2022年半ば以降の物価上昇の主因でありましたが、その勢いは弱まっているようです。

一般サービス上昇率も上昇率縮小

 日経の記事ではサービス物価の上昇にも触れられておりますが、サービス物価のうち一般サービス(公共サービス以外)の上昇率も2023年12月には3%を超えていた一方で、2024年4月は2.4%まで伸び率が縮小しています。記事にも書かれている宿泊費の寄与は約0.7ポイント縮小(2023年12月:1.2%→2024年4月:0.53%)しており、一般サービス上昇率の縮小の主因と考えられます。記事では「「全国旅行支援」の影響が弱まった前年の反動」と書いていますが、むしろ、前年が支援で安くなっており、当年が支援がないため上昇率が高まっていた2023年後半の方が過大だったと考えられ、足元は実勢の伸び率に近づいているのではないでしょうか?
 なお、1月のnoteで解説しているように外国パック旅行費が引き続きかさ上げ要因になっています。これは年内いっぱい続き、年明け以降にようやく外国パック旅行費の上昇率の実勢が観察できるようになります。

エネルギー価格の押し上げが今後の注目点に

 以上のように、日銀版コアで観察される消費者物価上昇率は縮小傾向にあります。一方、今後懸念されるのは先月のnoteでも触れたエネルギー主導の物価上昇です。記事でも引用されている第一生命経済研究所のシニアエグゼクティブエコノミストの新家義貴さんのレポートによれば、エネルギー関連で以下の物価押し上げが今後予想されるようです。

5月:再エネ賦課金単価の引き上げ→電気代押し上げ
6月:電気・ガス代負担軽減策の縮小→電気代、ガス代押し上げ
7月:電気・ガス代負担軽減策の終了→電気代、ガス代押し上げ

 総務省統計局の資料によれば、電気、ガス代負担軽減策は4月の消費者物価(総合)上昇率を0.48ポイント押し下げています。つまり、この軽減策なかりせば、4月の総合指数の上昇率は約3%になります。一方で、日銀版コアはエネルギーを含まないので、軽減策がなくなっても変化はありません。
 総合指数の上昇率の要因分解をした下図のように、これまで下落圧力につながっていたエネルギー価格の4月の寄与は4月はほぼゼロになっています。負担軽減策がなければこれが0.49%になるわけです。
 先月のnoteにも書かせていただいた通り、今後、日本が輸入に依存しているエネルギー価格によって物価が押し上げられるという、日本にとってあまりうれしくない状況になっていきそうです。2024年1~3月期の実質GDPの前年同期比増加率が3年ぶりにマイナスになり、その主因が個人消費の減少であることを踏まえると、エネルギー以外の財・サービスへのデフレ圧力が再び頭をもたげてくるのではないかと心配になってしまいます。雀の涙の定額減税では、下支えにならないのではないでしょうか?

#日経COMEMO #NIKKEI


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