見出し画像

宿泊者数の前年比がプラスに転じたが…~2021年3月の宿泊旅行統計調査

 昨日(4月28日)公表された観光庁の「宿泊旅行統計調査」の2021年3月分のポイントは以下の通りです。2月分のまとめを書いた際に「そろそろ、前年同期比の見方に注意が必要になってきました」と指摘させていただきましたが、早速、NQNの穂坂デスクによる下記の記事において「前年比には落とし穴」と、しっかり指摘されてます。宿泊者数が前年同月比で1年2ヵ月ぶりにプラスに転じたのは、コロナ禍の影響で前年同月から激減が始まっていたため。来月(4月分)はさらにプラスが大きくなる可能性があります(緊急事態宣言の影響で打ち消される部分もあるでしょうが)。データを表面だけ見て騙されないようにしましょう。

延べ宿泊者数は13.9%増。2020年1月以来のプラス
 2021年3月の延べ宿泊者数は2725万9770人泊と、前年同期に比べて13.9%増。2020年1月以来のプラスになりました。日本人観光客の寄与がプラスに転じたのが主因ですが、これは、前述の通り、前年同月の宿泊者数が例年よりかなり少なかったため。例年の水準を示すと考えられる2年前の同月と比較すると、上記の記事にもあるように46.7%減であり、厳しい状況が続いていることに変わりありません。

画像1

宿泊施設稼働率は34.3%へ上昇も低迷継続
 3月の宿泊施設稼働率は34.3%と2月の26.9%から若干上昇しました。例年は60%近辺だったことを考えると、前年同月(32.4%)をわずかに上回っているものの、低迷が続いていることが明らかです。前年同月比に騙されないためにも、当面は稼働率に注目した方が良いと思われます。

 観光需要中心の「シティホテル」の稼働率は、2月の23.5%から3月は32%へと上昇しましたが、例年の稼働率が8割であることを踏まえると、半分以下です。「ビジネスホテル」の稼働率は、2月の37.3%から3月は45.5%に上昇しました。厳しい状況ではありますが、シティホテルに比べれば、まだ例年に少しは近づいているともいえます。

画像2

画像3

画像4

都道府県別の2021年1~2月累計の延べ宿泊者数の減少率トップは沖縄県
 1ヵ月遅れで確認できる都道府県別データを用いて、延べ宿泊者数の2021年1~2月の前年同期比減少率を最後に確認しましょう。減少率のトップ5は、(1)沖縄県(69.7%減)、(2)京都府(68.4%減)、(3)大阪府(67.0%減)、(4)千葉県(64.0%減)、(5)石川県(62.8%減)となっています。外国人観光客の押し下げ寄与が大きいところだけでなく、石川県や千葉県など日本人観光客の押し下げ寄与が大きいところも上位に入ってきています。都道府県別の宿泊者数の前年同月比は、来月公表の3月分から観察に注意が必要ですね。

画像5

都道府県別の客室稼働率の落ち込み幅にも注目
 ということで、今月から都道府県別の客室稼働率が例年に比べてどのような状態にあるかも備忘録として書いておくことにします。ここでは、例年の値を2015~2019年の5年間の平均値としました。
 まず、2020年の客室稼働率を例年の値と比較すると、落ち込み幅が大きい順に、(1)大阪府(マイナス53.8ポイント)、(2)東京都(マイナス51.2ポイント)、(3)京都府(マイナス45.3ポイント)、(4)沖縄県(マイナス41.5ポイント)、(5)福岡県(マイナス39.4ポイント)となっています。稼働率は100%を超えることはないのですから、50ポイント前後の低下の深刻さがわかります。
 次に、2021年の1~2月平均の客室稼働率を例年の値(上記5年間の1~2月の平均値)と比較すると、落ち込み幅が大きい順に、(1)大阪府(マイナス59.8ポイント)、(2)東京都(マイナス54.6ポイント)、(3)沖縄県(マイナス52.0ポイント)、(4)京都府(マイナス48.5ポイント)、(5)福岡県(マイナス48.1ポイント)となっています。大都市を抱える都道府県の落ち込みがかなり大きくなっていますね。

画像6

画像7

#日経COMEMO #NIKKEI


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?