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「総合」を除き、上昇率高まる。主因はサービス?~2024年6月の消費者物価

 本日(19日)、2024年6月の消費者物価が公表されました。消費者物価(総合)の前年同月比上昇率は2.8%と5月の2.8%と横ばいでした。日銀の金融政策に関連して注目を集める生鮮食品を除く総合は2.6%上昇と5月の2.5%から伸びが拡大しました。エコノミストの皆さんの間で”日銀版コア”と呼ばれている消費者物価(生鮮食品とエネルギーを除く総合)の上昇率も2.2%も5月の2.1%から拡大しました。以下の日経記事が「今回の物価上昇は電気・ガスの押し上げ」と書いていますが、主因はほかにあるのではないでしょうか?


経済を観察している人はいろいろ見てますよ

 上記の記事のTHINKコメントで、コメンテーターの滝田洋一さん(前職の大先輩(汗))は以下のように書かれてます。

日本のCPIは、「食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合」がほとんど話題にもなりません。比較するなら、リンゴとリンゴ、ミカンとミカンであるべきはずなのにとても不思議です。

正直、認識が誤っていますね(わー言っちゃった(笑))。
 日銀が政策判断の材料にしている(と思われますが私は確信持てません)、生鮮食品を除く総合(いわゆる「コア」)の報道に終始しているのはマスコミの方じゃないですかね?
 経済を真剣に観察している人は、いろいろ見てますよ。シンクタンクのレポート(特に第一生命経済研究所の新家さんのレポート)読んでますか?

 私もこんなことを書かれるのは心外なので、今月は「食品(酒類を除く)エネルギーを除く総合」も加えたグラフにしてみました。上記のように、今月は「生鮮食品を除く総合」、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」が前年同月比の上昇率が0.1ポイントずつ高まっていますが、「食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合」も5月の1.7%から6月は1.9%へと0.2ポイントも高まっています。

電気・ガス以外のエネルギー価格が下落した?

総務省統計局の資料を確認すると、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」による6月の総合指数に対する押し下げ効果(寄与度)は▲0.25ポイント。5月は▲0.48ポイントでしたので、この影響だけ考えれば総合指数は0.23ポイント上昇しそうですが、前月と変わっていません。
 一方、総合指数に対するエネルギー(電気・ガスが含まれます)に寄与を見ると、5月の0.54%から6月は0.59%と0.05ポイントしか上がっていません。電気・ガス以外のエネルギーが下押しになったのでしょうか?生鮮食品の総合指数の寄与は5月の0.38%から6月の0.33%へ0.05ポイント低下していますので、エネルギーの寄与上昇を生鮮食品の寄与低下が打ち消した形ではないでしょうか?

今月の上昇の本丸は「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」?

 以上を踏まえると、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が物価のかく乱要因になっていることは事実としても、今月の物価上昇の主因は「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」ではないかと思います。そこで、前月のように前年同月比上昇率の要因分解をしてみました。
 グラフと以下の計算式をご覧いただくとわかるように、総務省統計局が公表している、小数点第1位までの指数で前年同月比上昇率を計算すると、5月より6月の方が上昇率が縮小しています(驚)。実態としては、横ばいと見た方が良いのではないでしょうか?
 ちなみに、寄与度がはっきり下がったのが「生鮮食品と外食を除く食料」で、5月の0.8%から6月の0.6%へ0.2ポイント縮小しています。「食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合」の上昇率が0.2ポイント高まった理由はこれで説明可能ではないでしょうか?

2024年5月:106.6÷104.3*100-100=2.2…%
2024年6月:106.6÷104.4*100-100=2.1…%

一般サービス物価は「宿泊料」で上昇率高まった

私がかねて注目している一般サービス物価の前年同月比上昇率は、5月の2.2%から6月は2.3%へと上昇しました。総務省の資料で総合指数への寄与を見ると、5月の0.78%から6月の0.82%へ0.04ポイント高まっています。小数点第1位への四捨五入の関係で、「総合」指数以外の上昇率の高まりに寄与した可能性があるのではないでしょうか?つまり、主因は一般サービス物価ではないか?
 この一般サービス物価の上昇率拡大に寄与したのは「宿泊料」(5月の寄与:0.43%→6月の寄与:0.53%)でした。インバウンド需要で再び上昇に転じたのでしょうか?今後の動向に注目したいと思います。

#日経COMEMO #NIKKEI


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