経常収支黒字は一進一退~2023年9月の国際収支
本日(11/9)、9月の国際収支統計が発表されました。日経は、2023年度上期の経常黒字が前年同期の3倍になったこと、9月の貿易収支が原系列で黒字になったことなどを報じています。本稿では、今まで通り、季節調整値と原系列の前年同月差に注目していきたいと思います。
季節調整値でみると第一次所得収支頼みの経常黒字
9月の経常黒字は季節調整値でみると2.0兆円。8月の1.5兆円からは増加したものの、直近のピークを越えた7月(2.6兆円)には追い付いていません。また、5ヵ月連続で第一次所得収支のみが黒字という状況となっています。8月から経常黒字が増えたのは、貿易収支の赤字縮小(8月:▲4360億円→8月:▲1306億円)、サービス収支の赤字縮小(8月:▲6090億円→9月:▲3954億円)のおかげで、第一次所得収支の黒字は若干の増加(8月:2兆8440億円→9月:2兆91970億円)にとどまっています。
一方、原数値の前年同月差をみると2.0兆円のプラス。直近のピークであった7月(1.9兆円)を若干上回りました。貿易収支の前年同月差が2.2兆円までプラス幅が拡大したのが主因です。サービス収支のプラス幅は、前月の0.3兆円から今月はゼロになってしまいました。
サービス収支の前年同月差、「その他サービス収支」が再びマイナスに
9月のサービス収支の前年同月差は3ヵ月連続のプラスになったものの、プラス幅が446億円と急減しています。旅行収支のプラス幅が徐々に拡大する中で、このところサービス収支の赤字拡大に寄与してきた「その他サービス(知的財産権等使用料収支を除く)」の前年同月差が再びマイナスになっりました。日経が「デジタル赤字」と評した「その他業務サービス」の前年同月差は8月に2023年4月以来のプラスになりましたが、今月はほぼゼロまで急縮小しています。知的財産権等使用料収支も2ヵ月連続で前年同月差がマイナスになっています。
貿易収支の前年同月差はプラス幅拡大したが…
9月の貿易収支の前年同期差は2兆1504億円のプラス。1.7兆円のプラスだった8月からさらに増加しました。輸出金額の前年同月差がプラスに転じ(8月:マイナス2079億円→9月:プラス2256億円)、輸入金額の前年同月差のマイナス幅がほぼ横ばいだった(8月:マイナス1兆9192億円→8月:マイナス1兆9248億円)ためです。
ただ、輸出の回復は自動車関連頼みの面もあり、これまで貿易収支の改善につながってきた交易条件改善の追い風もなくなりつつあります。先行きの貿易収支の動向は楽観できないかもしれません。
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