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やっぱり、GDP成長率は前年比で見よう!

前期比成長率では方向性がよくわからない

 本日、2022年7~9月期の国内総生産(GDP)の一次速報が公表されました。フォーキャスターの事前予測に反してわずかなマイナス成長になったこともあり、新聞の書きぶりもなんだか悲観的です。しかし、下記の日経電子版の記事のグラフを見ればわかるように、季節調整済み前期比年率でみた実質GDP増減率はプラスマイナスが繰り返されており、正直、方向性がよくわかりません。今回のマイナス成長は2021年7~9月期以来、4四半期ぶりと言われてますが、2022年1~3月期も前期比年率0.2%とほぼゼロ成長でした。

前年比成長率は徐々に高まっている

 私は、かねて前期比ゼロ近傍でうろうろしている日本の実質GDP成長率は前年同期比で観察すべきと主張しています。例えば、2019年2月14日に書いた以下のnoteでは、2018年10~12月期の実質GDP成長率を前年同期比で観察すると、徐々にそのプラス幅を縮小していることがわかると書きました。当日の日経電子版の記事では、前期比年率で2期ぶりにプラスになったことを報じています。いまと逆ですね(笑)。
 当時の景気は2018年10月に山を付けたことが後にわかるのですが、前年比の動きを見ることで経済が減速していたことがわかりました。

 今日の日経電子版の記事は2019年7~9月期以降の前期比年率成長率をグラフにしていますので、私の方は、2019年1~3月期以降の実質GDPの前年同期比のグラフを、民間需要、公的需要、純輸出(=輸出-輸入)の寄与とともに描いてみました。すると、実質GDPの前年同期比成長率は2022年初めから徐々に高まっていることが確認できます。なかでも民間需要の寄与は順調に高まっていることがわかります(むしろ、公的需要が足を引っ張っている感じ)。実質GDPが前年比で1.8%増となっているのは、2021年4~6月期を除くと2017年10~12月期(2.2%増)以来です。
(※2021年4~6月期の前年比は、前年の2020年4~6月期が緊急事態宣言などの影響で大幅マイナス成長になった反動が含まれているので除きました)。

 次の図は純輸出を、輸出と輸入に分解したものです。輸入はGDPの計算上、引き算になるので、増えるとマイナス、減るとプラスの寄与になります。輸入の寄与は2021年4~6月期からマイナスが続いていることから、物価変動の影響を除いた実質でも輸入が増えていることがわかります。さらに、今回の2022年7~9月期はそれまでと比べても輸入増(マイナス寄与)が大きいことがわかります。今回の輸入増には特殊要因が含まれていることを内閣府が本日の発表時に説明したようなので、次の四半期はこのマイナス寄与が縮小することが期待されます。
 一方、輸出のプラス寄与はじわじわと拡大しています。自動車産業で供給制約から輸出拡大が難しかったと言われてきましたが、徐々に解消してきたのでしょうか?今後に期待したいところです(世界経済の減速は心配ですが(涙))

2022年4~6月期が上方修正されたことも、7~9月期のマイナス成長につながった

 さて、今回の前期比でみたマイナス成長ですが、前の四半期である2022年4~6月期が上方修正されたことも影響しています。次の図は、筆者も構築作業に参加している東京財団政策研究所のリアルタイムデータベースを用いて作成しました。2022年4~6月期の実質GDP(季節調整済み年率換算)は、2022年8月15日の1次速報時点では542.1兆円だったのが、9月8日の2次速報時点では544兆円に増え、本日(11月15日)のデータでは545.3兆円とさらに増えてます。本日公表された2022年7~9月期の実質GDP(同)は543.6兆円なので、4~6月期の1次速報値と比べればプラス成長だったのです。なかなか微妙ですね~

来月(12月8日)に公表される2022年7~9月期の2次速報に注目したい

 GDPは最初の速報値(1次速報)から、推計に必要なデータが追加されるたびに改定される運命にあります。2次速報では、民間企業設備投資や民間在庫変動の推計に用いられる「法人企業統計季報」(財務省)の情報が追加されます。2022年4~6月期のGDPも2次速報で民間企業設備投資が上方修正され、民間在庫変動のマイナス寄与も縮小したことなどで、GDPが増加しました。来月(12月8日)には、2022年7~9月期の2次速報が公表され、実質GDPが改定されます。
 さらに、来月の2次速報は、年に1回の詳細なGDP推計である「年次推計」も反映されます。2021年(および年度)のGDPが改定され、それは2022年4~6月、7~9月の実質GDPにも影響します。オーバーなことをいうと、過去1~2年の各四半期のGDPががらっと変わる可能性もあるのです。
 (※季節調整済み年率換算の実質GDPは、季節調整のかけかえの影響も受けます。今回公表された2022年4~6月期の実質GDPが上方修正されたのは、季節調整のかけかえの影響も少なくないようです)。

 その時、本日の日経電子版に掲載されている実質GDP増減率(年率)のグラフの形状がどう変わっているのか、そして日経がどう報道するのか、楽しみにしております~。
 私も前年同期比でみた実質GDPの動きがどう変わったかをnoteでお伝えできればと考えております!

#日経COMEMO #NIKKEI






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