ダイアログインタビュー ~市井の人~ 高橋秀典さんさん 「『認めて貰える居場所』づくりの旅」10

高橋 ここの仮設商店街(かしま福幸商店街)は、入居する条件があるんです。「地震・津波・原発事故の影響があった事業所」というね。でも震災から5年経って、今現在その条件下で商売出来る場場所を探してる事業者がいるかというと、少ないと思うんです。事業を再開したいなら、この5年の間に別の場所で再開してるでしょうしね。なのでその条件を取り払って、家賃を払って自由に入居出来るような仕組みを作れば、入居したい人は結構いると思います。ただ、そういう風に条件を取り払うなら、ここを管理している市としては、「最終的な仮設店舗の取り壊しも含めた管理業務一切を、自分たちで負担してくれ」という条件を付けざるを得ない。

――もしそれが実現したら、この場所は震災仮設じゃなく、チャレンジショップみたいな位置づけになりますね。

高橋 そう。そうなったら、ここの地代や建物の固定資産税、建物の取り壊し費用などを自分たちで積み立てる必要があるんですけど、今ここの事業者の間では、今からその積立が出来るのかという話になってるんです。中でも一番大きな問題がここの取り壊し費用なんですが、ぶっちゃけ1000万円かかると言われていて、その費用はどうするという事になるんです。

――今から急いで積み立てようといっても、1000万はちょっときついっすね。

高橋 「積み立てても良い」という人もいるし、「そりゃ無理だ。行政に払ってもらおう」という人もいる。となると、なかなか話はまとまらない。それに、ここの敷地は借地なんだけど、地主さんとしても、そうした問題にきちんと責任を負える人じゃないと土地を貸したくは無いだろうし。なかなか方向性は一致しないですね。

――その方向性を揃えるのは時間がかかりそうですね。というか、方向性を揃える必要があると思いますか?揃わないなら揃わないなりにやっちゃう手もありますよね。

高橋 その辺りは微妙なところですね。嫌だという人を説き伏せて巻き込んで話を進めても、最終的には足並みはずれていくでしょうし。「その方向性で良いよ」という風に言ってくれていて、尚且つやる気のある新規の事業者を集めて、元気な福幸商店街を作るやり方も、ある事はありますね。それも良いなと思います。

――そうなると、ますますチャレンジショップみたいになりますね。

高橋 イメージとしては、原町の屋台村かな(このころ原町区には「まちなかひろば」という屋台村があった)。チャレンジショップというよりは、そこで継続して商売を続けていこうという気持ちがある人を集めたいですね。ここ福幸商店街は、商売をする条件としてはとても良いところだと思うんです。駐車場も共同のものがあるし。駐車場付きの店舗物件を借りるとなると、コンビニの跡地なんかだと、月に賃料が数十万円にもなってしまう。ここなら一般店舗を募集したとしても、そこまでべらぼうな金額にはならないでしょうからね。それに知名度も有りますし。だから、お試しでお店を出してある程度ノウハウを得たら出て行ってしまうチャレンジショップというより、そこで本格的に長く商売をしていく気のある人に集まってほしいなぁと思ってますね。

――鹿島の街づくりの拠点というかランドマークのような感じの場所にしたいというわけですね?

高橋 はい。ここは確かに建物の形式は仮設商店だけど、所謂「仮設商店」として、都合の良い時だけ営業するような使い方じゃなく、本設店舗としていつもきちんと営業している店舗が並ぶ場所にしたいです。ここの場所にはそれだけのものをつぎ込むだけの価値は有りますから!

■ 高橋さんは、ここ「福幸商店街」が立ちあがった当初から「さくらはる食堂」を出店している。それに加え、福幸商店街の初代商店会長さんだ。ここ5年間「福幸商店街」でお店を出し、営業し続けたからこそ……ここを居場所として思いを込めて活動してきたからこそ、見えている価値や可能性があるのだろう。この「ここには価値がある」という言葉には、強く力が込められていた。「ここは良い場所なんだ!」とみんなに伝えたい…そんな思いをこの言葉から感じた気がした。


高橋 「うちのお店もきちんと昼から夜まで営業すれば良いんじゃないの?」と思われちゃうかも知れないけど、今のうちの人員体制ではそれはなかなか難しくてですね、ちょっとまだ無理だなと思ってるんですけど、本当だったら、昼の11時頃から夜の8時頃まで営業する形がベストだと思ってます。

■ そう。そこにはまた全然違う問題があるのだ。働き手の不足である。実はこれは、高橋さんのところだけの問題ではない。南相馬全体の問題でもある。


――その辺りはまた別の問題として、なかなか難しいところですね。人手不足ってのは、この地域全体の問題かな。

高橋 本当なら、昼の12時から夜の8時9時くらいまでびっちりやるような、居酒屋なら、毎日夜の11時12時まで開けられるような、そんな感じで、しかもそういうコンセプトがちゃんと分かるお店が揃うと良いなと思いますね。

――いや~今、原町の常設店舗ですらそれが出来ないお店って多いですよね。ファミレスですら人手不足で開けられない感じですし。その問題は、地域全体の共通の問題でしょうね。

高橋 そうなんですよね~。今、この地域では人手不足は一番の悩みだなぁと思います。うちも、従業員が来られる時間帯でしか営業出来ていない。本当はツルハドラッグの閉店時間に合わせて、夜の7時まで営業したいんです。ただ、保育園が夕方6時までしか預かってくれないから、お店は6時で締めなきゃなんない感じなんですよね。

――でも、「たこ焼 円達」と従業員の関係性って、良いモデルだなという気がしますね。付き合いは長いし、モチベーションも上手く維持出来ていて。

高橋 まぁ……良い部分も上手くいかない部分も……色々ありますよ(笑)。気を使う部分ももちろんありますからね(笑)。

~続~

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