ダイアログインタビュー ~市井の人~ 高橋秀典さんさん 「『認めて貰える居場所』づくりの旅」4

――ここまで話を聴いて、「高橋さんのやってきた事」の理由が見えてきましたね。

高橋 今でも理由は探し中(笑)。

――探し中とはいっても、30歳からたこ焼屋さんを始めて、そうした思いを持ちながら「たこ焼 円達」を切り盛りし続けて、商売としてもある程度の結果も出してる…それって凄い事だなと思うんです。そこで、商売を続けるにあたって心がけてる事って何ですか?

高橋 心がけてる事ですか。そうですねぇ…うちは従業員も含めてみんなそうなんですが、「最高に美味しいものを出したいな」という気持ちはとても強いですね。

――良いですね~それ!

高橋 うちは東北でやってるたこ焼屋なわけですけど、大阪でやってるお店以上に理想は高く掲げてるつもりなんです。その理想の中では「美味しいたこ焼の完成系」は出来てます。

――う~ん…「たこ焼 円達」もそうですし、「さくらはる食堂」もそうですけど、これまでの「評判」や、「過去の実績」に安住するんじゃなく、常に味やシステムの追及を頑張ってし続けてるなという風に見てたんですよ。「もっといいもの」への刷新を続けてるような。

高橋 この地域にはもともとたこ焼の文化が無かったわけで、そこで新たにたこ焼屋を始めるんだけど、始めた当初は、理想のたこ焼のシャープなイメージってのは今ほど無かった。だから、商売としてはそれほど成功していなかったんです。赤字経営を続けてきていたり。でもって、その度に凹まされるわけです。「あ~自分は世の中では通じないし、認めてももらえない!」みたいな具合に。けどそんな中で、自分の中で理想の形を新しく組み立てて、んでまた凹まされて、また組み立てて…と繰り返してるうちに、理想形がどんどんシャープになっていくんですね。で、今は理想の中では「美味しいたこ焼の完成系」のシャープなイメージが出来てきたんです。今ではその理想のたこ焼を作る事も出来るんですけど、実際にそれを商売の中で、いついかなる時も提供出来るかという部分で、まだ悩んでいます。

■ 明らかにステージが変わっている事が、この話で分かると思う。「自分の居場所探し」の結果、全力を注げる居場所を見つけた。新しいステージだ。高橋さんはそのステージで、たこ焼屋というものに全力を注いでいる。試行錯誤を重ねながら。こうなると人は強い!そりゃそうだ。ステージを自分で作り上げたのだから、強くもなるだろう。

――そこで、スタッフ全員の共通する想いとして、「最高に美味しいものを出す」というものがあるんですね!

高橋 はい。「美味しいものを出す」という心意気の部分だけを言えば、自分よりもむしろスタッフの方が強いかも知れない(笑)。

――お店でもイベントの屋台でも、「たこ焼 円達」と「さくらはる食堂」の従業員はみんな一所懸命やってますよね。出店の店員って、ダルッとやってる人も多い中(笑)、「たこ焼 円達」の屋台の従業員は、若いなりに元気良く一所懸命やってる印象です。屋台でも美味しいものがちゃんと出てくるし。あ、このインタビューが終わったら、たこ焼買って帰りますね(笑)。

高橋 有難うございます(笑)。…たこ焼屋をやっていて重要なポイントは、「お客さんがいつ来るか分からない。」って事なんです。それに合わせていつでも最高のたこ焼を素早く出せるのかというと、そうでは無いんですよね。それって凄く難しい事なんですよ。「いついかなる時でも美味しいたこ焼を」という事を目指すんですけど、「ベスト」のものを今の自分が常に提供していると言ってしまっては、それは違うなという感じがしてまして。今の自分はまだ「ベター」くらいなのかなと。

■ 何度も言うが、「たこ焼 円達」のたこ焼はとても美味しい。高橋さんのこの話を聴いた時「今よりもっと美味しいたこ焼を目指してるのか!」と、内心少々驚いた。思わず「もう十分美味しいじゃないですか」という言葉が口をついて出そうになったが、それを寸前のところで自重した。そんな言葉は、高橋さんのステージ作りの邪魔にしかならない(笑)。

~続~

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