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老舗を立て直せ!商いをする人に響く少女漫画『日に流れて橋に行く』

老舗百貨店の継承をテーマにした日高ショーコ先生の漫画『日に流れて橋に行く』。

おすすめされて読み、一巻の半ばで速攻ハマりました。

これ...ただの少女漫画やない...明治時代の下町ロケットや...!!

家業がある人、ブランドを構えている人には特に響くビジネス漫画だと思います。
私は家業(不動産業)があり、傍で別の事業(フリーランスデザイナー)をしているので、その視点でここが良かったよポイントをつらつらと書きます。

多少ネタバレしているのでお気をつけて!


【『日に流れて橋に行く』あらすじ】
江戸から続く老舗呉服屋「三つ星」の三男・虎三郎は、本場のデパートメント経営を学ぶため渡英。三年後帰国するも旧態依然の店に、居場所はなかった。
そんな折、当主を務める兄・存寅が店の金を持って行方不明に。虎三郎は英国で知り合った鷹頭の協力のもと、新しい当主として「三つ星」の改革に乗り出す。
(月刊YOUサイトより抜粋)


現代にも通じる事業継承の心得

主人公・虎三郎がおこなった改革をかいつまんで挙げるとこの3つ。

その1.行動でスタッフの信頼を得る
その2.不良資産を売り切る
その3.客に間口を開く

THEビジネス!
これを軽やか&華やか&楽しく漫画にされている日高ショーコ先生の手腕よ...!

この3つの改革を行う中で、虎三郎が一貫して持っていたのが「三方良し」の精神じゃないかなと思いました。「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」。

それがよく表れていると感じた台詞がこちら。


『外国から安く入ってくるものに流されて
職人さんたちの技術が消えてしまうこともある』
『手頃な価格のものばかりを買っていたら
物欲も薄くなっていくし
最後には買い物そのものに
興味を失ってしまうと思う』
『お客様は見る目がないわけじゃない
そこを考えて工夫して
付加価値さえつけていけば
高いものも売れると思うんだよ』


金や階級に左右されず、物の価値を見極める虎三郎。
結果として虎三郎の扱う商品だけでなく"彼自身"を周りの人は信頼するようになります。
まさに最近巷でも言われる「信用経済」。

おかげで「三つ星」は軌道に乗り始めました。ただ、話題性のあるものは廃れるのも早い。

そこで次に虎三郎が打った手は「広告」。でもこれがただの広告じゃない。ロマンのある広告。ストーリー型マーケティングって括りなのかな。

ネタバレになるので詳細は伏せますが「私も藍染の紫陽花柄の手ぬぐい欲しい!」って読みながら叫んじゃった。


恋愛も歴史もヒューマンドラマもぜ〜んぶ込みです!

たった3巻で上に挙げた改革を描き、さらに
・女性の働き方
・登場人物たちのヒューマンドラマ
・歴史背景
・恋愛要素
も描かれているんですよ...!
なのに分かりづらさがなくどんどん引き込まれる。テンポがとにかく良い!


特に、初の女性店員となった時子ちゃんの奮闘には心惹かれます。今より更に女性の社会進出が成されていない時代。

親には結婚しろって毎日言われるわ、入社初日から陰口叩かれるわ、仕事やればイビられるわ。

「私ここにいていいんですか」と上司である鷹頭に愚痴ると、返ってきたのはこの台詞。


今その手に抱えているのは
お前が見つけた仕事だろ?
ならそのまましがみつけ。
手を離せば溺れるぞ。


刺さる...私にも刺さっちゃいました鷹頭さん...!

そして「ファッションが大好き」の思いをフル活用して仕事に打ち込む時子ちゃん。
のちに、お買い物にきた女の子に「憧れます」と言われたシーンは、拍手せずにいられませんでした。
朝ドラ『あさが来た』の主人公を彷彿とさせるヒロインっぷりです。



そんな彼女をスカウトした虎三郎と鷹頭のバディ感がたまらなかったり、時子ちゃんに惹かれる売れっ子小説家がイケメンすぎたり...
登場人物すべてが魅力的。

登場人物の数だけ野望や夢や謎が絡み合っていて、益々ストーリーが深まっていくんだろうなと期待しかありません。


さらに個人的に言えば、歴史あるものや着物好きな私にとって画面すべてが大好物!

モノクロなのに艶やかさが伝わってくる着物たち、それを纏う日本髪女子たちのかわいさが!異常!!

そして華やかな老舗百貨店たちの建築、内装がたまらんのですわ...江戸東京たてもの園や明治村が好きな人にグッとくるやつ...。

「上野の百貨店と言えばあのお店...?!」と舞台を想像してむふふってできるし、「えっ徳川慶喜も出てきちゃうの...?!」ってそわそわもできるし。

実写化待った無し。ここはN●Kさんによろしく頼みたい。



ハマると思うっておすすめしてくれたカナエさん、ありがとうございました!ドンピシャでした!

『日に流れて橋に行く』の最新刊は5/25に発売だそうです。ビジネス、恋愛、歴史、ヒューマンドラマ、あらゆる要素が詰まっているので全方位の方におすすめできます。
まだ発行巻数少ないから追いつける!みんな読んで!

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