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教育の未来にデータの力を! ~戸田市が外部人材を募集中~

戸田市教育委員会 教育政策室担当課長の杉森と申します。
昨年度は戸田市立教育センター所長として「誰一人取り残されない」教育に向けた不登校対策について取組を進めました。noteでもたくさんの反応・反響をありがとうございました。
今年度は、担当課長として取組を進めております。 

さて、私は「誰一人取り残されない教育の実現」のために「データが教育の未来を切り拓く鍵になる」と本気で思っています。
そこで、今回は、データに期待することや、今回の人材募集(9月22日(金)8時29分〆切です!)にかける思いについてお話させていただきます!

(応募はこちらから)


1.戸田市ってどんな所?

戸田市は、埼玉県の南部にあり、東京都に隣接する街です。
私も県内から毎日通勤していますが、新宿や池袋と直結する埼京線が通っており、都内に通勤する方が多い印象です。
人口は約14万2千人(令和5年8月1日現在)で、この人口減少時代にもかかわらず、増加傾向にあります。また、平均年齢が41.7歳と27年連続で県内一若く、30歳代の子育て世帯が多い活力ある街です!
市内には小学校12校、中学校6校があり、児童生徒数は約12,000人です。

本市は、「変化する社会の動きを教室に取り入れる」との考えの下、兼ねてから産官学と連携した先進的な教育改革を進めており、本年2月には岸田総理大臣、また、7月には永岡文部科学大臣が本市の学校を視察されるなど、全国的にも大きく注目されています。

(戸田市立戸田東小・中学校に設置されているSTEAM Lab)

(岸田総理大臣・永岡文部科学大臣視察)

2.なぜ専門人材を募集するの?

これまでの記事でご紹介したとおり、本市では現在、(1)こどもたちの不登校等のSOSの早期発見・支援、(2)貧困・虐待等の困難を有するこどもへの支援、(3)学校カルテによる現場への継続的改善のためのフィードバックを内容とする「教育総合データベース」の構築を行っております。

データベースの構築それ自体が目的ではありません。
それにより、これまで後手の対応で必ずしも救えていなかった子供たちに、先手で少しでも早くサポートを届けること(プッシュ型の支援)で、「誰一人取り残されない」教育を実現することが目的です。

もとはというと、学校で担任をしているときから、子供の情報が一つにまとまっていたらどんなに助かるか、ということが問題意識としてありました。

子供の学習状況や宿題などの提出状況、学力調査の結果はもちろん、登校の情報や各種アンケートの回答が一元化されていれば、それぞれ確認しやすいものの、当時学校は全て紙。
職員室の机やキャビネットから必要なものを引っ張り出して確認することにかなりの労力が必要でした。

特に生徒指導の対応が必要なときには、「あのアンケートどこにしまったかな」とか「最近の相談記録はどこに書いてあったかな」など、探すことに時間を取られ、本当に大事なそれらをもとに対策を考えることに時間が割けていませんでした。

また、教務主任や教頭の時には、各学級の子供の欠席状況や学力の状況などについて、担任による報告や、調査結果を別々に確認することで把握はしていましたが、「もっと早く担任に声をかけておけばよかった」とか「この子はこんな力があったのか。早く見つけてあげていれば活躍の場面があったかもしれないな」など、対応が後手に回ってしまい反省したこともしばしば。

今はほとんどの校務がデジタル化され、テキストや数値ベースで残っていきます。
これらを一元化でき、「担任や管理職がアクセスしやすい仕組みができたらいいなぁ」「ベテランの気づきやノウハウをシステムに実装して、欠席が続きそうなケースはアラートが出るといいなぁ」などの構想を描いていました。

それが、今回の教育情報データベースの構築で実現できるのではないかと考えています。
そして、その実現に向けて、データの整理や分析、支援の試行、課題の抽出や解決策の検討などを行っていくには、専門的な知識と経験を有する人材が不可欠です。

他方で、現場の状況を見てみると、GIGAスクール構想によるICTがようやく「代替」から「活用」の段階に入っているところで、「日常的」にデータを活用して授業や生徒指導、学級・学校経営を科学するという視点と実践は、市内全校で十分に浸透しているとはまだ言えない状況にあります。

最終的には学校現場でそのような人材が育っていくことを目指していますが、いわば「過渡期」とも言える今においては、データで「行政」と「現場」をつなぐキーパーソンの存在が重要だと考えています。

3.募集の内容は?

前述のように、戸田市教育委員会においては、令和5年度もこども家庭庁「こどもデータ連携実証事業」の実施団体として採択され、
(1)不登校等に係る子供達の SOS の早期発見・支援、(2)貧困・虐待等の困難を有する子供達への支援、(3)学校カルテによる現場への継続的改善のためのフィードバックを内容とする、「教育総合データベース」を構築しています。

今回募集する職員の業務は、大きく分けると以下の2つの業務があります!

(1)教育総合データベースの構築
データベースの構築に向けて、関係部局や事業者とも連携しながら、主に以下の業務を行っていただく。
・対象データ項目の検討
・各データの保存形式・保存場所・収集方法を整理(紙情報のデジタル化を含む)
・データ連携のためのシステムやプログラムの検討
・個人情報保護措置やアクセスコントロール、倫理面の配慮事項の検討
・利用者に分かりやすいインターフェースの検討
・不登校等のSOSの早期発見・早期対応
・学校への継続的改善のためのフィードバック、よい取組の可視化
・次年度以降に向けた課題の抽出、解決策(新たな施策など)の検討

(2)学校現場におけるデータの利活用
学校現場におけるデータの利活用を促進するため、主に以下の業務を行っていただく。
・本市におけるEBPM(EIPP:Evidence Informed Policy and Practice、エビデンスを参照した政策及び実践)の全体の方向性の舵取り
・教育委員会・学校・教師それぞれのレベルにおける政策のPDCA(Plan, Do, Check, Action)サイクルの構築
・既存の各種調査等の改善(紙の調査のデジタル化やフォーマットの標準化など)
・授業改善や学校経営に係る知見の一般化・規準化(ルーブリックの精緻化や優良事例の共有など)
・産官学との連携の下、教育改革の新たな視点の発見

この2つの仕事に共通するのは、「データで行政と現場の架け橋」になっていただくということです。

なお、学校現場の立場に立つと、データには以下のような用途があります。
課題を特定するために使う。
資源投入の優先順位を決定するために使う。
ある取組の効果を測定するために使う。

他方で、それを実践するに当たっては、以下のような様々な課題が山積しています。
・そもそもデータ化されていない。(紙の書類が山積している)
・データ化されているが、フォーマットがバラバラで分析に適していない。
・取れていないデータや欠落しているデータがある。
・データごとにバラバラに保存されていて、複数のデータについて横串を通して見ることが出来ない。
・データが返ってくる頃には情報が古いものになっている。
・データを見ても何を意味しているのか分からない。
・そもそもデータを活用する必要性を感じない。

こうした現場の「困りごと」に対して、仕事のやり方から変えていく(業務改革)ことも含め、改善点を提案し、具体的に「やってみる」ことがまさにお願いしたい仕事になります。
イメージとしてこちらの図を作ってみましたのでご覧ください!

(データで行政と現場の架け橋に)

それと、私達は、AIでビッグデータを解析して…というような最先端の取組よりも、まずは地道な所から改善にチャレンジしています。

例えば、市内の全中学校で行っている「学校生活アンケート」というものがあります。
「学校に行くことが楽しい。」、「家には、私の気持ちをわかってくれる家族がいる。」「学校には、私の気持ちをわかってくれる先生がいる。」「クラスには、私の気持ちをわかってくれる友達がいる。」といったような、生徒の学校・家庭生活への困り感を把握する上で大変重要なものです。

しかし、このアンケートはもともと紙で行っていました。
その結果、臨床心理士が目視で個票を1つ1つ見ながら分析しており、困り感を訴えている全ての生徒に対して、迅速に学校に結果をフィードバックし、対応することが必ずしも出来ていなかったのです。
それが、昨年度に職員が簡単なマクロを組んで、Googleフォームでアンケートを行う方式に変えたことにより、ほとんど自動で集計を行うことができ、アンケート終了後からわずか2営業日後に、緊急に対応を要する生徒のリスト(分析結果)を学校に返却することができるようになりました。

また、学校が紙のアンケートを集めて送る手間もなくなったこと、生徒も一度回答を入力しても、期間内であれば回答を修正することが出来るようになったこと、こうしたこともデジタルの効用だと実感しています。

こういった、「データの取り方」のような所も、是非専門的な知見からアドバイスをいただきたいと思っています。

そして、なぜ戸田市なのか。

本市では、教育長の、

「子供達が出ていく社会を知ろうとしないのは極めて不誠実」
「学校という学びの場を子供達が未来を感じられる空間に」
「凡庸な90点の取組よりも、60点でも夢のある取組を」

というビジョンが学校現場まで浸透しており、挑戦や失敗を歓迎する組織文化が根付いています。
新しいことをする上で、これ以上恵まれた環境は中々ないのではないでしょうか。

「教育委員会や学校って何か堅そう・・・」「民間企業でしか働いたことのない私が色々言って大丈夫かな・・・」と不安に思われる方。全くそのような心配はいりません!
教育政策室がチームとして全力でサポートしますし、むしろ、戸田市では学校現場の前のめり感に圧倒されることの方が多いのではと思います(笑)。

4.募集要件や勤務条件は?

募集要件及び勤務条件等は、以下のとおりとなります。
昨年度の募集から、受験資格を一部緩和したり、勤務日数をより柔軟にしたりと、より多くの皆様のニーズに応えられるように工夫をいたしました。
(※あくまでも一部の抜粋ですので、詳細については必ずホームページから御確認をお願いいたします。)

○受験資格
次の(1)及び(2)の全ての要件を満たすことが必要です。

(1)次の受験資格を満たす者
1983年(昭和58年)4月2日以降に生まれた者
・官公庁や民間企業等において、データベース構築、データ分析、政策改善・業務改革、教育分野におけるデータ利活用の職務に通算3年以上(週20時間以上)携わった者を対象とする。(1年未満の職務経験期間は除く。)

(2)次のいずれにも該当しない者
①日本国籍を有しない者
②禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
③戸田市職員として懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
④日本国憲法施行の日以降において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

○勤務条件等
(1)任期:3年
(2)勤務日数:週2日~週5日
(3)勤務時間等:原則として午前8時30分から午後5時15分まで
(うち60分休憩時間あり)
(4)休日:原則、土曜日、日曜日及び祝日並びに12月29日から翌年1月3日まで
(5)休暇:年次有給休暇、その他規定により休暇等取得可能
(6)給与
①初任給例(地域手当を含む) 
(週5日勤務) 月額422,890円
学歴や職歴に応じ、一定の基準に基づいて支給されます。
※採用されるまでに給与改定等があった場合は、その定めるところによります。
②諸手当:期末・勤勉(賞与)、扶養、通勤、住居、超過勤務等の手当を支給要件に応じて支給

上記の条件に当てはまるのであれば、副業・兼業としての勤務も可能です!
なお、副業・兼業については、選考過程において状況を確認させていただくとともに、仮に採用された場合には、市の規則に基づいて営利企業従事について申請をいただき、認められるかどうか判断されます。
なお、当該職員は、戸田市教育委員会において勤務する正規の職員で、給与、勤務時間、服務、休暇等の勤務条件は、原則として任期の定めのない職員と同様です(任期が定められていること、育児休業の取得及び育児短時間勤務を利用することができないなど一部の条件を除く)。

「関心があるけど、この条件では今回の応募はちょっと難しいかな・・・」という方もいらっしゃるかと思います。
本市の取組は、このnoteや様々な場でこれからも発信をしていきますので、是非、戸田市の教育改革を陰ながら応援いただけますと幸いです!

5.どんな人達と仕事するの?

私の所属である教育政策室には、学校現場の管理職経験者である私のほか、以下のようなメンバーがいます!
・国(文部科学省)からの出向者である室長
・元教頭の教育センター所長
・埼玉県教育委員会からの派遣者
・元教諭の指導主事
・戸田市役所のプロパー職員
・戸田市教育行政プロ採用職員(データ利活用や特別支援教育などの専門人材)
・元校長の学校経営アドバイザー

これだけ多様な背景を持つ人たちが集まっている部署は、市町村ではあまりないのではないでしょうか。
私自身、チームで議論をする中で、こうした同僚から、国の最新情報や県との役割分担、市役所の意思決定の仕組み、学校現場として予想される反応、専門分野の最新の知見などを学んでおり、「これまで見えていなかったものが見えてくる」ことが多々あります。

時には、お互いに背景や考え方が違うので、議論をする時には意見の相違があることや、時には熱くなりすぎて「激論」になることもあります。しかし、私はこれをポジティブなこととして捉えています。

「子供たちのためにこの取組はどうあるべきか」をそれぞれが真剣に考えているからこそ、「なあなあ」で誰かが説明して終わりの議論ではなく、
「何が課題なのか?」「抜けている論点はないか?」「どのような仮説を検証するか?」「この手法で救いたい子供たちにちゃんと届くのか?」「どうやって効果を測定していくのか?」といったことを徹底的に話し合っています。

協議の様子

手前味噌になりますが、お互いが議論を通じて自分の考え方を見直し、理解を深めてからプロジェクトを進めるので、一旦やろうと決めた時のスピード感と一致団結力で右に出る職場は中々ないと思います。

6.応募者へのメッセージを!

教育データ利活用は全国的にも未開拓の分野であり、自治体でここまで前向きに挑戦し、かつ積極的に発信している所は、そうそうありません。

様々な課題もありますが、政策の面でも人の面でも、「日本の教育データ利活用の歴史を切り拓く」ためにこの上ない環境が整っており、戸田市で得た経験は必ずや、その後のキャリアアップにもつなげていただけるものになると確信しています。

また、昨年度は100件以上の視察を受け入れるなど、戸田市は教育改革で全国的に注目されていますが、不登校の子供たちへの支援など、今まさに現場で困っている子供たち、保護者に対して、既存のやり方にとらわれず何が出来るのか、職員が日々真剣に考え、提案・議論し、そして関係者とともに行動しています。

(2つめの教育支援センター「西すてっぷ」開所)

制度や予算といった施策を「立案」するのみならず、住民サービスや現場の課題に最も身近な基礎自治体として、学校現場や子供たちへの実際のサポートを含めたその「実行」の部分まで、一気通貫で携われる。
チャレンジングであると同時に、こんなにワクワクする場所はないと思います。

是非、私たちと一緒に日本の教育の歴史に新たな1ページを刻みませんか?

以下リンクから、意欲ある皆様からの応募を心よりお待ちしております!

教育政策室のメンバー(一部)

<今後のスケジュール>
・応募期間:7月28日(金)午前8時30分 ~ 9月22日(金)午前8時29分
・選考日:10月上旬までに実施
・採用予定日:2023年(令和5年)11月1日(双方合意の上、時期が変更となる場合があります。)

(応募はこちらからお願いします!)


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