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夜の帳が昇るまで:フィンランドサバイバル

皆さんはフィンランドという国名を聴いてどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?
実際に短期で旅行をした人ならヘルシンキの大聖堂やヨーロッパらしい石畳が続く街並み、オーロラツアーやサンタクロースにトナカイなんかを思い浮かべるでしょうか。
実際には行ったことはない人でも、社会学に興味がある人なら、福祉国家やPISAテストというワードが出てくるかも知れませんし、
雑貨好きならムーミンやマリメッコを思い出すかもしれないですね。

実は私は交換留学生として一年近くフィンランドに住んでいたことがありまして(実際には10か月程ですが)。
そんな私のフィンランドでの生活についてもこれから少しずつ投稿していければと思います。
そうは言っても、住んでいたのはもう三年以上前になりますので記憶があやふやな部分もチラホラ・・・。
さらに当時の写真を携帯の機種変更をする前にバックアップし忘れたため上げる事が出来ないですし・・・。
そういうところに関しては目を瞑っていただいて。

さて、この投稿にはフィンランドサバイバーという何とも禍々しいタイトルうがつけられていますが、
「フィンランドって快適な国なのではないの?」
と疑問を呈した方も少なくないかと思われます。
敢えて言いましょう。
フィンランドは人が住むには過酷な地です!
むしろ、そのような過酷な地であるからこそ、あれだけの福祉体制が備わったのだと私などは考えるわけでして。

ですので、ここではフィンランドの過酷な側面について話して行きたいと思います。

夜の帳が昇るまで

さて、フィンランドでの生活の何が過酷なのか?
北欧、つまり北極圏に近い国ですので、やはり寒さからくる辛さをイメージする方が大半でしょう。
しかし、寒さなんていうのは実は大した問題ではないのです。

では一体何が過酷なのでしょうか?
答えは極夜です。

中高の地理で習ったことをご存じでしょう。
極圏では夏になると日の沈まない時期の白夜、冬になると日が昇らない極夜が訪れます。
私の住んでいたヨエンスーという街は北極圏から離れていたので実際に極夜を体感したわけではないのですが、それでも冬になると日照時間は極端に短くなります。
具体的には日の出が9時過ぎ、日の入りが3時過ぎという具合です。

さらに厄介なのがその天候。
冬のフィンランドの空はほぼ毎日分厚い雲で覆われています。
一週間以上太陽を拝めないことなど当たり前です。

陽の出ている時間は少ない。その上その光は我々の住む地面を照らさない。
冬のフィンランドでは夜の帳が昇らないのです。
そんな地に住むとどうなるかご存じでしょうか?

実は人間は日に当たらない時間があまりにも長く続くと精神に異常をきたす可能性が高くなるのです。

私たち留学生は初めのオリエンテーションで大学の学長らしき先生にこんなことを言われました。
「冬になるとフィンランドでは太陽を見る事が出来なくなります。すると人間はビタミンDを体内で作れなくなって精神を安定させるのが困難になります。なので冬にはビタミンDのサプリメントを買ってください。」

フィンランドの冬は寒さよりも暗さがの方が危険なのだと現地人が語ったのです!

私はよくわからないプライドのせいか、基本的にはスーパーナチュラルを好むので、サプリメントには頼らず生活していましたが、これがもう本当につらかった。
というか北欧の冬が過酷な事にビタミンDなんて関係ないと私は思っています。
まず朝が弱くなる。
起きても陽が昇ってないのですから、起きる気力も失せますよ。
起きて学校に行っても見える景色は基本的に雪の白と空のグレー。
モノクロ映画に三か月以上閉じ込められて正気を保てる人間がどの世界に居るんですか。
自習をするにもお昼過ぎには外が真っ暗。
テスト勉強は一夜漬け派の人間でも、それは夜が短いから集中してできるのです。

夜が長いフィンランドの冬。
ちなみにいうと、フィンランドの方田舎では娯楽を探すのにも一苦労。(これについてはまた別の記事で書ければと思います)
そんな国だからこそ、フィンランド人は夏休みをできるだけ長く設けます。
日照時間が長く、気候も穏やかな夏に一年分の鬱憤を発散するのです。

フィンランドは夏休みが長いらしいよ。
だからフィンランドに移住しよう。
なんて甘い考えを持っている人は12月のフィンランドへ一か月間行って、文字通り頭を冷やしてきてください。

フィンランド人のサマーバケーションとは夜の帳が昇った喜びと、またそれが再び降りる事への畏怖からくる、暗闇への細やかなる抵抗なのです。
私の知る限り、北欧人ほど我慢強い人々を知りません。

ということで、今回はフィンランドの冬の過酷さについての記事でした。
どうか、これから彼の地に旅立つ人の道しるべにならんことを。

それではまた今度・・・。

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