見出し画像

相対性ずれ理論 〜「面白さ」の正体〜

いきなり結論:

・ショートショートの作り方(星新一氏 江坂遊氏 田丸雅智氏)

・お笑い芸人や落語家の、謎かけ/ダジャレ/フリートーク/漫才/コント/小咄/落語etc

・植田まさし氏の作り方

・これまでの人生で触れた全ての「物語」

・小説現代ショートショートコンテストでの、自分の入選作

これらを総合して研究した結果、タイトルの通り、人間が面白さを感じる原因を解明でき、そして「面白さ」は以下と定義することができました。

共通項を持つ二つの事象に適度なずれがあるとき、人間はそれを面白いと感じる。

方程式にするとこのようになります。

面白さFun = 事象A → 事象A' (not 事象A → 事象B)

・事象Aと事象A'は共通項を持っています。それは同じ意味合いであったり、同じルールであったり、同じ字面であったり、同じ外見であったり、同じ味であったり、同じシチュエーションであったり、同じ境遇であったり、同じ生き物であったり、千差万別ですが、とにかく「共通する何か」を持っています。

・しかし事象A'は事象Aと完全に同じではありません。だから「A'」であり、この「'」の部分がすなわち「ずれ」、つまり「面白さの原因」となります。

・「ずれ」は距離となって現れます。近ければ「感動の面白さ」遠ければ「笑いの面白さ」と、人間は受けとめます。事象Aと事象A'の「ずれ」が最大、つまり最も遠くなったとき「メチャクチャ笑える状態」が発生します。

・しかし、共通項が全くない事象Bや、「ずれ」が遠くなりすぎた事象Bと、事象Aとの間には、「面白さ」は発生しません。したがって警告の意味を込めて「(not 事象A → 事象B)」と表せます。事象A→事象Bの状態は一般的には「すべっている」と表現されます。

・事象Aに対して、事象Aと共通項を持つ事象A'を「提示する」ことが、面白さの発現となります。

・この「二つの事象における共通項とずれが面白さを発生させる」という法則を「相対性ずれ理論」と名付けました。「相対性」は相対的なニュアンスがあるからという意味もありますが、単にその方がかっこいいからです。

最も単純な実例:

小咄
「隣の家に囲いができたってね」
「へぇ」

・「へぇ」は「塀(へぇ)」と返事の「へぇ」の二つの意味があります。「塀」と「へぇ」は「同じ音」という共通項を持っています。

・しかし「塀」と「へぇ」は、全く同じものではありません。一方は物理的な塀、一方は音声による返事です。ここに「ずれ」が生じ、この「ずれ」が「面白さ」として認識されます(この例の場合、ギャグとしての面白さの度合いは無視してください。少なくとも"ユーモアは発生して"います)。

・この「共通項とずれ」は、古今東西のありとあらゆる「面白さ」の中にひそんでいます。たとえば主人公が人間的に成長する物語も、序盤の主人公を「事象A」、終盤の成長した主人公を「事象A'」とすると、なぜ「面白い」と感じるのか説明がつきます。もし終盤の主人公が、それまでの展開を全く無視した「事象B」になってしまっていれば、それは面白くない、駄作ということになるでしょう。「男と女」「善と悪」「生と死」といった二元論の物語が絶えないのも、そこに「共通項とずれ」があるからと考えます。

・「オチ」も、相対性ずれ理論によって説明がつきます。オチとはすなわち物語(便宜上物語と書いていますが漫才でもコントでも四コマ漫画でも同じことです)の最後に提示される「円環の状態」のことです。物語のどこかで一度触れたもの(「フックポイント」と名付けました)を最後にもう一度触れる、これがオチの正体です。そして「フックポイント」を事象A、「オチ」を事象A'とすると、やはりなぜ「面白い」と感じるのか分かります。もしオチを「事象B」にしてしまったら、それは最後の最後に受け手を困惑させる、奇妙な物語になってしまうでしょう(「ポプテピピック」のようにその奇妙さがウケる場合もありますが、あまりにも例外的で、目指すべき王道ではありません)。

ではどうやって実践するか:

全ての作家全ての芸人は、いかにして共通項とずれを生み出すか戦ってきたといっても過言ではありません。星新一氏の作品の作り方は言葉の要素を分解し、共通項を持つ言葉を二つ組み合わせ、その言葉を素に物語を考える、というものでした。この「二つの何か(大体の場合"言葉")を組み合わせてアイディアを考える方法」は様々なクリエイターが用いています。星新一氏の他には弟子筋の江坂遊氏と田丸雅智氏、明和電機氏(NHKの探検バクモンで確認)、デビッド・ボウイ氏もこの方法で歌詞を作っていたそうです。植田まさし氏の作品も、多くの場合で「二つの何かの組み合わせ」からできています。あるレベルに到達したクリエイターが自然にたどり着く方法なのかもしれません。

というわけで現時点では、ショートショートの作り方を積極的に公開し教室も開催している田丸雅智氏に習うのが、共通項とずれを会得する近道なのかもしれません。が、私には田丸氏の作り方はどうも合わなかったので、独自に共通項とずれの作り方を開発中です。

つづく。
-----
研究中の課題
・こととものの問題
・連想連結法
・共感変数
・バウムクーヘン理論
完全に証明できるのはいつになることやら。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?