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猿のように舞い、猿のように刺す

saru.comの誕生前夜





代官山オフィスで働いていた頃の話







忙しい素振りだったはずなのに
独特の空気を持った男が
名乗りもせずに向かいに座った

一目で「この人は楽しい人だ」

と、見抜けてしまった


こちらは、いったん
仕事の手を止める




でも、話し出すわけでもなく
ひたすら指をさすっている


誰だかは知っている
知ってはいるが

座ってきたのはそちらだ
口を開くのを待ってみる

「……」



ずっと指を触っている



声を発するより先に
チラッとこちらを見て
すぐ目をそらす




もういい
こちらも探ってみよう
なぜ指を気にしているのか



よく見ると
右手の中指の第ニ関節に
異常な大きさのたこがある



目を合わさないようにして
原因を推測してみる



ペンだこにしては
大きすぎる
しかもペンのあたらない所だ

そうこうしてるうちに
口が動いた



「……、…………。」




聞き取れない
もう限界
こちらからつい
質問するハメに




「どうしたんすか?」




「…やりすぎたんよ」




え?
今なんて言ったんだこの人
仕方なく聞き返すと




「ウイイレやすぎてこんなやわ」 





「そんなん知らんし!」

と、心の中で叫んだ

詳しく聞くと
社内でサッカーチーム

といってもプレステの
ゲームサークルらしいが
その大会前だとかなんとか


で、猛練習中で
たこができたとのこと
ますます
知らんよ、そんなこと



でもあまりにも
楽しそうに話す彼と
そのウイイレへの熱量に
すっかり魅力された



当時の私は
歳上ではあったが
後輩の彼を
「かっちゃん」
と呼んでいた

そう







そんな彼は社長の息子さん





初参戦

あの不思議な初対面から
しばらく後
大阪出張でその時は来た

会場は独身同僚のワンルーム
財務、営業、総務
そしてかっちゃんは商品部
変な面子が揃っていた 



ゲームを一通りし終え
腹を満たすのに
ガストへ宅配の弁当を注文


狭いワンルームに
男が5人で肩をぶつけながら
飯を食う


ゲームに負けたヤツは
ふてくされたり
酒を飲み出しいい気分の輩や
ひたすら談笑を続けるヤツ
この感覚は久しぶりだ


代官山の東京風に
すっかり染まってた時分には
とても楽しい集いだたった



学生の頃の眠らずに遊んでた
あのテンションがじりじりと
蘇ってくる


感度の高い街で
オシャレに敏感な振りを
続けていた窮屈な10年


磨かれたものと
不要と決めつけていたもの


同性で同世代の
役職や立場がなんの意味を持たない
ただゲームが強いヤツが偉くて
ゲームに負けたヤツは
ソファにも座れない


先輩後輩も関係ない
いい大人なのに
その序列のみ


それが心地いい
バカ騒ぎして
威張り、悔しがる

しばらくして
メンバーも増えると
そんな社内サークルに
名前が付いた…


saru.com

ちゃんとスローガンもある

猿のように舞い
猿のように刺す

ひたすらに
ゲームの強者に支配される
ヒエラルキー
圧倒的な社内カースト



このサークルメンバーが
その後どうなっていくのか
当時は全く想像していなかった


つづく









いかがでしたか笑?
ほぼ実話です☆




不定期連載をしていきます♪



ゆうなって


🖋追記倶楽部3号

☟☟☟

朝ちゃん(連ドラみたい笑)
※被写体からスタイリングまで
※レタッチからノベルティ企画まで
※仕事きっちりマルチプレイヤー

信頼できる怒りん坊☺︎

昨年は大反響&大ヒットでした
このビジュアルのおかげさま♡

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