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「母と桜でんぶ」

晩御飯がちらし寿司だった時があった。

ちらし寿司の上には桜でんぶが散らされていて、
いつも通り普通に食べていた桜でんぶ。

しかし、その桜でんぶと母との間にちょっとした小話を母から聞かされた。



この日母は食材を買いに八百屋さんに行っていた。
ちらし寿司に使う野菜やお得な野菜や果物を買い物カゴに入れていき、
ついでに桜でんぶがないかレジのおばちゃんに尋ねた。



母「でんぷありますか?」

店員さん:「でんぷ…でんぷって桜でんぷのことですか?」

母:「そう、桜でんぷ」

店員さん:「んーー。」


その店員さんはどうやら分からなそうな感じだった。
隣にいたベテラン風のおばちゃん店員さんが会話を聞いていたようで、

ベテラン店員さん:「桜でんぷならここ真っ直ぐ行った奥の棚のところにありますよ〜」

母:「そうですか、ありがとうございます」

さいしょに聞いた店員さんはどうやら新人さんだったようだ。
ベテランのおばちゃん店員さんのアシストのおかげで母は奥の方へと桜でんぶを探しに行った。

無事に棚に桜でんぶを発見。
しかも最後の一個だった!


ベテラン店員さん:「ありましたかー?」

大きな声でレジから母の方へ声をかける。

母も大きな声で桜でんぶを見せながら、

母:「ありましたよー!最後の一個でした。」

笑顔でそう返した。

他のお客さんたちがいる中堂々としたおばさん同士のやり取りは面白い。

無事に桜でんぶを手に入れた母はレジでお会計へ。
先ほどの店員さんのレジへ行き今一度母は、

母:「桜でんぷ最後の一個でしたよー。」


と言いながら桜でんぶを店員さんに手渡した。

「よかったですねー」なんていう会話をしながらお会計をしたのだろう。

お会計を終えて、買い物バックに野菜などを詰めていき、お買い物を終えた母は家に帰った。
家に着いてから買い物した食材を整理し始め、さっき行った八百屋さんの食材を整理している時、

母:「あれ?桜でんぷがない…?」

母は一瞬不思議になりながら思い返した。
確実に桜でんぶは購入したが…

母:「あ!八百屋さんのカゴの中に忘れたかも!」

一番最初にお会計した桜でんぷはカゴの一番下になっていて、その上から野菜たちが乗っかていたから、そのままカゴに置いてきちゃったらしい。

八百屋さんで桜でんぶの場所を店員さんに聞き、最後の桜でんぶだったのにカゴに忘れるという失態。


店員さんにも桜でんぶのおばさんという印象が残っただろう。

きっと片付けなどをしている時にカゴに桜でんぶが残されていたのを見て、「あ、さっきの桜でんぶの人だ。」と思ったことだろう。


母は再び八百屋に戻るのはまた時間がかかるから、その桜でんぶは諦めて結局近くのスーパーで買ったらしい。

忘れられた桜でんぶは今後どういう行方を辿るのだろう。

売り場で一個残っていた桜でんぶ。カゴの中にも一個取り残され、一人寂しい思いをしているのだろうか。
一匹狼系の桜でんぶなのか。

桜でんぶの人生も波乱万丈だ。


ちらし寿司を食べ終わった後に母からこの話を聞き、
私が普通に食べていたちらし寿司の桜でんぶにそんな経緯があっただなんて。

モノの見方や背景を考えるといろんなストーリーがある。
当たり前だと思っていたコトを今一度考えてみるとまた発見があるんだな。

桜でんぶからそう学びました。

P.S
正式名称は「桜でんぷ」ではなく「桜でんぶ」らしいです。
ずっと「桜でんぷ」だと思っていた。


とぅぶ

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