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船橋力のライフストーリーとトビタテに込めた思い【第6章】

こんにちは。船橋力です。

トビタテ!世界へ』一部無料公開シリーズも今回が最終回となります。

これまでの記事では、本書の「はじめに」と、第1章「世界に飛び立ったトビタテ留学生」から洪英高さんのストーリーを公開いたしました。

今回は第6章『私の「越境体験」とトビタテに込めた思い』から抜粋してご紹介します。

私、船橋力も数多く挫折、苦労を経験し、何とか乗り越えたこと、耐えたこともあれば、立ち直れないこともありました。そんな中でいくつか抜粋した「越境体験」事例の中から“幼少期から高校時代”のストーリーを抜粋しています。お楽しみください。

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私が「越境体験」を強く勧める理由

外から日本を眺めると、そこがとても閉ざされている世界であることが見えてきます。少なくとも私はそうでした。幼い頃、海外生活が長かったため、日本で育った人が気づきにくいことに、 気づきやすいし、違和感をもつことができました。

加えて、厳格な両親のもと、個性よりも公共の精神が最優先で、「個」をないがしろにされて育ったことへの強い反動もありました。そうしたこともあり、日本的な空気に流されづらいし、今なお、「大人」的なふるまいをする人から何を言われようと、

「過去は、そうだったかもしれないけれど、これからの社会では、それではまずいのでは」 

「国内で、それは通じるかもしれないけれど、世界の常識は違うのでは」

という感覚があります。「堂々と譲らない」自分がいるのです。

画一的な日本の社会のなかだけで過ごしていたら、社会に出てから今に至るまで、様々な場面で生じた、

「それって本当?常識って言うけれど、それって日本の中だけで通用する常識じゃないの?」

といった違和感からはじまる課題解決は、生まれにくかったかもしれません。

私がトビタテ生に繰り返し「コンフォートゾーンから出ること」「アウェイ体験を積むこと」「越境体験が大事だ」というメッセージを伝えているのは、そのためです。

そして、私自身も常に、「今いる快適な場所」から離れ、外から自分を俯瞰することを意識するようにしてきました。

大学ではアメリカンフットボールの副主将を務め、卒業後は総合商社に就職。その後、起業家としての実績が評価されYGLに選ばれたというと、順風満帆な人生を歩んできたように思われるかもしれません。

しかし、総合商社を離れ起業したことも、ダボス会議をはじめとした国際会議に積極的に参加したことも、それをきっかけに築いた新しい人脈のなかで刺激に身をさらしてきたことも、私の中ではすべて越境体験でした。

最後の章では、そうした私個人の越境体験について誌面を割かせていただきました。トビタテには、多くの関係者の思いとともに、プロジェクト・リーダーである私の思いも色濃く反映されています。必ずしも模範的なロールモデルとはいえない半生を自己開示することが、トビタテの理念を理解する助けになるかもしれない。何より、激動するグローバル社会のなかで、井の中の蛙でいることの危険性などを、私の実体験を通じて参考にしてもらえればうれしいと思い、本書の締めとさせていただきました。

越境体験①
──幼少期から経験した海外でのマイノリティ体験

私は、4人兄弟の末っ子として1970年に生まれました。

両親は敬虔なカトリック信者で、カトリック的な倫理に加え、生活の規律は厳しく、毎日の手伝いは当たり前。「自立しなさい」「社会の様々な側面を見なさい」「人の役に立ちなさい」が口癖でした。

父の転勤で、3歳から小学校1年生までアルゼンチンのブエノスアイレスで過ごしたときも、「自立心を養うために」と、現地の幼稚園に通わされました。言葉がまったくわからず、通園初日から3日間、泣いて家に帰った記憶があります。子どもが泣いて帰れば、親は心配するものですが、両親は意に介しませんでした。

現地では日本のことなどほぼ知られていなくて、道を歩くと、知らない人から指をさされ、目を細めるポーズで馬鹿にされました。幼いながらも差別がひどかったことを覚えています。

マイノリティ体験によって、相手が自分をどう見ているかをすぐに察知する能力につながりました。人との共通点を見出したり、キーパーソンを瞬時にかぎ分けたり、空気を読み、場を盛り上げて貢献したりなど、是非はともかく、ある種のコミュニケーション力を形成した気がします。

小学校1年生の冬に帰国し、横浜市の公立小学校に編入しました。今度は、帰国子女ということで特異な扱いを受けたこともありました。自分のアイデンティティが、日本にも外国にもないことに葛藤しました。

小学校3、4年生になるとゲームセンターに入り浸るようになり成績が落ち込みました。親からは「オール5をとらないと、大好きな野球をやめさせる」と宣告されました。必死で勉強して達成したのですが、それでも、両親はほめてくれませんでした。というより、人生を通じて、親からほめられた記憶がないのです。船橋家では「ほめて伸ばす」が通用しません。子どもに求め る基準値が高かったのでしょうが、がんばっても、認めてもらえないのは、つらいものでした。

その反動からか、外では自己顕示欲を爆発させていました。小学校では学級委員、野球部の主将、中学校では副主将、生徒会長に選ばれ、クラスの盛り上げ役を担っていました。結果的に、自立心は身に付いたのですが、内面からくる自立心ではなかったと思います。

高校に進学して1カ月。今度は父親のブラジル転勤が決まりました。親からは、 

「一人で日本に残るか、ブラジルに同行するか自分で決めるように」  

と言われました。自分で決断することの大切さを教えたかったのでしょう。ただし、

 「お前一人、日本に残っても仕送りはしないよ」

 と、付け加えてきましたから、結論は決まっていたようなもの。幼少期にアルゼンチンで過ごした私は「これも国際的な場で生きていく宿命」と直感し、ブラジル行きを決めました。

現地では、アメリカ系のインターナショナルスクールに入学しました。通い始めて1カ月は、 英語による授業や学校生活についていけず、精神的に追いつめられました。ノイローゼ状態になり、さすがの両親も初めて少し優しく接してくれました。

窮地から自分を救ってくれたのは野球でした。最初のシーズンで打率7割2分という成績を残 し、周囲から認められる存在になったのです。準備体操が日本語で行われるようになるなどの変化を体験し、状況が一転しました。多様な人々が集う世界でも、一芸に秀でていれば、尊重され ることを肌で感じた瞬間でした。このことは、トビタテの選考基準として「独自性」を掲げてい る要因にもなっています。

高校3年生のときには生徒会長になりました。このとき、日本人が得意とする能力で、最も役 に立ったのが調和・調整力です。その学校にはアメリカ系とブラジル系の生徒の2大派閥があったのですが、私はその間に入って、両者の相互理解を求められたのだと思います。調和・調整というのは地味な能力ですが、その効果の大きさに気付かされました。

毎日の宿題、試験についていくのに必死で勉強は大変でしたが、ブラジルの学校の自由な雰囲気は私には合っていました。日本では、自分を押し殺して周りに合わせる同調圧力的な雰囲気があります。外国にもないわけではありませんが、白黒がはっきりしていて、もやもやしていません。個性やそれぞれの価値観を重んじ、閉塞感がないのです。

そうして3年が過ぎました。学校には日本人も多くいたのですが、残念ながら学校になじめない生徒もいました。私が学校生活を続けられたのは、他の多くの生徒がそうだったように親に無理やり連れてこられたのではなく、曲がりなりにも「自分で決めた」ことが大きかったと思っています。

今、トビタテ生の多くが留学先で成果をあげているのも、お仕着せではなく、自ら留学計画を作成する=「自分で考えて決める」という行為が大きいと考えています。

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上記の私の”幼少期から高校時代”のストーリーは、いかがでしたでしょうか?

書籍では他に以下のようなタイトルで私の6つの「越境体験」を紹介しています。

心の豊かさと経済的な豊かさ
開発途上国支援で痛感した自分の力不足
第三の居場所としての「異業種交流会」
総合商社の道から起業家へ転身
日本のリーダーから世界のリーダーへ
拠点を海外へ移し、ゼロからの再挑戦

トビタテには、留学を考えている若者のためだけではなく、これからのグローバル社会を生きていく人すべてにとって大切なヒントが盛り込まれています。そのため、書籍の編集チームとは「立ち上げストーリーや理念、 内容を紹介するだけではもったいない。もっと、普遍的な、これからの社会を生きていく若者に対する思いも語るべきだ。そのためには、そのベースとなった、船橋個人のことに触れることも意味があるのでは」という流れになり、今回私自身の「越境体験」を公開させていただきました。皆さんにも何らかの気づきやヒントが生まれるよう意識しましたので、ご覧になりたい方はぜひ本書を手に取ってみてください。

本書の印税は「トビタテ!留学JAPAN」に寄附させていただきます。

最後になりますが、『トビタテ!世界へ』を全国約15,000校の全ての中学と高校に届けるプロジェクトを立ち上げました。(プロジェクトの詳細と想いはこちら

いよいよ来週1月22日(水)より朝日新聞系列のA-portにてクラウドファンディングがスタートします。この”ちょっと無茶な”挑戦への応援よろしくお願いいたします!

※2020/01/22 追記※
ついにクラウドファンディングがスタートしました!
以下のページより、ぜひご支援のほどよろしくお願いいたします。

以下のFacebookグループにて、プロジェクトの最新情報を確認いただけます。ぜひご参加いただけると嬉しいです

『トビタテ!世界へ』応援コミュニティ
https://www.facebook.com/groups/822562108141997

『トビタテ!世界へ』の一部無料公開、いかがでしたでしょうか?一部無料公開記事は、以下のマガジンにすべてまとまっています。まだ本書を手に取っていただいていない方や、海外在住で本書を購入することができない方などにも、ぜひ以下のマガジンのURLを送ってあげてください。

以上1月11日(土)から3回にわたり、書籍の一部無料公開をさせていただきました。これまで読んでいただきました方々全員に感謝申し上げます。

今後もこちらのnoteでは、いただいた書評やプロジェクトの最新情報をお伝えしていきます。引き続きよろしくお願いいたします。

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