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僕たちが青柳晃洋をエースと呼ぶ理由【11/5 対バファローズ戦○ 日本一】

7戦目までもつれた日本シリーズの先発に青柳晃洋が抜擢されると決まったとき、「やっぱりこのチームは超変革と共にある運命なのだな」と思った。

当時の金本知憲監督がタイガースを再建するために掲げたスローガンが「超変革」。金本監督が就任して初めて関与したドラフトが2015年だった。この年ドラフト5位で指名されたのが青柳である。ちなみに今日バッテリーを組んだ坂本誠志郎もこの年のドラフト2位で指名された。

制球に課題はあれど、強い球を投げられる青柳に金本監督は可能性を見いだした。荒削りながらも先発の機会を与えられた。
そして超変革の意思を継いだ矢野燿大監督のもとで、青柳の才能は開花した。力強い投球はそのままに、大荒れしない制球力を身につけ、ついに2年連続投手三冠を獲得するまでになった。フィールディングに苦手意識があったものの、ワンバウンドで送球する技術を得て矢野タイガースのエースとして君臨した。

そんな青柳が同期の坂本とバッテリーを組んで先発する。今年1年の総決算になる試合になるのは当然として、これまでタイガースが着々と取り組んできた超変革の真価が試される試合にもなると思った。



京セラドーム大阪のまっさらなマウンドに、背番号17の青柳晃洋が上がる。全部終わったから言えるかもしれないけれど、先頭の中川圭太のバットを折って内野ゴロに打ち取ったとき、いつもの良さが出せている気がした。強いボールでゴロアウトを重ねていく青柳。左右の変化球を巧みに操って打者を惑わす青柳。初回を0点で終えて、青柳は少し笑顔を見せた。

3回、青柳がピンチを迎えた。宗佑磨に際どいボールを見極められ、2死1,2塁。打者は紅林弘太郎。外2球に投げた後、坂本がインコース高めにミットを構える。強い球が要求通りのところに行った。紅林の打球は詰まって、ファースト・大山悠輔の前に転がった。

S.ノイジーの劇的な3ランホームランで援護してもらった後も、青柳は崩れなかった。点が入ったことで、青柳の投球はより落ち着きを取り戻した。

5回裏に走者を2人溜めたところで、青柳は交代を告げられた。勝利投手まであと1アウトのところでの交代しだけど、充実した表情でマウンドを降りていった。勝ち投手になるにはアウト1つ足りなかったけれど、青柳の顔は晴れやかだった。自分の仕事をやりきって誇らしげな顔。その顔がずっと見たかった。
そしてマウンドを降りてから間髪入れずにベンチの最前列に陣取り、代わった島本浩也や守備陣に声援を送る。約7ヶ月前の開幕戦、同じく京セラドームのベンチで降板後に声を出し続けた青柳の姿を見て、僕はこの人をエースと呼びたくなった。

なぜ青柳晃洋をエースと呼ぶのか。勝ったら日本一が決まる大一番で好投したから。タイガースの歴史に残る試合で青柳が意地を見せたから。これ以上の理由はない。
もちろん今シーズンの先発ローテーションの柱は村上頌樹や伊藤将司だったことに異論はない。でも優勝するには、日本一になるには絶対に負けられないここぞという試合での結果も同じくらい大事だ。

超変革の名の下にタイガースに入団した青柳が、想像しきれないくらい重圧のかかる試合で相手の先発より先に点を取られなかった。負けなかったのだ。
青柳本人にとっては納得できないシーズンだったのかもしれない。けれども、僕はこの日の青柳にローテーション投手としての意地を見た。去年まで他球団のエースと投げ合ってきた投手としてのプライドを見た。入団時は課題が山積みだった青柳が、この大一番で自分を保ちながら投げられる投手になったのだ。

ナイスピッチング。最高にかっこよかった。
胸を張って言える。超変革はタイガースを変えた。


そして、これも言わなきゃですね。
日本一だ!!


「がんばれ。周りの期待やプレッシャーは気にせず、自分のことだけ」
決戦の前夜、青柳のもとに届いた一通のLINE。

エールの送り主は……同じ年のドラフト1位・髙山俊。

「1番:髙山俊、2番:横田慎太郎」。
最後の最後に、2人が力を貸してくれたのかな。


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