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ショート・ストーリーズ|短編集|410 characters stories

本作品は #ショートショートnote杯 で投稿した10作品を編纂し、1つの小説作品としてまとめたものです。

おや、まだ寝てなかったのかい?

まぁ今日はいろんな事があったしね。感情が高ぶっていつもの時間には眠くならないのかもしれないね。

ん、そんな本をどこから探してきたんだい?

え、眠れないから読んで欲しいって?

やれやれ、今日はめずらしく甘えん坊さんだね……構わないよ。君が読んで面白い話かどうかは分からないけど、眠りにつくにはちょうどよいかもしれないね。

さぁ、始めるよ。

そう、これはすごい特技を持っていながらも、あくまでピアノの裏方に徹していた男の話しさ。

え、自分だったら自慢しちゃうって?

ふふ、そうかもしれないね。

でも、人に真似できないようなすごい特技を持っていながら、自信が持てずに人前で披露できないって人はたくさんいるんだよ。自分を信じるってのは案外に難しいことなんだ。

さぁ、次の話に行こうか。


そう、美味しいギョウザの欠点はニンニク臭いことだ……これは冗談だけどね。

え、美味しいからいいじゃないかって?

ふふ、そうだね。

でも覚えておいて欲しいのは、多くの物事には複数の側面があるということなんだ。いい側面ばかりに注目していると痛い目にあってしまうかもしれないからね。

さぁ、次の話だ。


そう、これは冷蔵庫をスポーツカーに改造しちまった変な男の話さ。

え、スポーツカーに冷蔵庫を載せればいいじゃないかって?

そうだね、まったくその通りだよ。

でも、はたから見るとアタリマエ・・・・・のことでも、案外その人自身は気づかないってケースは多いんだよ。だから、思い込みというものには注意しないといけないのさ。

さぁ、4つめの話に行こう。


そう、世の中はキレイゴト・・・・・だけでは回っていない……これはそんな話さ。

え、なんでみんな仲良く暮らせないのかって?

そうだね。なんでだろうね。

まぁ、人類の永遠の課題というやつさ。君も大人になったら考えてみるといい。

さぁ、次の話だ。


言葉には気をつけなければならない……これはそういう話さ。

え、『アナログバイリンガル』って言葉はカッコいいと思うって?

ふふ、そうかもしれないね。

でも、一つ覚えておいて欲しいのは、人によって言葉の受け取り方は違うってことなんだ。自分が良かれと思って放った言葉が、相手に悪く伝わってしまうこともある……難しいものだろう?

それにしても、まだ眠くならないみたいだね。もう半分を終えたというのに。

まぁいいさ、続けよう。


そう、これはラブストーリーだ。たぶんね。

え、なんで結婚したのに昔のことを内緒にしてるのかって?

そうだね、なんでだろうね。

人間というのは何かにこだわってしまうことが多いんだ。

この女性はなぜか『低カロリー』にこだわっていた。この物語ではハッピーエンドになったけれど、何かにこだわることが必ずしも良い結果をもたらすとは限らない……だから時には手放すことも必要なんだ。

さぁ、次の話に行こう。


そう、これは名探偵が真相をあばくのを拒否した話だ。

え、それじゃ名探偵の資格はないって?

『資格』なんて言葉をいつ覚えたのか知らないけど、そうだね。名探偵としては失格なのかもしれない。

でも、人は生きていく中で様々な葛藤に巡り合うことになる。そのときに自分の役目と気持ちのどちらを優先するかは自分の選択しだいなんだよ……そう、選択しだいなんだ。


そう、これはストレートに生きていたはずが、いつの間にかロックになってしまった話だ。

え、自分を曲げるなんてストレートじゃないって?

ふふ、そのとおりだね。

でもね、人ってやつは時に自分が思っていないような行動をとってしまうことがあるんだ。もちろん、それがどういう結果につながるかは分からないけどね……そう、悪いことに繋がることもあれば、良いことにつながることもある。


そう、これはジュリエットの……歪んだ愛の話さ。

え、ロミオが可愛そうだって?

そうだね、そうかもしれないね。

でも、ジュリエットも可愛そうだとは思わないかい。もし、彼女が大金持ちの家に生まれなかったら、こんな歪んだ愛をロミオに注ごうとは思わなかったはずだ。

何が人を幸福にするかなんてわからないし、何が人を不幸にするのかもわからないのさ……君にはまだ難しいかな?

さぁ、次で最後の話だよ。


そう、これは葛藤の末に……選択した女性の話さ。

え、写真は載ってないのかって?

そうだね、どうやらこの本には載ってないみたいだ。

さぁ、もういい加減に寝る時間だ。

電気を消すよ、おやすみ。


■■■


「まさかこの本を見つけてくるとはね……やれやれ、その冒険心は誰に似たんだろうね」

私は本に挟まっていた写真を手に取り夜空に掲げ、故郷の青い星で生きているであろう人物を思い浮かべながら静かに微笑んだ。

ー了ー

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