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医療版人的資本経営の考え方

こんにちは!株式会社Tobe-Ruの戸澤です。

先日、クローズドな会で医療機関の先生方を集めた少人数のオンラインシェア会を開催しました。

参加対象条件は1億円以上で、歯科医院の1億円規模は全体の8%前後しか存在していませんので、業界でいうとトップ層にあたります。

そんな方々に集まっていただいても組織課題やマネジメント課題は山積している状態で、トップの考え方や戦略の方向性によって、組織状態は全く違うことが生々しく分かり、大変勉強になりました!

そして今回のテーマは「医療版人的資本経営」をお題にまとめていきたいと思います。

最近「人的資本経営」という言葉はよく耳にすることと思います。

ただ本質的に理解されている方は少ないように思います。

「人が大事ってことでしょう?」

それはそれで当然正解なのですが、実際に掘り下げて聞いてみると「人(職員)=経費」という認識からは抜け切れておらず、人的資本経営を実践できている医療機関様はほぼ存在していないと思います。

▼人づくりは経費?投資?

当然、人件費は会計処理上は経費ですし、研修も福利厚生も全て経費となります。人的資本経営とは、会計処理上の話ではなく、戦略的に”人づくり”をどのように捉えているのか、が重要なのです。

分かりやすく「有給消化率」を1つの例に挙げましょう。

A先生の考え方:
「スタッフから有給を取りたいと懇願されたから仕方がないから有給消化率を100%にした。」

B先生の考え方:
「働き方改革推進が叫ばれているから時代の波に乗って有給消化率を100%にした。」

C先生の考え方:
「働きがいを求める前に働きやすい環境を整える必要があるし、採用難の時代には受け皿を広げていく必要がある。組織戦略的に有給消化率を100%にする方が医院にとっても有益だ。」

3医院それぞれの先生の考え方があったとすると、皆さんはどれに当てはまりますでしょうか?

答えは分かりますね。

人的経費経営をされているトップの考え方はA先生とB先生。
人的資本経営をされているトップの考え方はC先生となります。

結果だけみると「有給消化率100%の医療機関」として一緒でも、根本的な目的が全く違います。

こういう1つ1つの決断目的の積み重ねが大きく、持続的組織成長を遂げることができるかどうかの鍵になってきます。

▼組織戦略、人財戦略はスタッフのモチベーションを上げるものではない!

7月だけで30回くらい「組織づくり、マネジメント≠モチベーション」に関してセミナーや商談、ユーザーフォローアップ、シェア会…等で言及した気がします笑

「方針発表会はしたほうが良いでしょうか」
「個人面談はやっぱりスタッフのためにもやるべきでしょうか」
「Hirame-ku(当社サービス)をやりたいかスタッフに聞いてみますね」
「評価制度を入れるとスタッフのモチベーションは上がりますかね」
「診療時間を時短しようと思うのですがどうですか」

このようなことを良く聞かれます。

この手の質問をされたときに必ず聞く質問が
「何ののためにそうするのですか」
ということです。

そこで出た回答次第でYes/Noの私自身の判断は変わります。

もうお分かりだと思いますが

「方針発表会をしたらみんな方針を理解し、ベクトルが揃うと思うので」
「評価制度を入れたらやる気のあるスタッフがモチベーション上がると思うので」
「時短したらみんな喜ぶと思うので」
このような回答が返ってきたら全部「止めた方がよいと思います」となり

「●●組織を創るには評価制度は不可欠なので」
「●●ビジョンを実現するにはHirame-kuの導入が必要なので」
「労働参加率を高めるためには時短が必須なので」
といった戦略的な思考から施策を立てられていたら
全部「やりましょう!」となります。

モチベーションを気にしながら施策を進めていこうとすると、必ずどこかで「反応が鈍い」「モチベーションが上がらない」「やる気につながっていない」とどこかのタイミングで落胆したりします。

賞与を一時的に上げても一時的なテンションが上がるだけで、1年後には当たり前化するのはあるあるですが、この典型的な例です。

評価制度を半数以上のスタッフが求めることは稀ですし、仮に求めていたとしてもそのスタッフさん達全員が「完璧!」と思える制度を作ることはほぼ不可能です。
方針発表会に関しても「理念を知りたい」「ベクトルを合わせたい!」と思っている人よりも「通常通り働けたら良い」という人の方が大半のはずです。

変化をしたい経営者と現状維持を好む現場スタッフとでは、根本から大きな乖離があるのです。

組織の仕組み・環境づくりは、院長先生がMission・ビジョン実現に向けた組織戦略・人財戦略に沿って推進していきましょう。

労働者不足、コロナ禍、働き方改革…の状況下で持続的成長をするためには「変化」は不可欠です。

組織づくりは、短期的効果を期待するのではなく、中長期的視点で現場スタッフさんを1人1人着実に院長先生方が目指されている船に乗せていく気持ちで頑張っていきましょう。

先生方にスタッフさんのモチベーションを高めていくことはできません。(モチベーションは本人の問題ですので)
しいて言えば先生方はモチベーションが上がる環境創りはできます。

繰り返しにはなりますが、院長先生の方針に沿って組織づくりや組織施策は進めていきましょう。

▼人的資本経営の戦略の組み立て方

人的資本経営の戦略の組み立て方は、Mission・Value等の目指してく方向性を示した上で、3つの戦略を立てていきます。

①事業(診療戦略)
□医業収入の3ヵ年計画
□どの診療領域を広げていきたいのか
□診療メニューの拡大路線・維持路線・減少路線(ポートフォリオ)
□拡大路線のマーケティング方法をどうするのか
□医院のブランディングをどうするのか
このあたりをまとめていきます。

②組織戦略
□組織ビジョン・スローガン
□コアバリュー・行動指針(全員で守るべき仕事観)
□組織力向上施策
□働き方改革推進策
このあたりをまとめていきます。

③人財戦略
□採用計画
□育成施策・スキルアップ施策
□評価制度の導入・見直し
□賃金・等級制度の見直し
□キャリア支援体制
このあたりをまとめていきます。

このように”ヒト”を基盤に置きながら
ヒト×組織×事業(診療)=Mission・Valueの実現
の方程式を組み立てていきましょう。

戦略とは、今できているかどうかは関係ありません。
「●●なりたい!」から逆算思考で考えていきます。

・人がいたら●●をやりたい
・こういう機材があったら●●をやりたい
という内部資源からの延長線上で考えてしまうと、実現スピードが劣ったり、不足事項があることで先に進めないことが多いので、逆算思考力を身に付けていってください。

▼採用も戦略的に!

採用活動も戦略の一環で計画的に進めていくことをお勧めします。
労働者不足なので理想通りにはいかないことも多いかとは思いますが、上記でお伝えした事業(診療)戦略と組織計画と採用計画は合わせて考えていくべきでしょう。
ただ単純に人不足だからといって何となく良い人を取ってしまうと、目指している事業戦略と矛盾が生じることがあります。

例えば
□歯科医師と歯科衛生士と受付・アシスタントのバランス
□新卒を採るべきか/中途(キャリア)を採るべきか/キャリアの中でも経験豊富な人を採るべきか
□即戦力採用でも何に長けている人財が今は欲しいのか
□資質的にアグレッシブな人が欲しいのか/保守かつ的確な人が欲しいのか
□正社員雇用が良いのか/非常勤雇用が良いのか

などこの3年間で作りたい診療体制や組織ビジョンによって大きく採用計画や採りたい人材スペックは変わっていきますし、年々採用コンセプトは変わると思います。

戦略に合わせた採用計画を心がけましょう!

▼本記事のまとめ~”同根異才”のバランスを大切に~

本日は医療機関にとっての人的資本経営についてまとめていきました。
マネジメントや組織、そして”ヒト”1人1人、、、マーケティングや財務状況と違って成果が見えづらかったり、定量的データが一般的にはないので、おざなりになりがちです。

しかし、この見えづらい人財や組織に、大きな価値があり、他院にはまねできない差別化を図ることができるのです。

人的資本経営を実践するには”同根異才”のバランスがとても重要です。

同根(同じ根を持つ)…理念、Mission、Valueを理解する、実践すること
異才(個々の才能を活かす)…個々のやりたいこと、キャリアを活かすこと

このバランスは同根:異才=3:7くらいが私的にはベストです。

そして順番は当然、同根→異才の順番です。

言い換えると「自律」と「自由」という言葉に置き換えられます。

どれだけ自由な発想や才能があっても自律性や規律性が低ければ、その人はいずれ病院にとっては悪い影響を及ぼす人になります(前回の言葉でいう「人罪」ですね)

自律があった上での自由、同根があった上での異才

この順番を間違えず、正しく組織経営に挑まれてください。

そして”ヒト”を資本、財産という思考を持ち、戦略設計を立ててみてください。

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