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デンマークの介護の取り組み。

先日、WEB講習でデンマークの取り組みを現地在住の日本人の方から聞けるという内容がありましたので受講しました。
面白そうな内容だったので、受講料はかかりますが何か所かの介護事業所に案内しましたが、受講を希望する職員はゼロでした。

いやはや、こういう外部の取り組みや、特に北欧の高福祉の国の取り組みは良い学びになると思ったのですが、お金を払ってまで聞きたくない、という事でした。

もともと、日本のグループホームやユニットケアの取り組みはスウェーデンから輸入されたモノですので、実践で先を進んでいる北欧諸国から学べる事はまだまだあると思っています。

そもそも人権意識が海外と日本では段違いに違うのと、政府の施策も違いますので、なかなか日本では難しい面もありますが、そうは言ってもケアを提供する事については、基本的には環境が違えども理念は同じなので、理念を追求していけば、いずれは北欧諸国の高福祉のケアサービスに並んでいくような感じになると思っているので、そういう事は知っておいて損はないと思っています。

特に僕が認知症ケアに興味を持つ切っ掛けになったのが岡山県のきのこエスポアール病院での佐々木医院長の取り組みです。
こちらは明日の記事で詳細に紹介したいと思いますが、佐々木医院長が認知症ケアの実践の中で悩みに悩んでいる中でスウェーデンでグループホームに出会った当時の衝撃は計り知れないと思います。

まだまだ実践面で、そういったケアの先進国の実践に制度面でも環境面でも教育面でも及ばない状況(ユニットケアも、単に基準を守ればそれがユニットケアなのではなく、ユニットケアという仕組みを通して何を提供するのかが問われるのですが、そういうケアが提供できてない現実がまだあるのも事実ですので)がある中で、現地の声を直接聞ける機会はほとんど無いと思いましたので、時間を作って受講しました。

さて、講義の内容でしたが、デンマークでの認知症ケアの実際という事で、『福祉の国は教育大国』『つらい介護からやさしい介護へ』『北欧に学ぶやさしい介護』といった著書を書かれている小島ブンゴード孝子先生が、実際に見て感じたお話でした。

まずはデンマークの国の紹介でしたが、僕はデンマークという国名は知ってましたが、どこにあってどんな国かまでは知らなくて、北欧だからあの辺の国なんだろうなぁ、くらいの認識でした。

講義での紹介は必要最低限でしたので、Wikipediaから紹介します。

日本の国旗もカッコ良いですけど、デンマークの国旗もすごくいいですね。
赤と白のシンプルなデザインは、日本に通じるものがありますね。

ノルディックモデルの高福祉高負担国家であり、OECD各国中で最も個人所得税の高い国である[1]。市民の生活満足度は世界最高クラスで[2]、2014年の国連世界幸福度報告では幸福度第1位であった。様々な角度からのウェルビーイングは最高レベルであり[3]、世界で最も社会的流動性(英語版)が高く[4] 、世界で最も腐敗が少なく、男女の賃金差はOECD中最小であった[3]。 社会はグローバル化とデジタル化が進んでおり、それは家庭と企業活動において多大な利益をもたらしている[5]。デンマークは欧州において最もデジタル化された社会である[5]。

Wikipedia - デンマーク -

ノルディックモデルについては後で説明分を引用するとして、最も所得税が高いのに生活満足度が世界最高クラス、という摩訶不思議な国のようです。

講義にも出てきましたが、非常にデジタル化が進んでいて、これは海外なら当たり前なのかな、と思って聞いていましたが、こうして調べてみるとデンマークは欧州で最先端のデジタル社会のようです。

北欧モデル(ノルディックモデル)とも呼ばれる。スウェーデン、ノルウェー、デンマークなどがある[21]。政府による所得比例(業績評価モデル)と所得移転(制度的モデル)の組み合わせが特徴。社会保障給付は政府による普遍主義的なもので、労働政策と併せて労働者の保護が最大限である。経済政策では政労使の協調(ネオ・コーポラティズム)に基づいて実施され、場合によっては同一労働同一賃金により弱い企業の淘汰を進める(レーン=メイドナー・モデル)。それと同時に職業訓練や職業紹介などの積極的労働市場政策を通じて労働力の需給ギャップの解消に努め、社会保障支出をコントロールする。従って雇用の流動性は高い。

これらのことから企業の競争力が高くなり、グローバリズムへの適応力が高いと言われる。しかし、その過程において競争力を持つ大企業のみが生き残りやすいために、しばしば税収などで特定企業に依存することになり、業績悪化がダイレクトに国家予算に影響を及ぼすことがある。

Wikipedia - 福祉国家論 -

よくわからない横文字が増えましたが、労働者を守る政策で、経済政策では結構企業には厳しい感じですね。ただ、失業した際の職業訓練などは日本のような制度ではなく、本当にちゃんと復職しないと収入がなくなるみたいな本気の職業訓練みたいなので、それで雇用の流動性が高いという事のようです。

たとえば、日本のように介護福祉や医療の現場の人材が不足しているのであれば、そういう業界に雇用が流れるような職業訓練をちゃんとやって、現場で働けるレベルで送り出す、みたいな感じでしょうか。

このあたりは、今度時間のある時に調べてみようと思います。

講義では、デンマークの投票率は84%、女性議員は40%、議員の平均年齢は45歳、女性の40代の首相で、大臣の平均年齢は43歳、との事でした。

大臣が議員の平均年齢より若いとかすごいですよね。
そもそも若いし、女性議員が40%も非常に高い割合ですよね。
というか、それを高いと言っている時点でもう考え方が古臭いのかもしれませんね。男女平等であれば、50%であって当たり前なのかもしれません。

昨日は投票に行こうという記事を書いてそこでも紹介しましたが、投票率は80%を超えています。
この高い投票率が、自分たちの福祉を守る意識と何等かの関係はあるように思います。

また、デンマークと日本の人口ピラミッドの比較資料もありました。

日本では、だんだんと人口が減少している図(前年比でも)なんですけど、デンマークでは本当に少しだけ人口が減少していますが前年比では増加していますので、ほとんど総人口は変わらないような図でした。

日本の高齢化率は29%、デンマークは20%。
デンマークも意外と高齢化率高いなぁ、とは思いました。

日本では、第二次ベビーブームまでしかありませんでしたが、デンマークでは第三次ベビーブームがあったのも特徴的でした。

デンマークでは、共働きが基本の様です。
デンマークの国民年金は以下のような内容との事です。
独居の場合 最高で約24万円/月。
夫婦の場合 最高で約18万円/月(一人当たり)
細かい制度まではわかりませんし、最高額なので、実際はどうかもしれませんが、月にもらう額は、なんという事でしょう、多くの日本の介護職よりも多額な年金が国民年金の制度で保証されている状態です。

ちなみに、デンマークの厚生年金に相当する年金は、個人負担が1/2で、企業負担が2/3との事です。これもだいぶ違いますよね。

ちなみに、在宅ケアの受給率ですが、約14%との事。
施設ケアは、約3%で、ほとんど施設入所していないようです。
65歳以上のシニアの割合なので、自立支援がうまくいっていて、本当に必要な人しか入所していないのではないかと思いました。

デンマークでは、シニアは社会の重荷ではない、という基本的なスローガンがあるそうです。

デンマークでのケアの3原則
① 自己決定(いつまでも自分らしく生きる)
② 継続性(いままでのライフスタイルで)
③ 残存機能の活用(自分でできることは自分で行う)
良いケアとされる内容 = 利用者の自助を支援する

介護者と利用者が双方でこの原則を守っているのも特徴だ、との事でした。

おそらく、人権意識が高い国民性なので、権利としてケアは受けるけど、ここからは自分で出来る、とはっきり示したりもできるのではないかと思いますし、介護者にたいしての遠慮も少ないのではないかと思います。

どちらもプロ(介護のプロと自分自身のプロ)として接しているのではないかな、と思いました。

また、印象的だったのが、双方のQOLの向上がよいケアなんだ、という事です。
これは、本当に本当にそうですよね。
日本では、双方が犠牲になっている場面がありますので、やはりどっちもの人生をよりよくするようなケアが目標ですよね。
理想ではなく、そこは目標になりえるな、と思いました。
デンマークでやれて日本でできないわけがないじゃないですか。

また、デンマークでは1990年代に、ホームヘルパーという資格は廃止になり、日本でいう介護福祉士のような資格の社会保健ヘルパーと、もう一段階上で一部の医療行為ができる社会保健アシスタント、という資格が出来たとの事です。
2000年以降は、ICTの活用で、日本のマイナンバーカードにすべての情報が集約され、ケアの実践の場で紙を使う事はないそうです。
デジタル化により、データのやりとりやメールでのやりとりが当たり前になっているそうです。

こういう所ってすぐにでも真似できるのに、なぜ日本では導入しないのでしょう。2000年以降という事は、こういう先進事例からもう20年も遅れているという事です・・・。いやまてまて、2000年以降という事は、介護保険が始まった頃には、デンマークではこういう事は当たり前になっていたか、制度化される状態だったはずです。
おそらく海外視察とか行ってますよね、厚労省の役人さんも。
見てないのかなぁ、こういう所。
なんで真似しないんだろう。介護保険つくるために海外見に行くなら北欧は絶対行ってるはずなんだけどなぁ・・・。

デンマークの認知症ケアにおいて、非常に大きな役割を担っているのが、認知症コーディネーターという認知症ケアに特化した専門職との事でした。
各市に数人配置されているようで、困難事例の対応や援助については、この認知症コーディネーターが相談に乗ったり対応したりしてくれるそうです。
本当の意味での公平な立場で、その人に必要なケアの段取りをつけてサービスにつなげてくれるとの事で、結構な権限があるみたいでしたし、そうおうのスキルが求められるようでした。本来のソーシャルワークが実践できる立場だという事です。

デンマークでの入所時の費用は、家賃や食費などの生活費については自己負担で、ケアに関わる費用は無料との事。
また、今では入所施設では特に認知症ケアに特化した考え方はなく、そういうのも含めて当たり前のケアとして提供しているとの事でした。(8割の入所者が認知症との事)

ユニットケアでは、居室や空間は利用者の生活の場であると同時に、職員の職場でもあるというのが当たり前の考え方で、生活の場にふさわしくないという理由で、職員が働きやすい環境を制限するような事はない、との事でした。ケアに問題がないように柔軟に工夫するという事や、天井にはリフトの稼働レールもありましたし、先進的な事業所では、床にセンサーが内臓されていて、家族や本人の同意があれば、それでの見守り対応もしているとの事。

デンマークでは、在宅ケアで高度なケアの実践を実現しているという事でした。これは日本の今後の地域包括ケアの方向性もこうなるべきだと思っていたので、やはり先進的に取り組んでいきつく先はそこかなぁ、と思いました。
特に日本では、入所できるキャパシティにも限界が来ますし、これから高齢者数のピークも迎えますが、その後は減少に転じます。
施設を作ったとしても、介護の担い手もいないので、このタイミングで増床などはよほど別の資源に転換できる工夫がないと施設運営は難しいと思いますので、在宅でどれだけ終末期ケアまで提供できるか、が大きな課題だと思っています。
当然、デンマークでもターミナルや身体的に困難なケースでも在宅でケアの実践ができているそうです。

入所するケースは、上記でも記しましたが8割が認知症という事で、やはり地域ではささえきれない認知症の方が入所するケースが増えているようで、入所施設では、より専門的な認知症ケアを習得したスタッフや、高度なケアの技術がスタッフに求められるようです。

聞いていて、そうだよなぁ、と思ったのが、入所施設では食事の提供時間などは決められていないという事。
その人の生活史に合わせて、それぞれがいままで食べていた時間に食事を提供するのが当たり前になっているとの事です。
お昼にビールを飲む習慣がある人には、同じようにお昼にビールが提供されるそうです。
当たり前といっては当たり前の事なんですけど、日本ではまだまだハードルが高そうですね。
生活の場、と言っておきながら本人が行ってきた生活習慣は施設のスケジュールに合わせるといった矛盾は、僕自身も実際に見てきましたし、おかしいと言っても受け入れられなかったので、こういう考え方の職員が増えない限りは難しいでしょうね。
ちなみに、自分史ノートというのを必ず作成して入所するそうです。

また、これはいいな、と思ったのが、
『1日に1つでも、その人にとってのサクセスストーリーが作れるようにケアをしましょう。』
というのが、ケアスタッフの目標になっているそうです。
これは職員にさっそく伝えていきたいと思いました。

チームづくりでは、
ケアスタッフをケアするのはリーダーの大切な役割、という事でした。
これもそうですよね。リーダー育成の視点で忘れないようにしたいな、と思いました。
中にはスタッフのケアなんて発想もないリーダーも実際に存在しますので。

夜勤者がパジャマ姿で仕事をしている施設もあるそうで、結構効果があるようで夜間に眠らない利用者さんも、寝るようになってくれたとか。
まだ実証実験中みたいなので、そのうち論文が出るかもです。

そういうアイデアを実践できるのもいいですよね。
柔軟ですし、今まで通りが正解と思っている日本の現状では、こんな提案言ったらダメだろうな、なんて職員に思わせていますよね。きっと。

ハイテクの紹介では、デンマークとしては、あまりハイテク技術については関心がないようです。
特に認知症ケアについては、スタッフのケア以外の無駄な業務はデジタル化等で効率化しますが、ケアには人が必要、という考え方なので、そういう部分までハイテクでなんとかしようという発想はない、との事でした。
いや、本当にそうですよね。当然です。

なぜ日本では、海外を見本にしないのか。
なぜICTを導入したら夜勤者が減らせるとかの発想になるのか、ますますわからなくなってきました。

見守りでは、床のセンサーなど紹介されていました。夜間の間だけONにして、同意を得られた人だけ施設内をどう動いているのかわかるそうです。

認知症の方が落ち着くリラクゼーションソファがあるとか、セラピーロボット『パロ』が人気(日本製みたいです)とか、シニア向けパソコンが人気があるとか、そういう感じでした。

デジタル化が進んでいるといっても、実際のケアの現場ではなく、書類関係の業務や記録などでそういう技術が活躍しているようです。
どう考えてもそうですよね、僕もいろいろ考えてみましたが、ケアの中で生かせるハイテク技術って、ほんとうに思いつかないですし、思いついてもディズニーの”ベイマックス”くらいです。

ペッパー君もけっこう認知症の方や高齢者と話せるみたいですけど、僕もデイサービスで活用したかったのでデモをやりたかったんですけど、これも上層部に却下されましたからねぇ、面白そうだったのに。

そんな感じの講義で、あっという間に終わってしまいました。

男女共働きが当たり前で、高齢化率も高くなっていて、働く人口も多いので、子育てしながら働きやすい環境づくりで、どのような制度があるのかを質問したかったんですが、時間がなくて聞きそびれてしまいました。

講師の小島先生も、高福祉を受ける立場になって実感しているとおっしゃってたのが、働いているときは税負担はやはり厳しかったそうです。
ただ、高福祉を受ける立場に立つと、高い税金を払っていてよかった、と思えたそうです。

リターンが実感できる。
そういう声が実際に聞ける事も、高福祉高負担の社会にとっては必要な条件なのかもしれませんね。

僕は介護従事者で、もう十何年もケアの現場を見てきましたが、ケアを受ける利用者さんは、本当に自分の人生や生活を切り詰めてケアを受けています。
そして、僕たちも少ない給与から税金を支払って、生活を切り詰めています。

日本って、ほんとうに集めた税金を何に使っているのでしょうか。
デンマークよりも人口が多くて税収も多いはずなんです。
高福祉高負担にしろとはいいませんが、少なくとも納税者が納得できる税金の使い方をしてほしいし、庶民の生活が苦しい時にするべき施策をきちんととってほしいと思います。

庶民の生活が苦しくなった先にあるのは、歴史が繰り返すように毎回だいたい同じようなことがどの国でも起こっていますので、ほんとうにちゃんとした政治をしてもらわないと困ります。



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