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多様性を認め受け入れつつのチーム作り。

多様性を認めましょう、という事は最近特によく耳にしたり目にしたりするようになりました。
僕がこの多様性を受け入れる取り組みをした最初のステップは、利用者さんの基本情報の男女の別しかない性別の欄を変える事でした。

『これからは男性女性というくくりではなく、LGBTも理解した上で利用者さんへの対応も必要になるはず。』
と職場で伝えて性別欄に”FtM”や”MtF”や”X”を追加したりしましたが、結局僕が在任中に該当する利用者さんを受け入れる事はありませんでしたし、最近は、そもそも性別を表記する事自体に意味がないのではないか、と思っています。

以前は、女性利用者さんに対しては必ず女性が対応する対応をする事業所づくりをしていたのですが、この4年間の間に担当した事業所では、開設当初から女性の利用者さんに対しても男性介護職が対応して当たり前、人手不足なんだから仕方がない、という固定概念のある事業所ばかりで、これを打開する事ができないできたので、単純に情報だけ性別を把握したとしても、それがケアの現場で活用できないのであれば必要ないな、なんて思うようになりました。せっかくある情報や介護職が抱えている情報を集めてチームで生かそうといろんな工夫はしてきたつもりですが、そういう視点で情報を活用しようとしてくれたり意識を変えてくれた職員は本当に一握りでした。

だから情報が必要ない、という事ではないのですが、では何のために性別という情報があるの?と思ってしまいます。
そもそもそういう意識づけをするのが僕の仕事でしょ、と言われればそれまでなんですけど、変わろうとしない人に対してのこの作業は本当に精神がすり減るのでどうしても後回しになってしまいました。

今後”LGBTQIA+”というような多様性を認める社会になりつつあるとしても、その権利や本人が受ける気持ちやどんなに傷つくのか(ただでさえセクシャルマイノリティの方はこれまでにも辛い想いをされてきたはずなので)を、考えた上でそれでもなお表に出せないマイノリティの方がたぶん日本には大勢いるはずだと思うんですが、そもそもそういう意識もなく現場での仕事を昔からこうでした、という感覚で続けている間は本当にダメだなぁと思います。

ですので、おそらくそういう時代の流れに適応できない組織やチームは淘汰されていくのでしょうが、さすがにそこを任されている身としては、淘汰されないような対策と対応と工夫をしなくてはなりません。

これでまだ20代30代の若手が多くいる職場ならもうちょっと雰囲気が違っていたかもですが、僕自身が若手の分類に入るレベルで職場全体が高齢化している中で、そういう価値観(自分以外の価値観を受け入れない)の人々に今の価値観やこれからはこうなるべきだ、という価値観を理解し受け入れてもらえるかどうか・・・。
正直自信がありません。
・・・が、伝えるしかないわけで、そしてそれを伝えるには自分自身でそれ自体をかみ砕いて自分の言葉に自分の想いを乗せて発信しなければならないので、時間があれば”多様性”や”価値観”や”伝える事”や”チーム作り””リーダー育成”といったキーワードを調べて自分なりに勉強しています。

と、ここまで考えて思い出したキーワードがありました。

『敵を知り己を知らば百戦危うからず』

という孫氏の兵法でも有名な一節です。

正式には『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』でしたね。
原文はこんな感じでした。『故曰、知彼知己者、百戰不殆』

敵味方の双方の情報をしっかりと把握しておけば戦いに負ける事はない、という感じの言葉であり、戦争において情報がいかに重要であったかという事ですね。

現代でも、孫氏の兵法はビジネス書などにも紹介はされていたと思いますし、戦争とは違いますが事業を経営するという事は、ある意味勝負事ですので、こういう兵法が活用できる場面は多いと思います。

たとえば事業展開をするにしても、なんでもかんでも考えなしに出店すればいいわけではなく、彼我の情報をいかに収集して客観的に分析できるかが勝負の分かれ目になりますし、チーム作りでも同じだと思います。

この場合の勝利とは、チームで利用者さんのQOLを高めるケアを提供できるようになる事が勝利条件ですので、チーム(メンバー個々の情報や事業所内の環境など)が敵(彼)となり、リーダーである自分や会社をとりまく環境が(己)となると思います。

ですので、それぞれの情報をしっかり把握した上で取り掛かる必要があります。

己の部分はすでにほとんど把握できている事が多いので、問題は彼の部分であるチームメンバーの個々の情報です。

仕事ぶりやケアの提供方法などは現場で見ていれば見えてきますが、多様性を認める働きやすいチーム作りを考えたときに(これが心理的安全性の高い職場づくりや、今後若い世代にとって必要なチームだと思うので)、それぞれのメンバーの事を、もっと深いレベルで知る必要があると思いますし、それぞれが何をどう感じているのか、という部分まで理解しておく必要があると思います。

その多様性に、変わろうとしない価値観だって含まれるっていう事ですもんね。そこをどうするか。

たとえば多様性を認めるチームとなった場合でも、チームとして存在するためにはルールが必要です。
ルールは会社がいろいろ定めていますが、個人の多様性を認めるあまりにルールがないがしろにされるケースが容易に想像できます。

多くの介護現場で、リーダー不在・ルール不在のチームを見てきましたので、会社で定めたルールをチームが徹底できるためには、ルールを変えたり作ったりする権限があるのはリーダーにしかない、という事からチームに理解させる必要があるので、そういう前提なしに多様性を認め、個人を認めるようになっていった場合に、こういう無秩序な状況になるんではないかと思います。

ですので、各個人がルールや決まり事に対して、何をどう感じているのかをある程度把握した上で、それぞれの価値観や考え方を共感した上で、それでもルールはこうだから、というように言えるリーダーを養成していく必要があるとおもいますし、そのためには会社の理念をしっかり理解したリーダーを育てる必要があるという事に思い至ります。

そういう行程を進めていくためのファーストステップで、相手を知ることが重要ですし、育成の面から考えると、相手の良い所をしっかりと把握しておく必要があると思いますし、相手からの信頼を獲得する事も重要です。
その土台がなければ何を言っても伝わりませんから。

それだけの事をこれからのリーダーは求められているという事だと思いますし、そういう事をまるっと教えたり道筋を示していくのが僕自身の役割だなぁ、と思っています。

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