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神様は雨上がりにほほえむ

「何度言ったらわかるんだ!」
「はい、すみません! 次から気をつけます!」

これまで何度こうして謝っただろう。今回と同じミスだけで5回?6回? 
まあ何回でもいいや。とりあえず嵐が過ぎ去るのをおとなしく待とう。
それがこの3年間で身につけた唯一と言ってもいいほどのスキルだ。

内藤ともこ、25歳、独身。食品メーカーの会社に入社して3年。営業職として日々先輩たちに揉まれながら働いている。私たちの代はここ数年でもっとも優秀だと言われていた。つい最近も同期が最年少でマネージャーに昇格したとかなんとか。それに比べ私の成績は万年ビリ。

「どうしてこうなったんだろ……」
「なんか言ったか?」
「なんでもありません!」(つい、心の声が漏れてしまったみたいだ)
「ほんとに、次は気をつけろよ!」
「はい」

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「ぷは〜〜。やっぱ夏はビールだわー」
「もうおっさんじゃん」
「いいのいいの〜」

私の人生、この1杯のために生きているみたいなものだ。

毎月最終金曜日に行われる同期のあおいとのサシ飲み。以前はプレミアムフライデーだかなんだか言って昼過ぎから飲むこともあったが、いつの間にかそんなものは消えてなくなっていた。

あおいとは部署は違うが、新卒研修のときから1番の仲良しだ。彼女は目立って優秀ではなかったが、なんでも卒なくこなすタイプ。どこでもうまくやっていける人間だった。

「あんた今日も課長に怒られたんだって?」
「まあねー」
「またやらかしたの?」
「うん……」
「ほんとに懲りないね〜」
「むー、だってー」
「もう、そんな顔しないの。ほら、唐揚げ食べて」
「うん、あ〜ん」

こうして私はいつも甘やかされている。
20代半ば女2人の酒の席といえば、毎回話題は仕事か恋愛だ。と言いつつ、8割近くは私の愚痴。やれ上司がどうだの、出会いがないだの……。それでもあおいはいつもニコニコしながら話を聞いてくれる。

そんなこんなで気づけば店に入ってもう4時間。よくもまあ毎度こんなに話すことがあるもんだと自分でも感心してしまう。盛況だった店内も私たちを含めてあと3組しか残っていなかった。

「そろそろお開きにしよっか」
「そうだね。今日もいろいろ聞いてくれてありがとう、あおい」

会計を済ませて店を出る。

「うわー、最悪。雨降ってるし」
「ともこ傘持ってないの?」
「うん。ごめん、そこのコンビニで買ってくるわ。ちょっと待ってて」

・・・・・・

「お待たせー」
「あんたさー、毎回ビニール傘買ってるの?」
「まあねー。いま家に5本くらい溜まってる」
「はぁ〜。いい加減折りたたみ傘買えば?」
「だよねー。環境に悪いし、お金ももったいないよねー。なんかいいやつないかな? 軽くて丈夫でオシャレなやつ!」
「私はこれ使ってるよ。トラベルギアブランドの折りたたみ傘」
「へ〜、シンプルでいい感じだねー」
「でしょ? おまけに軽くて丈夫なの」
「ほんとだー、軽〜い。これ良さそう! 帰ったらチェックしてみるね」

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「えーっと、トラベルギア 折りたたみ傘 検索っと。えー、これめっちゃいい〜〜。ポチッ」」

数日後・・・

ピ〜ンポ〜ン♪

(おっ、やっと来たな〜)

はやる気持ちを抑えながらインターホンに向かう。

「はーい!」
「お荷物のお届けにあがりましたー」
「ありがとうございます! いま出まーす!」

「ご苦労さまです!」
「内藤さまでお間違えないですか? ここにサインお願いします」
「ふんふふ〜ん♪」
「すごく上機嫌ですね」
「あ、すみません。声に出てました? 恥ずかしい」
「いえいえ」
「すごく楽しみにしてた傘なんです」
「最近雨多いですもんね。この仕事雨だと大変なんで、早く梅雨明けてほしいです」
「そうですよね〜。あ、よかったらこれどうぞ。缶コーヒーです」
「え、いいんですか? ありがとうございます」
「どういたしまして。お仕事頑張ってください」
「ありがとうございます! それではこれで、失礼します」

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あれから約1ヶ月。
梅雨も明け、今日は恒例のあおいとの飲み会だ。

新しい折りたたみ傘を迎えてからは、仕事のモチベーションがあがり、あの日以降まだ1度も課長からお叱りを受けてない。
今日も定時で仕事を終わらせた。

「お疲れさまでしたー」

まだデスクに残る同僚たちに挨拶を済ませ、軽やかにエレベーターに乗り込む。

会社を出ると、しとしと雨が降っていた。
今までは憂鬱だった雨の日も、今ではちょっぴり楽しみになっている。
梅雨明けして以来、久々に相棒の出番だ。
慣れた手つきで傘を開くと、私の頭の上にだけ青空が広がった。

「待ち合わせまで時間あるし、ちょっと散歩しながらのんびり向かおう〜」

雨の日の散歩も悪くない。
いつもとは違う街の匂いを感じられる。
そんなことを思うようになったのもこの傘のおかげだろうか。

20分ほど歩いて待ち合わせ場所に到着。
ちょうどその頃、雨は上がっていた。
少しの名残を惜しみつつ傘を閉じたそのとき……。

見覚えのある顔が目の前に現れた。
向こうも同じことを感じたみたいだ。

「あっ……」
「……。あ〜〜! え〜っと。あっ、配達の!」
「その節はどうも」
「あ、こちらこそ」
「かわいいですね」
「えっ? えっ、私?」(えっ、なに? いきなり?)
「その傘。あのとき届けたやつ、ですよね?」 
「あ、はい」(なんだ、傘かぁ〜〜)
「あ、いや、お姉さんもかわいい……と思います」
「……っ!?」

「ともこー、お待たせー」

後ろからあおいが呼ぶ声がする。

「あっ、あおい! ごめんなさい、私行かなきゃ」
「あ、はい」

「ごめん、待った?」
「ううん、全然」
「いま誰かと話してた?」
「そ、そんなことないよ……」
(かわいいって言われてドキドキしてた、なんて言えない……)
「ふ〜ん。あっ、その傘」
「さすが目ざとい! そう!かわいいの見つけて、買っちゃった〜」
「いいじゃん」
「でしょ。じゃ、行こ! 今月のお疲れさま会」
「うん」

あおいを急かしてこの場を離れる。
去り際にちらりと振り返ると、遠くで彼がにっこり笑っていた。

「うっ……」

(この胸のトキメキは……。はっ、これってもしかして、恋……)

本文中に登場した傘は、ANREALAGEとTO&FROがコラボして開発した折りたたみ傘です。
※都合上晴天時に撮影を行なっておりますが、本製品は日傘としては使用できません。

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ANREALAGE(アンリアレイジ)とTO&FROがコラボして開発した折りたたみ傘「PIXELSKY UMBRELLA -LARGE SIZE-」。「PIXELSKY」をコンセプトに、昼間をイメージしたMIDDAY、夕方をイメージしたDUSK、夜をイメージしたMIDNIGHTの3色で展開しています。

従来のTO&FROの折りたたみ傘と同様、撥水性の高い生地を使用し、軽量・高耐久を実現。傘を開くと空模様が広がるデザインは、憂鬱な雨の日も楽しい気分を演出してくれます。

▼詳細は下記URLをご覧ください。
【ANREALAGE×TO&FRO】PIXELSKY UMBRELLA -LARGE SIZE- https://toandfro.shop/shopdetail/000000000148/ct21/page1/recommend/

▼TO&FRO:http://toandfro.jp/
▼今回紹介した商品の詳細は下記URLをご覧ください。
▼株式会社SAGOJO:https://www.sagojo.link/
▼TO&FROの認定トラベラーに関しては、こちらをご覧ください。
https://note.com/toandfro_travel/n/nc35f19624c20

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執筆:TO&FROの認定トラベラー 髙橋諒馬

プロフィール

フリーランスのライター・フォトグラファー。
防衛大学校卒業後、陸上自衛隊の幹部として勤務。自分の人生について悩む中、もっとさまざまなことに挑戦したいと思い退職を決意する。退職後はバックパッカーとピースボートで世界を2周し、これまでに訪れた国は40ヶ国。現在はフリーランスとして、旅行系メディアを中心に執筆・編集・撮影などを行っている。2021年2月〜イギリス(予定)

Instagram:https://www.instagram.com/ryoma3945/
Twitter:https://twitter.com/ryoma3945/
note:https://note.com/ryoma_takahashi

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