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令和の祇王

あなたの胸は黒く蒸される糸の束
抜き取っても断ち切っても
ぐつぐつ煮詰まる鍋の底
わたしの夢は産休に入ってよいか
あたたかく冷めた裸で
細胞分裂できる土壌を待ち焦がれる
人に盗まれぬよう抱えてきた爆弾
失くしたい希求と昇華させたい欲望
道徳の授業なんかじゃ扱われない
死にたがりの風景を慰謝するには
時間さえ呪詛するほかないのか
いのちを大切に出来ないのは
人間らしくないと唾棄するのか
脈々と流れる対価を感じて
金木犀に一抹の歌を想起したら
平安のみやこで舞う白拍子の
報われぬ愛に複写して
彼女たちにこそ三種の神器を与えんと
天が微笑む季節を望む


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