わたしの愛は惑星の首がぼとりと落ちる季節に

わたしの愛は惑星の首がぼとりと落ちる季節に絞殺されました。いや、されたと話すのはあまりに被害妄想が過ぎるでしょうか。正確には絞殺したのです。左右の手に生えた六本目の指と脱色した髪の毛でぐぎぐぎ完膚なきまでに潰し、絞り、そして黒い化け物へと生まれ変わったのです。

赤い月が膨らんだ年の瀬、あなたの眼は陥没し、耳は腐食し、唇は壊死していました。愛です。わたしと交わした睦言むつごとよりも、もう一人のわたしと重なり合う戯言を選んだ所以ゆえんです。あなたが産まれたての星をぺたぺたと歩くたびわたしのはねに虫が湧くので、とうとう万有引力に逆らうのを諦めました。これも愛です。

あなたは霞がかった炬燵こたつで小宇宙をもてあそび、もう一人のわたしと月面でキスを繰り返しています。薄暗いこころを称賛する星が不義をそそのかすのです。その一方で、不義の結末を教えてくれるのもまた星です。眼が飽和し、耳が拡張し、唇が凍死している化け物となってしまえば、暗黒物質さえ打ち砕くことも容易いのです。

テレビで年末深夜のカウントダウンが始まりました。新年という革命を促すイベントは、絶叫で迎える心構えが必要です。

「10、9、8、、、」

あなたはもう一人のわたしに夢中です。この場合の兇器には、包丁や棍棒のような無粋なものは不向きです。星に嫌われてしまいます。わたしの左手を拘束する指輪、妖しい光を放つ指輪ひとつで宇宙へ飛び立てるのです。

「7、6、5、4、、、」

あなたの背中には翅が生えていません。偽物の温かさに感電している脳には決して得られない能力だからです。ゆえに躊躇う理由も、咎める恩赦も認めず、ただ一歩ずつ背後から忍びよるだけ。

あなたもテレビに合わせて仲良くカウントダウン。平和って素敵なものです。

愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています愛しています。

これが最期の愛情表現です。

「3、2、1…!」

腕を振り下ろして、指輪はグサリとあなたの頭蓋骨へ沈没しました。

「Happy New Year !!!」

新年明けなくておめでとう。永遠にお休みなさい。愛しています。




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