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言葉の壁を越えて「わからない」から始まる人生の冒険『マダム・イン・ニューヨーク

大人になると機会は少なくなるけれど、人生には「わからない」瞬間がある。新しい言語や未知の環境。そんな壁にぶつかる時、私たちは何を感じるだろう。

最近観た映画『マダム・イン・ニューヨーク』は、まさにその「わからない」感覚を鮮明に描き出していた、印象深くて勇気をもらった物語だった。


主人公シャシが直面した英語が話せない現実。それは単なる言語の問題ではなく、自信や自尊心、そして家族との関係性にまで影響を及ぼす深刻な問題だった。特に印象的だったのは、家族間の雰囲気の悪さ。英語が通じないことで生まれる誤解や軽蔑。「お母さんは英語ができないから」がベースにある周りの言動は胸が痛むような日常だった。

でも、シャシの物語は「わからない」で終わらない。

ニューヨークに到着後、コーヒーショップでの屈辱的な体験や周りの態度をきっかけに、シャシは英語教室に通い始める。この決断が、彼女の人生を大きく変える転機となった。

印象深かったのはシャシが地下鉄を乗り継いで教室へ向かう姿。それは単なる移動ではなく、新しい世界への第一歩のようだった。飛行機で隣り合わせた紳士の言葉を思い出しながら、勇気を振り絞って、堂々と周りの人に乗り換えや駅、出口について尋ねる。そこには、「わからない」を恐れない「覚悟」や強さがあった。

最後のスピーチシーンは、まさに感動のクライマックスだった。シャシの前向きな言葉は、単なる英語の上達だけでなく、彼女自身の内面的な成長や言語化して伝える勇気を物語っていたと思う。

そして、その瞬間の家族の表情よ。これまでの無意識の偏見や軽蔑が、実はシャシの深い愛情や思いやりから表面的に許されていただけだと気づいたことを示唆していたと思う。

この映画には、新しいことを始める勇気だけでなく思いやりの重要性が描かれているのがぐっときた。相手を決めつけず、理解しようとする姿勢。それこそが、シャシの世界を広げ、家族との絆を深めることにもつながっている。

誰もが、何かに対して「わからない」状態から始まる。それでも、その「わからない」を恐れず、むしろそれを成長の機会として捉える勇気があれば、私たちの人生はどれほど豊かになるんだろう。

シャシの物語は、わからないことも、その壁を越えて成長する人間の可能性を、美しく、そして力強く描き出していた。それは同時に、私たちの中にある、未知なるものへの挑戦する勇気を与えてくれるものでもあった。

「わからない」から始まる物語。自分自身の中にある可能性と、周りの人々への思いやりの大切さを、改めて感じることができた。

シチュエーションは違うけど、トム・ハンクス主演の『ターミナル』も観たくなっちゃったな。

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