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【映画】オペレーション・ミンスミート

バトルアクション無しの「オフィスワーク型」スパイムービー。

派手ではないけど良作だと思います。
若干内容が込み入っているところもあるので、社会系や歴史系が好きな方のほうがよりお勧めかと。

ただまあ歴史好きじゃなくても、映像としてはいわゆるイケオジ豪華競演なので、そちらを目当てにされるのもまた一興でしょうか。
主役を演じるのはコリン・ファース、最近だと「キングスマン」のハリー役や、「英国王のスピーチ」のジョージ6世役で知られる有名俳優。
その上官を演じているジェイソン・アイザックスは、日本ではその名前より「ハリー・ポッターシリーズのルシウス・マルフォイ」としての認知度が高いかと思います。ドラコの父。
ちょっと嫌味な男前の役が定番のようで。そしてご本人は黒髪だったのか。
このお2人、見栄えのみならずセリフの耳触りの良さが印象的でした。今更だけど。
声の良さや発声のスキルという事なんだろうけど、役者さんとしての評判や実績にはそういう要素も含むんでしょうね。

以前にも触れたけど、イギリスっぽい洒落っ気やあえて直接的でない(わかりやすくドタバタはしない)ユーモアもあって、個人的には満足でした。
既存の大作映画とは差別化されたスパイムービー、こういうのもアリだと思います。

難を言うとすれば。
各所のレビューで「難しい」「わかりにくい」と言われていた理由の一つとして、登場人物の名前の覚えにくさがあり、これは字幕の表記も原因の一端かと思います。
多くが実在した人達なので、耳慣れなくて覚えづらい名前でもやむを得ない所はあるんだけど、場面や相手によって苗字で呼ばれたり下の名前で呼ばれたりするのが(主人公なら「ユーエン」と「モンタギュー」)、字幕にもそのまま表記されるので、フルネームを記憶していないと混乱しがち。
映画によっては、セリフで苗字を呼んでいても字幕は下の名前で統一することもあるけど、本作はほぼセリフの通りのようで。
そりゃあんまり親しくない相手から下の名前で呼ばれてたら変なんだけど、そもそも英語に疎い日本人からしたら、どっちが名前だか苗字だかもピンと来てなかったりするしね。
作品中の重要人物である例の「死体」に至っては、本名がグリンドゥール・マイケル、偽名がウィリアム・マーティンで、名前だけ・苗字だけでそれぞれ呼ぶと呼称が4パターン出来てしまうわけで。
登場人物がそこそこ多くて、「本人が居ない状況で名前を挙げて何らか説明がされる」ようなシーンが多かったので、ここが一つのネックになっていたかもしれないのは残念。
主人公のユーエン・モンタギューと、おそらく一番名前が出てきて、顔より名前で認識するしかない(笑)死体=「グリンドゥール」=「ウィリアム・マーティン」あたりをあらかじめ押さえておくと楽かもしれない。

以下、その他もろもろ。
●これからご覧になる方、ご存じなければ007シリーズの原作者の名前はチェックしていくことをお勧めします。
小ネタがあるんだけど、ロクに説明されずに「わかる人だけ楽しんで」という扱いなので。(この「みなまで語らず、分からない者は置き去りにする」感じも非常にイギリスっぽいなと思いましたが)
ちなみに彼に関するエピソードがほぼ史実通りであることにも驚きでした。
●イケオジ代表のコリンファース、本作では若干年齢を感じたような・・・。
役作りかとおもったけど、作中の年齢は40代くらいよね?
あご周りの丸みはまだしも、眉毛が薄く見えたのはメイクでどうとでもなると思うのだけど。ご本人があまりそういうのを好まないのか。
イギリス人男性ってあまりアンチエイジングに走らない印象はある。(だいぶ偏見かもしれない)
●主演のユーエンが本職のスパイではない、という事もありますが、彼等の活動はほぼ室内に限定されて、年配の女性秘書や暗号解読班の若い女性たち(OL風)と共に任務にいそしむあたりが「お仕事ドラマ」感があって、そういった所も他のスパイ映画とは一線を画してました。
書類(偽造の手紙)を上司に何度も書き直しさせられるシーンとか、多くの会社員が感情移入&顛末にカタルシスを感じられそう。笑
●一方でむしろスパイらしいのは、海外で活動する脇役の二重スパイ達。
 彼等は毎日の生活を送るだけで結構命がけだよな、ということを改めて感じました。
 男女問わずハニートラップ担当させられてた細身の男性、イギリスの色男ってああいうイメージなんでしょうか。結果的に最も身体を張って活躍していたかも。
・・・あちらの現皇太子の若い頃に似てるかな、と思ったのは私だけでしょうか。まあイギリス顔ってことなのかな。
●最初の方でも触れたけど、観賞後に確認したら内容がほぼ史実に基づいていたことに驚きました。文字通り事実は小説よりも奇なりということか。
こんな風に長い間伏せられていた(あるいは今も伏せられている)秘密作戦や、その中で陰ながら尽力した人々も沢山いたんでしょうね。
●「一方が戦争に勝つための作戦」というだけでなく、「被害を最小限に留めるため」という目的が強調されていて、それは実際にそうだったんでしょうけど、まあ戦争だから両側の言い分はそれぞれ異なるんだろうなとも思ったり。
そして戦争やスパイのこんな物語を、フィクションと思えず(史実ではあるんだけど)笑えなくなるような日々は望まない。そんなことも思ってしまう今日この頃。


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