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11【10年以上続く事業】となるための事業計画作成法⑤~顧客に届く事業となるための分析を簡単にする方法(基礎編⇒カギとなる指標TAMの算出方法)

「私の住んでいる地域を元気にしたい!」そんなあなたの想いをサポートしたい!Мの行政書士・上杉哲哉です。(福島県会津若松市と栃木県日光市に在住しています)

事業とは、【誰かの課題を解決する】ことです。

前回までは、10年以上続く事業となるための種となる「課題」を発見するための分析について考えてきました。

今回は「誰かの」に着目します。事業で解決したい課題を実際にもっている人、つまり顧客となるターゲットを定める分析法について考えていきましょう!


(1)なぜターゲットを定める必要があるのか?

事業で解決する「課題」を設定することが10年以上続く事業とするための大前提ですが、しかし、事業で解決したい「課題」をもっている人に課題解決となる事業が届かなければ顧客がいない状態となり、事業の継続はできなくなります。また、「課題」を持っている人が存在しなければ、事業をやる意味がなくなってしまいます。

これは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、実際、大企業などでも、自分たちのできる技術にばかりに着目した状態を続け、結果として顧客を逃すといったケースもあります。

(事例)顧客設定が甘いまま始めた「Apple Watch」と「Googleグラス」
現在も人気が高いウェアラブルデバイスの「Apple Watch」。しかし発売当初は苦戦しました。Appleの顧客見通しの甘さがありました。

iPhoneよりも小さなモバイルツールが作れるという技術があるという視点から、後付けで顧客設定をし、課題を作ってしまったのです。

小さなモバイルツールを作れる
⇒さりげなく身に着けられるモバイルツールを必要とする人がいるだろう

このような発想で顧客設定をし、課題を作ってしまったのです。そして、Appleと同様に、小さなモバイルツールを作れるGoogleも、Appleがするのであるならば…と、追随し、ほぼ同じ顧客設定と課題で「Apple Watch」以上の機能を搭載したメガネ型ウェアラブルデバイス「Google グラス」を開発し、事業を始めました。

結果として、両方とも売り上げが伸びずに苦戦しました。

その後、この失敗を糧に、Appleは顧客設定を見直し、腕時計型ディバイスが欲しい・必要な人がいるのであるならば、どんな人であるのか…?と顧客設定に時間をかけました。

結果として、健康向上に興味を持つ方の多くが、手軽に自分の健康状態を知ることができるディバイスを必要としていることに気が付きました。そして、「Apple Wacth」に健康状態を数値化で示せる多くの機能を搭載させました。

その結果、「Apple Watch」の売上は予想を超える売り上げを上げ、現在、ウェアラブルデバイスとして唯一無二の地位を得ることに成功しました。

一方、「Googleグラス」は、顧客の再設定をしないまま、更なる技術を搭載することで苦戦に対応していきました。しかし、技術を搭載すればするほど、当初設定していた、〔さりげなく身に着けられるモバイルツール〕という顧客設定さえも見失い、さらなる苦戦を強いられ、市場撤退をせざるをえない状況まで追いつめられてしまったのです。
(現在は、Googleも顧客設定に時間をかけて取り組み、Appleと差別化するために、さりげなく身に着けられるモバイルツールを必要とする層を発見し、売上増が期待されるツールとなってきています。)

このように、前のめりになり、持っている技術を活かそうすることに躍起になると、顧客のいない課題を設定をしてしまうことが起こってしまうのです。

AppleもGoogleも、顧客設定をしっかりと行うことで危機を乗り越えたように、顧客設定を最初の段階でしておくことが事業の成否につながっていきます。

(2)ターゲットを定めるための指標となるTAMの算出法と分析法

①事業に適した市場を見つける指標となるTAMとは?

顧客設定をする際に、最初に知っておくべき概念がTAMです。

TAMとは「Total Addressable Market」の略で、日本語では「対応可能市場」と訳されています。以下の式で計算されます。

「対応可能市場(TAM)」=「エンドユーザー数(課題を解決したいと思っている人数)」×「その人が製品やサービスに対して年間に支払うと予想される金額」

TAMが100億円になる市場であれば、事業の成功率が上がるといわれています。

スタートアップにおいて、まだ誰もやっていないニッチな市場であることはとても大切なのですが、あまりにも市場が小さすぎると上限が限られてしまうので、大きすぎず、小さすぎない市場として、TAMが100億円ほどになる市場を狙うと事業の成功率がアップする可能性が高まります

数式の内容を見るとわかると思いますが、実際に課題をもっていそうな人数と共に、課題を持っている人がどれくらい事業に対して対価を支払うか?という視点で考える必要がでてきます。

課題をもっていそうな人数は、ネット検索を手掛かりに見つけることができます。課題を思いついたら、課題に関連するキーワードを上げて、キーワードをもとに検索をして、関連指標をすべて保存しておき、指標を見比べる中でだんだんと見えてくるようになります。

次に、「課題をもっている人が実際にどれくらい事業に対価を支払うか?」は課題を持っている人の立場に立って考えてみることが大切となっていきます。

課題を持っている人の立場に立って考える方法として、ペルソナ分析という方法があります。自分が始めようとしている事業を必要としている人物像を具体的に描くという分析方法です。年齢、名前、職業、性別、趣味、生活スタイル、出身地など…できる限り具体的に想定しておくと、どれくらいの対価を出すのか調査しやすくなります(次回詳細を扱います)。

②TAMで発見した市場で勝つこと

PayPalの共同創業者であるピーターティール氏は、「小さくてもいいので市場を独占せよ。競争は負け犬がすることだ。」と起業にとって名言ともなる言葉を語っています。

TAMで発見した市場に注力することが重要であることを語っています。

例えば、新型コロナウィルス感染症による自粛傾向の収束後に再活性化するといわれているインバウンド旅行の市場において、旅行のプラニング代行など、誰でも気づくようなインバウンド旅行者の課題を取り扱ってしまうと、結果として資金力に勝る大手旅行代理店に惨敗するという結果に終わってしまいます。

コロナ以前のインバウンド旅行の市場において、スタートアップが成功した事例として、旅行者向けSIMカード提供サービス(Wamazing)や、コインに特化した両替機(Pocket Change)、インバウンド旅行者がカフェに自分の荷物を預けて置けるサービス(ecbo cloak)などがあります。どれも大手旅行代理店が気づかない課題でありつつも、確実に課題をもっている顧客がいる市場で勝負したので成功し、独占状態となっていきました。

よって、課題を設定したら、次に課題が「誰でも気づくような課題ではないこと」を確認する必要があります。

しかし、取り扱う課題が「誰でも気づくような課題」であることを判断するためにはどうすれば良いのでしょうか?

そこで使う数値が「TAM」なのです。TAMが100億円程度の市場であれば、「誰でも気づくような課題」ではないだけでなく、確実に課題を持っているユーザーがいる市場という目安となります。

(事例)Amazon
1994年に創業したAmazonは、当初からオンライン小売市場を独占するというビジョンをもっていました。というもの、インターネットが普及し始めた1990年代ごろ、手軽に、そして迅速に小売商品を手にしたいというニーズが市場にあったからです。物流システムがある程度成熟した結果、迅速で多品種の小売商品が手軽に入る時代であったからです。

創業者のジェフ・ベゾス氏は、より迅速に多品種を扱う小売業への可能性を感じました。さらに、インターネットが普及し始めているので、インターネットでより手軽に多くの事を成し遂げたいニーズがあることも見えていました。

そこで、インターネットを利用したオンライン通販システム着手したのでした。

しかし、あまりにも広く商品を扱うと、配送システム構築までの間に資金力に勝る大手流通事業者に模倣されてしまい、新規事業者であるAmazonが駆逐されてしまう危険がありました。

そこで、最初の時点では、広く商品を扱うことはせず、まず、大手流通業者があまり手を出さないけれども、オンライン通販システム構築しやすい商品を扱うことにました。その商品が書籍でした。

書籍はニーズがありながらも、書店の流通形態が他の商品とは大きく異なるので、大手流通事業者が扱っていなかったのです。

さらに、書籍はカタログ化しやすく、腐ることもなく長持ちしやすく、さらに形状もほぼ同じなので発送の効率化が図りやすかったのです。よって、配送システムを構築しやすい状況にありました。書籍であればオンライン通販システムを早い段階で構築が可能であり、大手が手を出さないので、模倣される前に完璧なオンライン通販システムを構築することが容易にできたのです。結果として書籍のオンライン通販システムで他社が模倣できないほどのシステムを構築し、オンライン書籍市場を独占的に支配するようになったのです。

そして、書籍で蓄積した他者が模倣できないほどのオンライン通販システムのノウハウ用いて、CDやDVDやゲームを扱うようになり、その後に日用品、家具、電化製品全般まで取り扱うようになりました。他者が模倣できないほどのシステムであったので、オンライン通販市場において圧倒的な地位を得ることができるようになったのです。

このように、まずはTAMのなどの数値を用いて、勝負しやすい市場を発見できれば、独占しやすい市場での課題を取り扱う事業を始めることが可能となるのです。

他にも、近年話題のAirbnbも、全米でいきなり民泊マッチングを始めたわけではなく、大規模なイベントやコンベンション限定でのサービスからスタートし、そこで構築したシステムを用いて全米、全世界へと進出しました。

また、Facebook社も当時のSNSの同業者のように全世代向けのサービスとして展開しませんでした。最初は、一地方の大学生だけに向けたサービスとして開始したのです。他のSNSが全世代を狙ったために、どの層にも中途半端な満足しか与えることができず軒並み撤退していくようになる中で、Facebookは限定された層においてシステムを構築する中で独占的な地位を獲得した後に、そこをベースとして次第に隣接する層に働きかけていったので、全世代・全世界を巻き込むSNSとして成長していったのでした。

TAMの数値を基にして、顧客が存在しながらも大きすぎない市場を狙うことが、顧客に届く事業となるための大きなカギとなります。


―まとめ―

(1)なぜターゲットを定める必要があるのか?
事業で解決したい「課題」をもっている人に、課題解決となる事業が届かなければ顧客がいない状態となり、事業の継続はできなくなります。また、「課題」を持っている人が存在しなければ、事業をやる意味がなくなってしまいます。

実際、大企業などでも、自分たちのできる技術にばかり目がいってしまい、顧客がいない事業を始めてしまう失敗をしています。

(2)ターゲットを定めるための指標となるTAMの算出法と分析法
TAMとは「Total Addressable Market」の略で、日本語では「対応可能市場」と訳されています。以下の式で計算されます。

「対応可能市場(TAM)」=「エンドユーザー数(課題を解決したいと思っている人数)」×「その人が製品やサービスに対して年間に支払うと予想される金額」

TAMが100億円になる市場であれば、事業の成功率が上がるといわれています。

数値を扱うとそれだけで拒否感を感じる方もいると思います。
しかし、数値の算出法はそこまでむずかしくはないということが分かったと思います!

次回は、顧客をより具体的に想定するための分析法である「ペルソナ分析」についてです!

最後までお読みくださりありがとうございました。




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