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Netflix映画『ラバー、ストーカー、キラー』

 この作品は、アメリカ中央部にあるネブラスカ州で2012年に実際に起きた事件に基づくドキュメンタリー映画だ。
 題名の通り、題材となる事件はストーカー殺人なのだが、事件解決までに数年を要したばかりか、大どんでん返しがある点でミステリー仕立ての物語になっている。

 三十代半ばで離婚して独り身になった自動車整備士の男性デイブ・クルーパは、孤独を埋めてくれる相手を探してネットのマッチングサービスを利用する。真剣交際ではなくてカジュアルな付き合いを求めて。
 ある日、同棲を始めようかとしていた出逢った女性のうちの一人が疾走したかと思ったら一日に何通も罵りのメッセージを送りつけてくるストーキング行為を始めたのだが・・・。

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 ここ日本でもストーカー殺人はしばしばニュースになって、その度に愛憎の恐ろしさにおののく。その執拗さは、警察への相談によってさらに加速して過激になる。警察は事件にならなければ介入が難しい上に、被害者を24時間警護するわけにもいかない。結局は転居を強いられることになる。それでも見つけ出してしまう執念は殺してしまうまで続くから、突き動かす動機は感情を超えた何かなのかも知れない。

 あの人に振り向いて欲しい、それを邪魔する存在は許さないといった思いは自己中心的と言えばそれまでだが、誰しも持っているものだ。それが過剰になるのはある種の思い違いで、あの人は私を一番大切に想ってくれるはずという幻想があるせいだろう。人間が自分の命を投げうってでも尽くせる相手は恋人では断じてない。恋人や結婚相手は所詮地の繋がらない他人であって、生物として本能的に救う相手は自らの遺伝子を受け継ぐ子供の方だ。

 だから、勘違いから始まるストーキングは、出逢った時から始まっていると言えるだろう。嫌いと言った瞬間に相手がストーカーになるわけではない。最初からストーカー要素を持っているのだ。
 あまりに気が合うことが多くて、自分にはこの人しかいないと思った時には気をつけよう。冷静な視点を失ったあなたがキラーを恋人に選んでしまわないように。

おわり


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