見出し画像

脱炭素というけれど - 我々は炭素で出来ている

細菌などの微生物から動植物まで、地球上の生き物は主に炭素で出来ている。
その炭素は他の元素と同様に地球上や地球の大気をぐるぐる循環し、輪廻を繰り返している。
昨日まであなたの身体の一部となっていた炭素は、一月ひとつき後には魚の目玉になっているかも知れない。あるいは密林の大きな葉っぱになっているかも知れない。
あなたを構成する元素は、あなたの身体にずっと定着しているのではないのだ。むしろ、頻繁に出入りしている。あなたは、あなたが思うほどあなたのままではない。
いやいや、わたしは私のままですよと思うかもしれないが、事実そうなのだ。

では、わたしたちを作っている炭素は、もともとどこにあったのか。
太古の昔に遡るとすれば、地球は二酸化炭素で溢れていた。大気中には今とは比べ物にならないほどに二酸化炭素が充満していた。これが我々の炭素の源だ。つまり動植物の身体の起源だ。

ひとつの二酸化炭素は、ふたつの酸素とひとつの炭素で出来ている。
植物はこの二酸化炭素を吸い込んで、太陽の光をエネルギー源として二酸化炭素を分解し、取り出した炭素で自分の身体を作る。不要となった酸素は吐き出す。
これが小学生で習った光合成こうごうせいだ。

つまり二酸化炭素は植物の餌の一つであり、その排泄物が酸素だ。
酸素は科学的に反応性が高いので毒性が強いのだが、動物はその酸素を吸ってエネルギー源としている。
そして動物は植物を食べることで身体の材料となる炭素を取り入れている。取り入れた炭素は身体の材料になる他に、呼吸の際に酸素に付けて大気中に放出する。二酸化炭素として。

動植物が死ぬと微生物の餌となり分解されて、また植物や動物の栄養源となる。
とにかく、何処もかしこも循環し輪廻転生している。


植物が増えると大気中の二酸化炭素は減る。
植物が増えると、それを食す動物が増える。
動物が増えると大気中の酸素が減って二酸化炭素が増える。
二酸化炭素が増えると植物が増える。

植物が増えなくて酸素が足りなくなれば動物が減る。
動物が減れば植物が増える。
植物が増えると酸素が増える。
そうすればまた動物が増える。

微妙なバランスを保ちながら植物や動物が増減し続けることで地球上の炭素分布や大気組成が構成されている。
現代ではこれに加えて人間の経済社会活動が加わっていて、パラメータはより複雑化している。


森林破壊などによって人為的に植物が減れば大気中の二酸化炭素が減らなくなり、酸素が増えなくなる。
人間がものを燃やせば、大気中の二酸化炭素が増えて酸素が減る。
ものを燃やすのは一瞬で出来るが植物が育つには長い年月を要する。
つまり、人間活動に伴って、二酸化炭素が増えて酸素が減ることになる。
そして植物がある程度の大きさに育つまでそれが続く。ただ、植物は成長する時にこそ大量の二酸化炭素を吸って、酸素を吐き出す。

でもこれまで「大気中の酸素が薄いため明日は息苦しいでしょう」なんていう天気予報は聞いたことがない。つまり、酸素は大して減ってない。

酸素が減っていないということは、
酸素が大量に作られているか、
動物が消費する酸素が少ないか、
社会が消費する酸素が少ないか。

酸素が減っていないということは、
二酸化炭素は増えていないということか。

二酸化炭素が増えて温暖化しているという話だったはずだ。
酸素は減っていないのだろうか。
温暖化してしまう前に、呼吸が苦しくなったりすることは無いのだろうか。

脱炭素というけれど、炭素が少なくなれば植物の餌が少なくなってしまう。
そもそも植物が少なくなってはいまいか。
二酸化炭素を食べて、酸素を作る植物が少なくなっているのではないか。
そのことは何故報じられないのか。

炭素を出さない社会は、植物を育てない社会。
植物とは切り離されて、つまり、地球と切り離されて生きる社会。

何か大切なものを忘れてはいないだろうか。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?