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人間が決済端末になる日

 自動車を決済端末として活用しようという試みがあると言う。確かに世にある様々なものが決済端末になりうる要素技術があって、それがいつも手元にあるものであれば便利なことこの上ない。
 これまではスマホがそれに当たっていたが、日常生活が車主体の人にとっては、スマホを取り出すまでも無く車自体で決済出来れば、料金所やドライブスルーどころか、様々なサービスへの応用が考えられるのだろうから便利なことこの上ない。

 決済方法は、なるべくお金を意識しないで済む様に進化してきた。クレジットカードがそうだし、電子マネーによって加速した。ネット通販をカード払いにしている人は、殆ど買い物という感覚も無いのではないか。いまやお金を支払うという概念すら薄れて来ていて、単なるマネーデータの送信になっている。そこでは、お金は言葉と同じようなコミュニケーションツールのようなものとしてメッセージアプリを使うくらいの気軽さで使われている。

 顧客の財布の紐をいかに緩めるかに腐心していた時代はとっくに終わり、マネーのやり取りがいかにスムーズに行えるかが勝負になっている。毎月の自動支払いさえ設定すれば無限にサービスを受けられるサブスクは、もはや支払いではなくアプリの設定の一つに過ぎない。感覚的には。

 現金主義が悪くて電子マネーが良いと言うのではない。マネーが電子化された世界はこれまでとは全く違って見えるのだ。
 ●●ペイでお小遣いを貰うような電子マネーネイティブの子供たちが見ている世界は、大きな財布を持ち歩いている世代とは違うということだ。

 それでも自動決済の無人店舗が今ひとつ実用化に至らないのは、来店客側が匿名性をどこかで担保しようとしているからだ。
 現金で物を買う場合、あなたがどこの誰かは知る由もない。それでも買い物は出来る。しかし、店舗を出たときに自動的に決済されるようにするには、あなたがあなたであることの保証が必要になる。これまでそれを担っていたのがクレジットカードだったのだが、クレカではリアルタイム性に欠ける。万引きが発覚するのが一ヶ月後では遅すぎるのだ。
 かと言って、ちょっとコンビニで買い物をする程度で、あなたの行動や購買の全てが誰かに記録され把握されるとしたら確かに気持ち悪い。自由と民主主義の国では、常に監視されるような社会を望んでいないのは自明だろう。となると、電子マネー決済による無人店舗の実現は心理的に遠のいてしまう。

 それでも、QRコードを見せたり、タッチしたりしないと決済出来ないことに不便さを感じ始めたとしたら、あなたもまだ新しい感覚を持っているのかも知れない。
 紙幣や硬貨という実体に縛られなくなったマネーは、スマホなどの携帯デバイスにすら縛られないようになる。つまり人間自体が決済端末になる時代が間違いなくやってくる。
 個人の決済情報がダダ漏れになるようなことはあってはならないが、あなたの電子マネー決済をじっと観察している人がいると考えるとしたらそれも違う。

 お金は既に過去のお金とは違うものになっている。新しいお金に対応したリテラシーを身につけて安全かつ便利な方法を見出して行かなければならない。

おわり
 

 


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