見出し画像

Netflix映画『ザ・ユニオン』

 アメリカ人は誰でも世界で活躍しているイメージがあるかも知れないが、当然ながら生まれ故郷から一歩も外に出たことが無い人だっている。この映画の主人公もそうだ。
 いつも通り仕事終わりに仲間とバーで飲んだくれていると、大学進学とともに姿をくらましていた高校時代の彼女が突然姿を現す。よりを戻しに来たのかと淡い期待を抱きながら、夜道をバイクを飛ばして思い出の公園に行く。あの時よく聞いた音楽を流せばあの時が蘇り、ロマンチックな雰囲気に浸りながらハグをすると……。

 彼女は今や世界を股にかけるスパイ組織で活躍しているのだが、世界中の情報機関に関わる人達の名簿が盗まれて窮地に陥っていた。名簿が敵国に渡れば、世界中の諜報員は標的にされてしまうだろう。名簿を取り戻すためには、名簿に名前が載っていない人物が必要だ。

 故郷で建設作業員を続けながら高校時代の先生と寝たりもしている主人公の男をマーク・ウォールバーグが演じる。恐らく脚本で想定されていただろう男の、そんなにうだつが上がらない感じは、残念ながら無い。マーク・ウォールバーグでは仕方なかろう。
 スパイになった高校時代の彼女はハル・ベリーだ。すっかり垢抜けているのはスパイとしての活躍ゆえだと思えば、そんなところだろうか。
 映画の中の年齢設定は俳優本人よりもかなり若い様に思えるからそれだけでも大変だろうが、アクションシーンの撮影では怪我が絶えなかったようだから映画業界も案外ブラックだ。

 面白い映画ではあった。が、どうだろうか。スパイ映画としてはありふれたプロットを、アクション盛り沢山で、かつ、実にスマートに作り上げていて素晴らしいのだが、何処か物足りなさを感じてしまった。すっきりし過ぎているのだ。ハラハラする筈のシーンでハラハラしない。そこまで不測の事態は起きない(起きているのだがそう感じさせない)。怪我が絶えなかったというアクションシーンも、そうは見えない(見えたら駄目なのだろうが)。
 きっと、主人公の二人を含めた全てが出来すぎているのだ。色々と完璧過ぎるのだろう。コテコテのチャーハン大盛りを食べたいと思っていたら、塩分控えめのパラパラチャーハンが上品で小さな器に載って出てきたみたいな感じだ。

 ネガティブな評価に聞こえるだろうが誤解はして欲しくない。見ごたえがあって面白い映画なのだ。地に足がついたクールさが独特で、癖になりそうなところもある。冒頭から音質の良さがうかがえるから、ぜひ大きな画面、大音量で見て欲しい。
 次回作をも予感させるエンディングだから、その意味で楽しみでもある。

おわり


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?