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現金志向と現物志向

 日常的にキャッシュレス決済を利用する機会が増えた。
 電車、コンビニ、スーパー、飲食店。どれも財布なしで済ますことが出来るから便利だ。

 諸外国と比較してキャッシュレス決済の普及がかなり遅れていると言われるこの日本でも、いよいよ給与支払のキャッシュレス決済対応に向けて検討が具体化してきているという。
 しかし給与支払の原則が現金と法的に決められていたとは知らなかった。給与の銀行振込をOKとしたのも後付オプションだったらしい。

 別に給与を○○ペイで貰いたいとまでは個人的には思っていない。けれど給与がキャッシュレス決済口座に振り込まれれば、世の中のキャッシュレス決済サービスがより普及していくのは事実だろう。

 ところで、どうしてこうも現金志向が強いのだろうか。
 それは、リモートワークやリモート会議はどうもねぇ、という考え方に通じているようにも感じる。

 どういうことか。

 リモート会議に違和感があるという人に共通しているのは、直接合わないと伝わらないものがあるという意見だ。実はかく言う私もそう思っている面が無いわけではない。
 なぜそういう感覚が生み出されるかと言うと、それはコミュニケーションのありかたによるものと思われる。
 本来的にはビジネスでのコミュニケーションでは用件が伝われば良いはず。それ以外の情報は極論すれば無駄であって、業務の生産性を阻害するものだ。しかしその実現には、ビジネスに私情を持ち込まなまいことが肝要。日常生活的な感覚で、あの人に好かれることで仕事が上手く行く、といった考え方が根底にあるから、どうしても人となりや外見的な印象にとらわれる。
 日本の多くの企業で男性だけ茶髪禁止になっているのと根源的な理由は同じだ。
 そういったことは社会を形作る基礎的な部分だから容易には変わらない。

 お金は、その用途を満たすのであれば現金でなくても良いはずだ。
 そんなことは頭では分かっていても、どうしても財布が手放せない。現金が無いとどうも不安になる。そんな感覚が拭えないとしたら、それはキャッシュレス決済が利用可能な店舗の普及状況とは無関係で、あなたの中にある現物志向が邪魔をしているに他ならない。

 目的と手段。
 そう割り切って全てが進むのであればことは単純だが、人間そうはいかない。そんな風に思うのだとしたら、割り切るべき部分と人間的なコミュニケーションが必要な部分がごっちゃになっているだけだ。
 いろいろとごっちゃになった挙げ句、夫婦でのコミュニケーションが疎かな世界有数の国になっているこの日本。
 大切なものと、省略出来るものの見極めを少しずつ進めて、仕事や生活の中にもう少し合理性を持ち込んでも良いような気がする。

おわり

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