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初任給とトンビ
新入社員が初めての給与を貰う時期になった。
バイトとは違い、給与明細書を見て何か社会人になったという実感と責任みたいなものを感じたものだ(多分)。もっとも、まだ仕事らしきことは何もしていないのであって、何故給与を貰えるのか少し不思議に感じたが、くれるというのだから貰えるものは貰っておこうと思い、有難く頂戴した。
当時は、仕事をすると何故お金が貰えるのかなんて考えることも無かったし、一日中会社に拘束されているのだから貰って当たり前みたいに思っていた。つまりはバイト感覚だったということでもある。
会社に時間を捧げる代わりにお金を受け取るという説明はしごく分かり易いから、その考え方に疑いの目を向けるのは難しい。
でも、社会人という言い方の通り、単なる勤め人ではなくて社会の一員であるからして、勤務する会社や仕事の先に社会があるのだということが今なら分かる。仕事の向こう側にいる人々が本当の相手なのだと分かる。
社会人としての仕事観の違いは、社会に対する視野や視点の違いとも取れる。
地面の上を歩く蟻が抱く高さの概念と人が感じるそれは異なるから、蟻が人の視点を持つことは難しい。蟻にとってはどこまで行っても平面が続いているだけで、空に向かって広がる高さがある世界を理解することは出来ない。
仕事を通じて成長したい。
就活生が口を揃えてそう言うが、蟻の視点である限りは成長はない。自分の待遇の悪さや上司がムカつくなど、仕事やその環境を自分事で見ている限り見えないものがある。成長には、自分を含めた全体像を上から見下ろす俯瞰した目線が不可欠だ。逆に言えば、そういった視点を持てるようになることが成長と言うのかも知れない。
かくいう私も、せいぜいが人間の視点止まりであり、象の視点にすら及ばない。大空を舞う猛禽類の鷹のような視点が持てればもっと楽になるかもなぁなんて、海岸近くの空をぐるぐると回遊している鳶を見上げながら夢想している。
おわり
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