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サイバーパンクな身体感覚

 例えばの話、目が3つあったらどう見えるのか。元々2つしか目を持たない人が3つ目の目を手に入れたとしたら、恐らく最初は違和感しかないだろうが、早晩慣れてきて普通に見えるようになるだろう。
 見えるのは見えるのだろうが、二眼での立体視にもう一眼加わることによって立体感が増すのかそれとも減るのか。立体感以外に何か良い効果はあるのか。

 とある研究では自分の身体のように感覚的に操れる人工身体「第6の指」に成功したという。これは、装着したメカ指を腕の筋肉の電気信号を利用して操作するもので、自分のもののように感じるようになるという。
 第6の指を操作するのが指によってではなく電気信号によってであるところが新しい。

 もともと私達が持っていない身体デバイスの身体化は、身障者はもちろん障害のない人でも新たな身体感覚を獲得する可能性を秘めている。そして以外にも人はその新しいデバイスに慣れて使いこなすことが出来そうだ。
 

 仮に脳にアクセスできる身体化デバイスに発展すれば人間の可能性は広がるかも知れない。
 人の感覚を拡張する身体化デバイスがあれば嗅覚や聴覚を増強することが出来るし、補聴器の音量問題も無くなる。
 メガネやコンタクトレンズを使わなくてもクリアな視界が得られる。

 考えてみれば、これまでの技術発展は人間や動物の身体能力を増強するものだった。望遠鏡で遠くを見られるようになったし、自動車やバイクによって短時間で遠くに行けるようになった。しかし人間は操作者として携わるもので、間接的なものだった。それでも、レーサーが車を自在に操るように、訓練によってダイレクトに操作している感覚を身につけることは出来た。
 これに対して身体化デバイスは極めて直接的な拡張された身体感覚を得ることになる。コンタクトレンズが当たり前になったように、新しい感覚を手に入れた私達は、いつかそれ無しではいられなくなるだろう。
 
 身体機能が拡張されることによって、感覚も思考も文化もリニューアルされる可能性が高い。運動競技では薬によるだけではなく、デバイスによるドーピングが問題になりそうだ。
 もっとも、モータースポーツのようにレギュレーションを決めた形での新しい競技になる可能性もある。

 サイバーパンクな世界は意外にも直ぐそこまで来ているのかも知れない。
 その時私達に見える世界はどのようになっているのだろうか。

おわり


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