見出し画像

頭の良し悪し

 子供はみんな天才だ、ということを聞いたことがある。
 それが、いつから天才ではなくなってしまうのだろうか。

 頭の良し悪しを測るのは意外と難しくて、アイツは試験は得意だけどバカだとか、アイツは良い学校は出てないけど地頭が良いとか言ったりする。このような説明は合点がいくことも多い。
 知能指数という評価方法もあるが、知能指数が高い人が頭が良いかというと微妙で、変わった人が多くてどちらかというと社会に適合出来ない人もいる、というようなことを知能指数が高い人が言っているのを聞いたことがある気がする。

 頭の良さを、物事を成し遂げる段取りの上手さ、という切り口で見たとしても、成すべき物事の種類によってやり方は違ってくるから、どんな場面やどんな場合でも解決出来ますという人は少ないのではないか。
 そうなると結局、試験の出来不出来で測るのが手っ取り早いとなって、試験が得意な人々が持て囃されることになる。

 確かに、入学試験のように長期間の計画が必要な試験をクリアするためには、理解力もさることながら、段取りや要領の良さが問われるし、そのためには創意工夫が求められるから、ある意味では頭の良さが反映されるとも言えよう。

 もっとも、うっかりすると試験が出来るのに馬鹿という人種に分類されてしまうから気をつけなければならない。あくまで私見だが、試験はできても馬鹿と言われてしまう人は、コツコツ取り組んだらたまたま試験はパスしたけれど、決して要領が良い訳ではなくて、やっぱり馬鹿なのだというケースなのかもと思う。

 私が過去に出会ったことのある頭の良い人達(試験ができる人)は、ろくに勉強をしなくても、遊んでいても楽々と試験をパスしていた。君は僕と同じように授業を聞いていたのに何故問題が解けないの? と彼らには不思議がられたし、問題を解くために何をそんなにガツガツ勉強する必要があるのと、心底思っているようだった。
 彼らが私に対して一つだけ誤解していたのは、私は決してガツガツ勉強なんかしていなかったし、同じ教室で机を並べてはいたが彼らの学力には遠く及んでいなかったということだ。

 そんな落ちこぼれの私でも、周囲を見ていて思うことがある。世の中には学ぶ為の段取りや方法論を知らない人が多くいるのだな、と。
 この類のことは、何だか上から目線で嫌らしい言い方になるから嫌だが、もし誰もが学習するための正しい方法を知ってさえいれば、もっと簡単に勉強が身に付くし、楽なことが増えるだろうになと思うのだ。

 人間にとって学習の始まりは、きっと赤ちゃんが喋り出す頃だろう。その時期の経験や体験が重要な気がする。
 その頃は脳細胞のネットワークが発達することで様々な事が出来るようになる時期だ。脳内ネットワークは経験によって構築されるから、多くのことを見聞きし、経験した方が良い。そこで大切なのが、その経験を言語化することのような気がする。
 身体や心の動きと言語を繋げること、世界を言語で説明することで、いわゆる理性や知性と言われる部分が発達するのではないか。そしてこの言語での説明はなるべく論理的であった方が良い。つまり理屈が通った説明の方が良い。支離滅裂な説明では脳の回路は迷走するばかりだ。理路整然とした言語による説明こそが、子供の経験と脳の体験を言語によって結びつけ、いわゆる学力に結び付くような考え方を身につけることが出来るようになるのではないか。

 そう考えると、小さい子供だからと言って赤ちゃん語で話しかけないとか、分かっていないかも知れないけれど大人に説明するような話し方で赤ちゃんにも話した方が良いと言われるのも納得がいく。

 そしてもう一つ大切なのがイメージだ。イメージと言語は一見矛盾するが、頭の中に浮かぶイメージは人間の脳のネットワークそのものでもあると私は考えている。イメージを操ることで人は言語を使うよりも速く考えたり速く処理することが出来る。そろばんの暗算が良い例だろう。
 頭の中でのイメージの扱い方やイメージの言語化には訓練が必要だ。子供は自然とその訓練を始めるから、不用意にそれを妨げてはならない。すなわち、子供が空想世界の中で楽しそうにしているのを否定するのではなく、言語化したり現実世界と連携させるための手助けをした方が良いと思う。

 イメージを使って処理をするというこの能力は人間特有のものだ。AIなどのコンピューターはイメージも言語化・記号化して扱うので、それでは人の処理速度には到底追いつかない。

 と、ここまで書いて思ったが、頭の良し悪しは実はイメージ力にあるのではないか。イメージを扱う能力にあるのではないか。そしてそれを適切に言語に翻訳する能力にあるのではないか。
 だとすれば、頭が良くなる為に勉強に勤しむ真面目な諸氏は、目指す方向性が違っているのかも知れない。

 ここまで取り上げなかったが、学力には記憶力も重要であることは言うまでもない。実はこの記憶力もイメージと深く関わっていると感じる。
 語呂に置き換える覚え方もイメージと関わりがあるし、フォトリーディングを利用したような覚え方もイメージを最大限に活用した例だろう。

 脳の能力を最大限に利用するとなれば、身体の使い方とも関連する。脳の左右で性質が異なっていて、身体の左右が脳の右左に繋がっていることも知られている。つまり、身体の全体と左右をバランスよく使うことは、頭の使い方に影響しない訳が無い。


 要するに、身体も頭も満遍なくいろいろな部位を使うほうが良くて、脳や神経が発達する時期にどれだけ多くの部位を使う機会があったかが頭の良し悪しに関連してそうだ。それと同時に、記憶や思考にイメージを最大限に活用する事が出来るよう、子供のイマジネーションを阻害しないというのが、頭を良くするための方策として、今のところの私の結論だ。

おわり


 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?