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EC業界の課題克服:効率化の鍵を探る


目指している姿

現在、私は小売業でEC事業を担当しており、私のチームは商品を中心とした業務を担当しています。
EC事業としては市場でかなりの後発組となりますが、リアル店舗での市場シェアが大きいことや、関連企業含めた多様なリソースを考えると、参入余地と成長性は高いと考えています。

「このECサイトのおかげで便利で楽しい体験ができるようになった」とお客さまに感じていただき、お客さまの生活を豊かにする事業へと成長させていくことが私のミッションです。

EC事業が目指す姿を実現するためのホイール


店舗出荷型ECの特徴

また、弊社EC事業は「店舗出荷型EC」という形態をとっており、欧米のディスカウントストアなどのEC事業ではかなりメジャーなスキームであります。


メリット

  1. 資産である店頭商品在庫を活用してECで受けた注文を出荷するため、資産回転率などの経営効率向上に有効

  2. 倉庫出荷型と違い商品在庫を独自に調達する必要がなく、すでに店頭品揃えある商品は、取引先と新たな契約を締結せずとも、掲載合意のみでEC販売できるため品揃えの幅を出しやすい

デメリット

  1. セールスなど需要ピーク時に出荷キャパがオーバーフローしやすい

  2. 店頭とECの管理システムの連携がなされていないと、膨大な商品マスターを手運用にて管理しなればならない(品揃え・原価売価・発注可否など)

  3. 店頭在庫との調整が頻繁に発生するため、日々の受注・在庫・出荷管理の確認調整作業が複雑

困り事

弊社では、店頭商品管理システムとEC管理システムは、一日一回だけ店頭在庫をバッジ連携しているだけの状態です。
ご想像のとおり、店頭での販売とECでの注文受注にタイムラグが生じ在庫手配が発生したり、数万点におよぶ商品の新規登録・廃版登録・メンテナンスなどなど発生し、作業効率が悪く大幅に時間を取られています。
詳しくは以前の記事をご参照いただければ幸いです。

グループワークと業務実態を分析し課題を抽出

まず、全員参加でグループワークを開催し、我々事業が目指す姿と戦い方の目線合わせを行います。
その実現に向けて、現在どんなことが課題だったり、困っているのかを各自が共有し、集約していきました。

下記はグループワークに使用したホワイトボードです。
「目指す姿⇒戦い方⇒実現に向け課題」に分類し、バックキャスティングしていきました。
ここには、書ききれない多くの意見もあり、新たな気づき・発見もあり大変有意義な時間となりました。

下記は、課題として共通していた「非効率」「ムダ」といった観点を洗い出すためにも、全メンバーに現在の業務に費やす時間割合をヒアリングしグループ別に集約した円グラフで実態を分析してみました。
すると、特に赤色部分が前述のシステム非連携が起因となり、手運用のでしのいでいる比重が大きい業務グループが多いことがわかりました。
全体業務の約4割を占めています。


業務に占める時間割合

本来は、顧客満足度を高めるための「新商品・企画の模索」「取引先の開拓と交渉」「市場調査」といった営業活動に、メンバーたちがより時間を費やせる職場環境へ改善したいと考えています。
この赤色部分の4割をデジタル技術を用いて10分の1に圧縮できることができたら、正社員約4名分のリソースを算出できる概算になります。

取り組むべく課題解決について

10分の1にできるかどうかはさておき、メンバーとのグループワークで出た「非効率」「ムダ」に焦点をあて、下記課題の抽出をおこないました。

メンバーからは、現在手運用でデータの結合・加工で行っている作業を自動化することができれば、負担軽減、ミス軽減、営業活動への注力 といった効果があるため、目線を合わせながら取り組んでいくこととなりました。
ただ、新たなデシタル技術や知識については、皆あまり明るくないため、使用するツールや技術案を提示しながら考えてみました。

1.商品マスターのメンテナンス

使用する ツール・技術
・Power Automate
・Power Pivot
 

前述の店舗出荷型ECのデメリットとなるシステム非連携による、掲載商品メンテナンス(品揃え・原価売価・発注可否など)に、膨大な時間を要しており、商品マスター関連の9%ここに該当します。
その、理由は下記の各旗艦システムが非連携であり、データ取得・結合・加工をすべて手運用で行っているためです。

この一連の工程を、Power AutomateとPower Pivotを活用し、下記のプロセスでRPA化(自動化)したいと考えています。
・データ取得
・データ結合と加工
・必要なアクションを明示
・情報配信

これが自動化できれば、今まで負担が大きかったため、月に数回の作業だったものが、毎日実施することも可能となり、掲載商品のメンテナンス遅延による欠品事故や商品手配など、事故対応作業も大幅に削減できます。

2.EC掲載画像のAI判定

使用する ツール・技術
・Webクローリングによる画像情報取得
・TeachableMachine
・Node-Red
・SSSAPI
・スプレッドシート 
・Power Automate 

先程の「商品マスターのメンテナンス」が不十分であることに加え、掲載している商品画像間違いによる事故も、我々事業での大きな課題です。

お取引先様から提供された画像情報が、そもそも間違っているケースも多く、「旧パッケージ」「微妙な規格違い」などもあります。掲載前に必ず確認を目視で行っていますが、掲載商品は数万点あり毎月新規登録数も3~5000点あるため、全商品についてスタッフの知見が追い付かず、確認漏れは発生してしまいます。
加えて、現状の全件目視では、あまりにも数が多すぎるため、
「確認精度が低い」「集中力続かない」「非効率」などの問題山積みです。
前回記事も一部触れておりますのでご参考いただければ幸いです。

事業規模が急速に拡大し、掲載する商品数も増加したことにより、事故対応件数・客数は直近で急増しています。
お客さまの信頼を失いかねない重要度の高い事案です。

商品関連不備の発生件数と対象お客さま数

そこで、下記のようなツールの組み合わせとフロー構築によって、効率的に掲載情報の確認と修正をタイムリーに実現することで、この課題を解決できると考えます。

*JANはすべての商品に定められた8~13桁の固有数値

今後、事業規模と取り扱い商品数拡大に向け、整えねばならない仕組みです。より良いツールやアイデアなどありましたら、是非コメント欄にアドバイスをお願いします。

3.リアルタイムで市場変化を把握

使用する ツール・技術
・Webクローリングによる価格情報取得
・Node-Red
・SSSAPI
・スプレッドシート 
・Power Automate 
 

EC業界はリアル店舗より価格変動が激しく目がぐるしく変化します。お客さまも各ECサイトを比較し、よりお得にお買い物することも今では一般的です。ところが、その変化速度も速いことや、前述までの作業に人手を取られ市場調査が後手に回り、おざなりになっていることが課題です。

そこで下記のフローで、Webクローリングなどの技術を活用し、3大ECモール(Amazon、Rakuten、Yahoo)の価格チェックをタイムリーに行い、弊社との価格差を見える化することで、市場変化への対応力を高めたいと考えます。

*JANはすべての商品に定められた8~13桁の固有数値

これを実現し、市場価格をタイムリーに取得することで、直近で売れ数が落ちてきた商品の原因把握や、対応遅れによる機会損失防止など、に活用することでき、事業運営に大きく貢献することができます。

課題の相関性

1.商品マスターのメンテナンス
2.EC掲載画像のAI判定
3.競争力あるリアルタイム価格変更

これらの課題は密に関連しており気切ることができません。
「商品データ基盤を正確に保持」し、「正確な掲載情報でお客さまの信頼を得」「市場ニーズを正確に把握」し、アクションに移すことで初めてあるべき姿の実現に向けた土台が整うと考えるからです。

すべてを一斉に解決する技術がありませんが、まずはプロトタイプの作成から改善を重ね、事業とメンバーの成長へ一歩ずつ近づけていきます。



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