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ワンカンオンシーズン

寝苦しい暑さはどこへやら、朝晩はすっかり秋の匂いで、エアコンも早々に役目を終えてしまった。

今年は梅雨も明けるのが早かったし、どうやら1年は駆け足で過ぎたいみたいだ。

夜に窓を開けるとすうっと涼しい風が抜けて、「外に出てみませんか」と誘っている。用はないけどコンビニでも行ってこようか。

小さなエコバッグに財布とスマホと鍵を突っ込んで、ちょっとそこまでの姿で家を出た。

夜に家を出て鍵を閉めるとき、なんだかそわっとするのは私だけだろうか。

夜は大人の時間と思っていたあの頃からもう何年経ったかわからないのに、いくつになってもなんだか悪いことをしているような、いたずらな気持ちになる。

外に出て歩き始めたところで、思いがけず帰宅した旦那にでくわした。突然現れた私の姿に、幽霊でも見たかのように飛び上がっていたが、コンビニに行くと告げると当たり前のようについてきた。

1人で歩くつもりだったけど、まぁいいか。

暑くもなく寒くもない、ゆるやかな風が流れる心地のいい夜。こんな夜に外を歩くのがたまらなく好きだ。

ほんの10分程度の距離を空を見上げて歩くと、なつかしいようなさみしいような、あたたかいような。なんとも言えない不思議な気持ちになるのだ。

リプトンの紙パックのミルクティーでも買おうか。ぼんやりそう思いながらコンビニに入ったはずなのに、いつの間にかビールの並ぶ冷蔵庫の前に張り付いていた。

スーパーから突如消えてしまった私の推しビール『秋味』が目に入ったらもう手の中。旦那は悩んだ末にとりかわの塩を買うというので、私も便乗した。

コンビニから出たら握りしめていた秋味をプシュッ。

アパレルで働く友人が、以前『ワンカン』という言葉を教えてくれた。仕事終わりに少し話がしたいとき、コンビニなどで1本缶ビールなどを買って一緒に飲むことを言うそうだ。

これはワンカンに入るのだろうか。

会社員も仕事終わりにコンビニの外とか公園で1本お酒飲んで帰る人多いよ、と旦那が言う。

「そうか、そしたら今からワンカンオンシーズンだね」
「せやね」

とりかわを頬張って1本の秋味を交互に飲みつつ、ネイビーの空を見上げて、2人で歩くのも悪くないなと思った。

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