体育会系がいいかガリ勉が良いか② 「勉スポ部」の活動内容
【前回記事】
まず部室に入るときは、一礼だ。神聖な教室に敬意を忘れてはいけない。一礼しないで入ろうもんなら、「たった一年しか歳が違わないのにやたらと偉そうな先輩」から叱責を受ける。
年上の先輩は無条件で尊敬しなくてはいけないナンセンスな慣例は体育会系のノリだ。もちろん髪形は丸坊主以外許されない。
これで協調や仲間と一致団結する能力を身に着ける。金髪なんかにしてこようもんなら速攻ボコボコにされるのだ。「連帯責任!」とかいって友達もボコボコにされる。
さて、活動内容は勉強だが、根性が必要だ。長時間の勉強で根性をつけたいところだが毎晩遅くまで部活をやるのは校則上できない。
なので、時間的負荷ではなく肉体的負荷をかけつつ勉強しなくてはいけない。空気椅子だ。部室には机はあるが椅子はない。
名物「計算問題千本ノック!」と言って空気椅子で計算問題を千問解く。途中でへなへなと腰を下ろそうもんなら「100問追加じゃボケェ!」と監督が竹刀を振り上げる。自分だけならまだしも、連帯責任で、全員100問追加となる。
朝練、昼連、夜連は毎日で、家に帰ると勉強なんかせずに疲れ切って勉強などせずにそのまま寝てしまう。でもいいのだ、部活で腐るほど勉強している。
本来なら
「あんたそんなに部活にうつつを抜かして、勉強は大丈夫なの?学生の本分は勉強よ?」
「うるせぇなババァやってるよ」
「じゃあ中間の点数なんなのよ!」
「あんときは試合が近かったんだよ!」
「ほら疎かになってんじゃないの!」
といった不毛なやりとりに興じるシーンだが、便スポ部員の母親はリビングでニコニコしながらテレビを見ている。当たり前だ、息子の勉強は十二分なのだから。
鉛筆は一日に2~3本は必ず無くなる。それくらい手首を酷使するため腱鞘炎にもよく羅漢する。
なのでテーピングはいつも常備され、「女子マネ」が優しく巻いてくれる。「マネージャーは女子でしょ」という前時代的なマネージャーのあるべき姿も体育会系のノリだ。
試合が近づいてくると、練習試合や合宿が予定に入ってくる。え?試合ってなにかって?中間テストや期末テストだ。
毎回、中間テストと期末テストの上位はこの「勉スポ」の部員で総ナメ状態になる。
もしここで、誰か一人でも順位が下のほうになったらもう大変だ。原因分析は大体「気合が足らない」になる。
体育会系のノリだから科学的な解析は最低限。論理力を非論理的に身につける荒業だ。
テストの解き直しが満点になるまで腕立て伏せと腹筋と書き取りのインターバル走だ。中には昼飯を吐いてしまう部員もいる。その時は
「大丈夫か!」と言って周りは肩を貸し「俺等も頑張るから、もう少し頑張ろう、な!」と言って励まし合う。
この部活はスカウトも行っている。中学の頃トップの成績だった人にはスカウトがいき、スポーツ推薦で勉スポに入る条件でその学校に入れる。
親御さんには「とても厳しい部活なのでご理解ください」と入部時に同意書にサインをもらう。
友達との絆ができ、根性やコミュニティの中でうまくやる能力もつき、学力もとてつもなくついたゴリゴリのスーパーマンが目指すのは、最後の大会である、大学受験だ。
最後の最後まで部活に打ち込んできたので、勉強なんてやる暇などなかった。だが一発合格だ。なぜなら部活がそもそも勉強だったのだから。
ここで監督に「今まで厳しくご指導いただき、ありがとうございました!」「うむ!お前たちがやってきたことは絶対に社会に出て役に立つ!」とかやる。
役に立つのは当たり前だ。やってきたのは勉強なのだから。
こうやって、3年間の厳しい部活を乗り越え、学力も身に付き、社会に出てとてつもなく活躍する超人が生まれる。
「勉スポ」のある学校、探してみてください。