東京夜行性衝動
東京の夜と住宅街。
アイスピックを咥えながら歩く。
絶えず通り過ぎる風は、
夜風なんて気持ち良いもんじゃなくて。
もう流石に歩き慣れたこの道の
足取りを重くする。
酔っ払って彼女にもたれ掛かる彼氏。
道端のおしゃべりから解散する女子学生。
街灯、道路標識。
信号、歩きスマホの社会人。
消灯、隙間から漏れるテレビの音。
実行、高音を出せるようになるための鼻歌。
今日は
ひとりになれなかった。
どうせ
いつだってひとりだ。
空を見上げてみる。
星でも出てれば、救われたのに。
アルコール零滴でまともに前も見れない私。
私の帰る場所はどこ?
汗をながそう。シャワーをあびなくちゃ。
そんなところにいちゃ駄目だよ。
あるべき場所に戻らなくちゃ。
大事にとっておいた最後のピノは
ドロドロに溶けて、空き箱を濡らしていた。
ー完ー
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