巨匠の達成と絶望 -宮﨑駿『君たちはどう生きるか』
おもしろいファンタジーは作れた。しかし、ファンタジーで世界を変えることはできなかった。これが、今作を最後の長編とするであろう、巨匠の感慨なのか。宮﨑駿監督作品『君たちはどう生きるか』の感想を一言でいえば、そうなる。
(以下、ネタバレ全開でお送りします)
1 ファンタジー映画を観る、という体験をメタ的に描く この物語は、3つのフェーズから成り立っている。①(ファンタジーの世界に行く前の)現実、②ファンタジーの世界、③(ファンタジーの世界から帰った後の)現実の3つである。まず