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2023年 (個人的)今年の10冊

 今年読んだ本の中から、印象に残った10冊を独断と偏見で選び、紹介します!
※数字に特に意味はありません。


(1)國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』(医学書院、2017年)

 かつてヨーロッパ系の多くの言語に存在した文法「中動態」を手がかりに、近代における「意志」「責任」の概念を問い直す一冊。当たり前のように受け入れている概念を見つめ直すことの重要性を感じた。

(2)松岡正剛『日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く』(講談社現代新書、2020年)

 「日本文化」は思っていたよりも複雑で、かつ奥深い。古今東西の知を自在に駆け巡る著者の言葉に圧倒された。新書のスケールを超えた読み応えを与えてくれる。

(3)石割透編『久米正雄作品集』(岩波文庫、2019年)

 小説、随筆、評論、俳句、なんなら戯曲も。これだけ多才で多作な作家を、なぜ今まで知らなかったんだろう。大正時代を代表する作家・久米正雄の作品集。個人的には随筆「私小説と心境小説」「私の社交ダンス」がお気に入り。

(4)加藤典洋『敗戦後論』(ちくま文庫、2005年)

 論争的だけれど、耳を傾ける必要のある主張。ねじれはどこかで解かれなければならない。

(5)末永幸歩『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(ダイヤモンド社、2020年)

 中学校の美術教師によるアート入門。アートとは、鑑賞者を日常の外へ連れ出し、世界の見方を変えるもの。この本でそう知ってから、絵心はないけれどアートは好きになれるかも、と思った。

(6)三宅香帆『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しか出てこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』(ディスカバー・トゥエンティワン、2023年)

 同学年(多分)の書評家・三宅香帆さんの著書。推しの尊さを「界隈」の外に届けるためには何が必要なのか。様々なジャンルの具体例に即して、推し語りの文章術を伝えてくれる一冊。オタク気質を隠しきれない文体に親近感を覚える…!

(7)宇野常寛『2020年代の想像力 文化時評アーカイブス2021-2023』(ハヤカワ新書、2023年)

 虚構が現実に敗北してしまった時代に、批評ができることは何か。虚構だからこそ描き出せるものに触れ、それを言葉にすることだ。そんな問題意識と信念に貫かれた文化時評。鑑賞済みの作品に対する見方を変えてくれることこそ、批評を読む醍醐味だと改めて思う。

(8)ユヴァル・ノア・ハラリ(柴田裕之訳)『サピエンス全史(上)(下)』(河出書房新社、2016年)

 いまさら読了した名著。巨視的なスケールで人類史を眺めるのはとても面白い。特に、近代の政治・経済的イデオロギーを「宗教」として論じていたところが印象に残った。

(9)江利川春雄『英語教育論争史』(講談社選書メチエ、2022年)

 「英語を早い学年から始めよ vs. まずは国語の能力を育てよ」「文法訳読を重視せよ vs. 実用的なコミュニケーション能力を育てよ」等々。英語教育論争においては、実は同じような論点のもとで同じような論争が繰り返されてきた、と教えてくれた一冊。歴史の不毛な繰り返しを避けるためには、政策や実践の検証が必要だろう。

(10)上阪徹『プロの時間術 大人の時間割を使えば、仕事が3倍速くなる!』(方丈社、2019年)

 数多ある「時間術」本の中で、個人的には一番役に立ったと感じる一冊。著者は毎月1冊のペースで執筆を行う多忙なブックライターであるだけに、紹介するメソッドにも説得力がある。


今年もたくさん学べて幸せでした。来年もたくさん読んで書きたいです。
みなさま、良いお年を!

より良き〈支援者〉を目指して学び続けます。サポートをいただければ嬉しいです!