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『ナツキくんは今日もキレイ』は、大勢の輪に入れなかったはみ出し者たちの理想かもしれない

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はみ出し者に勇気をくれる素敵でまっすぐな女装ヒロインラブコメディ

何だかよくわからないけど、大勢はやっぱりその大勢の輪からはみ出したものを嫌う。

周りの大勢と「同じことを思ってないと、同じことをしていないと」それはまるで悪の様に扱われる。それが正しいかどうかとか関係なく、はみ出し者=悪というように。

この傾向は最近特に強く世の中に対して感じているが、会社や学生の頃のクラス、もっと小さな仲間内での事を思い出しても、どこにでもあると思う。

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『ナツキくんは今日もキレイ』は、女装が趣味なノンケ男子のナツキさんと、そんなナツキさんを女性だと思って好きになり告白した史也くんとの毎日を描いたラブコメディだ。

ナツキさんは告白してきた史也くんに自分が女装をしているだけの男だと伝える。そこで史也くんが考えたのは、何故ナツキさんと付き合いたいと思ったのか。

話していて楽しくてもっと一緒に過ごしたいと思って…それならナツキさんが男でも出来るという結論を出す史也くんはそれから毎日ナツキさんに付き合おうと迫り続ける。

そんな毎日の中、クールで綺麗なナツキさんはどんどん史也くんに翻弄されていく。

「むかつくから秘密」は二人の関係における最大級の告白

物語が進み、二人の時間が過ぎていくにつれて、素直でおバカな史也くんのまっすぐな想いが、女装趣味というちょっとはみ出している趣味を持つナツキさんをどんどん癒していっているように僕には思えた。

いくら女装が上手くて綺麗でもそこには何か想う事はあったのだと思う。ナツキさんの表情や行動の変化の移り変わりが読むものにそれを感じさせるのだ。

最後にナツキさんが「むかつくから秘密」と伝える事をやめた言葉はどんな言葉だったのか。それを想像するたびなんだか顔がニヤけてしまう(この最大級の告白の中身についてはぜひ本作を読んでいただきたい)。

大勢の人たちが感じる好きとは違う「自分の好き」を好きでい続け、隠さない事はとても難しい。しかしそんな大勢の中から一歩はみ出した向こう側に、ナツキさんと史也くんの日々のような日常が待っているなら、それはとても素敵で幸せな事だろう。

現実はそんなに上手くはいかないけれど、でもこの漫画を読むと少しだけ自分が自分の望む自分でいていいと思えるような勇気がもらえる気がするのだ。

WRITTEN by 栗俣 力也
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